いよいよ本日最終回を迎えるドラマ『重版出来!』。大勢のファンが名残惜しい気分で放送を待っているわけだが……と、その前に先週放送された第9話をおさらいしておこう。前回のレビューで「『重版出来!』は恋愛ドラマじゃない」と書いたら、いきなり恋愛の話だったよ。


「俺も好きです! 大好きです!」

言葉の主は、主人公の黒沢心(黒木華)……ではなく、心を教え導く先輩編集者・五百旗頭敬(いおきべ・けい/オダギリジョー)だ。相手は心……ではなく人気マンガ家の高畑一寸(滝藤賢一)である。えっ。いやいや、正確には「『ツノひめ』が好きです」ということなのだが。

というわけで、第9話は五百旗頭が主人公のお話。

高畑のデビュー作『ツノひめさま』は連載10年を誇る人気作品。雑誌『バイブス』の売り上げとコミックスによる営業利益を支える大黒柱の一つだ。そしてデビュー当時から高畑を担当し、支え続けてきたのが五百旗頭だった。

しかし、高畑には悩みがあった。自分はこのままデビュー作を描いていていいのだろうか? もっと他の作品も描けるのではないだろうか? と。

そんな高畑の悩みにつけ込んで引き抜こうとしているのが、ライバル誌『エンペラー』の副編集長・見坊我無(明和電機)。五百旗頭の「告白」は、高畑と見坊の密会に割り込んだときのものだ。さりげなく五百旗頭に突き飛ばされる心が最高。

「恋愛って理屈じゃないじゃないですか。ダメだと思っても、ワッと走っちゃうこと、あるじゃないですか」とは心の恋愛観(マンガの受け売り)だが、今回の五百旗頭の言動はまさに恋愛。恋する相手をライバルに奪われまいと、本当に走って、叫んでしまったのだから。五百旗頭と高畑の信頼を目の当たりにした見坊も、「人の恋路は邪魔しません」と言って去っていく。

ただし、五百旗頭の恋愛の相手は高畑という「才能」であり、『ツノひめさま』という「作品」だ。「女房に逃げられたときも走らなかった」と話す五百旗頭だが、才能と作品には逃げられたくなかったということになる。

高畑も五百旗頭と相通じている。高畑は、何かと気を引こうとして仕事の邪魔をする恋人の梨音(最上もが)をついに追い出してしまった。高畑は結局恋人よりマンガを取ったということになる。

一件落着して笑い合う五百旗頭と高畑と心の一方で、梨音は高畑の元を去っていく。もう戻ってはこないだろう(夜の暗闇へと消える去り際の演出を見れば明らかだろう)。編集者とかマンガ家とは、つくづく因果な商売だ。

そういえば、心も第4話で東江絹(高月彩良)の担当を安井(安田顕)に奪われたとき、「失恋だ。私、東江さんに失恋してしまいました」と号泣していた。

ここでは編集者と作家の関係が恋愛に例えられている。これは原作よりもドラマ版に顕著な描き方だ。こうして考えると、東江と安井の関係も新人OLと冷酷な上司の不倫関係に見えてくるから不思議だ。

『重版出来!』は恋愛ドラマではないが、広い意味での恋愛ドラマということなのだと思う。今は恋にもいろいろなカタチがあるということだ。才能と仕事に恋をした五百旗頭と高畑と心は、伴侶に恵まれないまま、老後は一緒のアパートで暮らしたりするのかもしれない。

最終回の展開を大胆予想!?


第9話は原作2巻にある高畑の引き抜きエピソードを元にしているが、五百旗頭中心のストーリーに大きくアレンジされている。原作では、高畑を発掘したのは和田編集長であり、高畑が思いとどまるのも和田編集長との信頼関係による。それを思いきって五百旗頭のエピソードにしているというわけだ。

脚本家の野木亜紀子のツイートによると、「1心→2小泉→3壬生→4東江→5久慈→6安井→7沼田→8和田→9五百旗頭→10心」という構成は1年前から準備されていたという。うーん、緻密で美しい。

ということは、最終回の主役は心? いやいや「14日の最終回、ネタバレしてほしくないので、それまでに追いついて是非リアルタイムでご覧ください!」ということなので、放送までのお楽しみということにしておきましょう。

最終回のクライマックスにするのかな? と思っていた、中田伯(永山絢斗)の連載獲得のシーンは第9話のエンディングに盛り込まれていたので、中田のデビュー作『ピーヴ遷移』の反響についてのエピソードになると思われる。たぶん、原作にはないオリジナルのエピソードになるだろう。

予告を見ると『バイブス』編集者、マンガ家らが総登場する賑やかなフィナーレとなりそうだ。いっそのこと、みんなでミュージカルとかやってくれたらいいのに。あ、それだと『トットてれび』と被るか。

なお、『重版出来!』の先週放送分は、TBSオンデマンドで配信中(本日21時59分まで)。
(大山くまお)