消費増税の再延期が正式に決まり、通常国会も無事終了。衆参同日選挙もなくなり、しばらくは平穏無事と思っていたら……米雇用統計の予想を大きく下回る結果が出てマーケットには衝撃が走りました。その後、市場は落ち着きを取り戻しましたが、先行きが非常に気になるところです。中長期的な相場見通しに定評のある刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」では、現在の状況と今後についてわかりやすく解説しています。

雇用統計に激震!  円高・株安はどうなる?

 6月3日に発表された米国の5月雇用統計は「雇用者数」がわずか3万8000人増と、雇用拡大の目処とされる20万人を大きく下回りました。

 これで最近盛り上がっていたFRBの利上げ予想も吹っ飛び、円相場は一時1ドル=106.50円まで円高が進みました。本年に入って以降、日銀がマイナス金利を導入しても(これは過激な金融緩和です)、逆に追加緩和を見送っても、いずれも円高に振れています。

 これが意味するところは、すでに日銀の金融政策に反応するような相場ではなくなっているということ。それよりも、もっと大きな円高圧力に見舞われているということです。先週、本連載でお伝えしたように「1ドル=101〜105円」の水準に向かっています。

参考:ドル円は1ドル=105円を目指す!消費増税延期も為替には影響なし(2016年6月2日公開記事)

 また、日経平均は1万3900〜1万5800円が中長期的な適正水準・安定水準と考えています。根拠や時期については金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」で詳細に書いていますので是非そちらをお読みいただきたいのですが、これら中長期的な価格水準を見据えながら時々の短期的要因を勘案していく必要があります。

商品市況に注目、原油価格の急回復は本物か!?

 短期的要因は数多ありますが、いま本紙が最も注視しているのが「商品市況」です。商品価格は実体経済に「やや先行する指標」ですが、ここのところ幾つかの商品において上昇が目立つようになってきました。それらが本格的なトレンドの始まりなのか、それとも単なるテクニカル的なリバウンドなのかを見極めなければなりません。

 その筆頭は「原油価格」(WTI)です。2月11日に1バレル=26.05ドルで底を打ってから、5月26日には1バレル=50ドルまで回復しました。6月2日のOPEC総会で増産凍結が見送られたのですが、先週末(6月3日)も1バレル=42.62ドルと高値を維持しています。

 2月安値から倍近くになっていますが、需給関係は一向に改善せず、減産合意も難航しています。この水準ではサウジアラビアを始めとする産油国の財政が劇的に改善するわけでも、瀕死の米国シェール産業が息を吹き返すわけでもありません。したがって、急落時の真空地帯だった50ドルまでテクニカル的に反発しただけと捉えるべきでしょう。

 原油価格は2005〜2014年の10年間が「異常に高かっただけ」と考えれば、その異常高を前提にした世界のパワーバランスは遠からず崩壊するはずです。中東だけでなくロシア、中南米、アフリカ産油国の影響力・政治力は低下し続け、戦争・紛争・難民などの混乱は収まらないでしょう。もちろん米国シェール産業の破綻は、引き続き米国経済の足を引っ張るはずです。
 
 ところで、2月以降の世界的な原油価格上昇は明らかにWTI価格の上昇が主導しています。WTIとは米国テキサス州とニューメキシコ州で産出される軽質油の先物価格のことですが、産出量は日産数十万バレルしかありません。

 ところが、WTI先物はロンドンで取引されるブレント原油(英領の北海油田から産出される)と並んで取引量が多く、世界の2大原油指標の1つとなっています。世界の産油量の1%に満たない石油価格が、残り99%の石油価格を決めているということです。

 逆に言えば、こういう先物市場では資金を大量に注ぎ込むことで、実際の需給とは関係なく、ある程度価格を操作できるということです。2月以降のWTI価格は明らかに(米国かサウジアラビアかは知りませんが)吊り上げられており、どこかで息切れするはずです。

 商品価格の代表格である「金」価格も、実体経済を強く反映する「銅」価格もほとんど回復していないのに、原油価格だけが倍近くも上昇しているのは違和感があります。本来であれば原油価格は経済活動の活発さを映し出しますが、現在は慎重に判断しなければなりません。

これからの株式市場で気に留めておくべきポイントは?

 リーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和にも関わらず、世界経済はその生産性も含めて一向に回復しておらず、最近はさらに落ち込んでいます。これは明らかに循環的なものではなく、構造的なものです。

 ただ世界の株式市場は、未だ世界的な金融緩和・量的緩和の効果に期待している状況です。また資金余剰と低金利の中で、企業の行動は設備投資による生産性向上ではなく、配当や自社株買いなど株主還元に向いています。

 その結果、投資対象としての株式の魅力が拡大し、世界的に株式市場が割高の状態になっています。しかし、こうした流れは世界経済の低迷と相まって、いずれ業績を低下させ、企業体力を損ねてしまうはずです。

 今、世界経済の実態を正直に反映しているのは国債市場(とくに長期国債)ですが、例えば日本だと2年国債の利回りがマイナス0.26%、10年国債がマイナス0.11%、30年国債が0.30%しかありません。経済活動のインセンティブとなる2年国債と10年国債の利回り差はわずか0.15%(しかも、マイナス)で、経済活動が活発になろうはずがありません。

 国債市場・商品市場が低迷する中で、世界的に金融緩和が継続され、余剰資金が設備投資ではなく株主還元に向かい、その結果、株式が買われ割高感が高まっている――国債・商品・株式の市場間にあるギャップはますます拡大していきます。

 過去のバブルの経験から、このようなギャップは認識され始めてからのほうがさらに拡大するもので、簡単に修正される(弾ける)ものではありません。ただ、最近の世界的な長期国債利回りの低下は、いつか大きな落とし穴に落ちるという現実だけは、はっきりと認識しておく必要があります。

 本欄「週刊闇株新聞」は、金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」で配信された記事から一部を抜粋してお届けしています。市場をつぶさに観察するのはもちろん、世界政治のパワーバランスや巨額マネーを動かす機関投資家の動向にも目を配り、ときには歴史も紐解きながら「なぜこうなっているのか」「これからどうなるのか」を、熱く・詳しく・わかりやすく解説しています。