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●減少傾向が続く軽商用車に新活路
流通における4輪車輸送の最小単位は、軽ワンボックスカーや軽トラなどの軽商用車。水道設備や電気設備などの修理・整備業でも使われることが多く、いわば“最小単位の事業所”ともいえる。わりと街で見かけることが多い馴染み深い車体だが、減少傾向が続いている。それを受けて2012年にスバルが軽商用車の生産から撤退し、2013年には三菱自動車も退いた。OEM調達により軽商用車を販売しているメーカーはあるが、生産ということになると、事実上、スズキ、ダイハツ、ホンダの3社に絞られる。

○積載量の追求よりも「人の働きやすさ」を

そんな軽商用車に新しいニーズを生み出そうとダイハツが投入したのが「ハイゼット キャディー」だ。同車が狙うニーズとは「人の働きやすさ」。具体的にいうと、これまで積載量ばかりが優先されてきた軽商用車から、静粛性・運転のしやすさといった快適性、未然に事故を防ぐ安全性といった部分に焦点を当てた軽商用車へ、ということだ。

ダイハツによる軽商用車ユーザーへのヒアリングによると、積載量よりも「室内の静かさ」「(運転席の)足もとの広さ」「安全性」を重視する傾向が強かったという。それの表れか、軽商用車よりも居住性・安全性に優れた軽乗用車を購入し、それを商用に充てているケースが目立ってきたことも付け加えた。

さらに、社会変動にともなう就労層の変化も同車を投入した理由だ。女性活躍推進法が施行され、女性が社会で働くシーンの増加が見込まれる。さらには高齢化社会になり、定年後も何かしらの事業を続けるシニア層の増加も容易に予測できる。ハイゼット キャディーは、こうした層のニーズにも応える。

●コンセプト「はたらく 楽ラク」に込められた意味
発表会でダイハツ工業 上級執行役員 上田亨氏は、「はたらく 楽ラク」という同車のコンセプトを披露し、「新たなニーズに応えるため“6つの楽”を実現した」と語った。

その6つの楽とは「楽ラク ノリオリ」「楽ラク ツミコミ」「楽ラク アンシン」「楽ラク ドライブ」「楽ラク セイケツ」「楽ラク カラフル」というもの。

まず「楽ラク ノリオリ」だが、同車はセミボンネットを備えたFFレイアウトを採用する。エンジンを車体底部に搭載した軽ワンボックスカーに比べ車体を低くでき、そのぶん、乗降が楽というもの。「楽ラク ツミコミ」は、やはり車体が低くなったことを受けて、荷物を高く上げなくても積み込みが楽になるとする。

○乗用車並みの安全・安心装備

「楽ラク アンシン」は、衝突回避支援システム「スマートアシスト供廚魄貮凜哀譟璽匹派現狹觝椶掘▲譟璽供璽譟璽澄爾世韻任覆カメラとソナーセンサーを軽商用車で初めて採用したという。また、タイヤロックを防ぐABSや「VSC&TRC」など、安定走行をサポートする機能を集約した「アクティブセーフティ」を全車に標準装備する。まさに、軽乗用車並みの安全・安心装備だ。

以下、CVTによる滑らかな走行を実現した「楽ラク ドライブ」、樹脂製のフラットな荷室により掃除がしやすい「楽ラク セイケツ」、標準色ホワイトのほかに5カラーが用意され、軽商用車では異例ともいえる6カラー展開の「楽ラク カラフル」などとなる。

●多くの期待がかけられた軽商用車
発表会では、ハイゼット キャディーを事前に約1カ月間活用した企業・店舗5社が紹介され、それぞれその使用感について披露した。

それによると「乗用車のように運転しやすく、仕事が楽になった」(アート引越センター)、「スカートを着ることが多く、乗りやすい高さが重宝した」(ダスキン)、「3台の自転車が載る積載能力が魅力。自転車を載せると床が汚れやすいが、簡単に拭き取れた」(ドコモ・バイクシェア)、「商用車というと“白”のイメージが強いが、ピンクがお花屋さんのイメージにピッタリ」(花キューピッド)、「安全機能が充実しているので、安心してドライバーに配達を任せられた」(ほっともっと)と、上々の評判だった。

○菊池桃子さん「女性やシニア層の活躍を広げてくれそう」

また、一億総活躍国民会議 民間議員でタレントの菊池桃子さんも登壇。「商用車というと男性のイメージが強いが、このクルマは“人”全体を考えて開発されたのが伝わってきます。女性やシニア層の活躍を広げてくれそうです。日本を元気にするクルマになってほしい」と語った。

同車は、大分県・中津工場で生産される。九州地方は4月に観測された2度の震度7の地震、そして今も治まらない余震により、甚大な被害を受けた。同車の生産が九州の復興の手助けになればと、前出の上田氏は語る。

さて、会場に着いた際、軽商用車の発表会にしては大規模だなと正直違和感を覚えたが、軽商用車の浮上、新たな就労ニーズへの対応、そして九州復興と、多くの期待がかけられたクルマということがわかった時点で納得できた。

(並木秀一)