『ボクは吃音ドクターです。』菊池 良和 毎日新聞社

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 本日、最終話を迎える月9ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系)。同作は、吃音症を持つヒロインが、音楽を通じて、ありのままの自分を受け入れ、成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。ヒロインを演じた藤原さくらさんは、同作が演技初挑戦でしたが、吃音症の症状をリアルに再現。その迫真の演技に驚きを隠せない視聴者も多いようです。

"月9"というゴールデンタイムの時間帯で吃音症を取り上げた影響は大きく、第1話の放映直後には『自分の姿を重ねて泣けた』など、ツイッター上では、吃音症の当事者からもドラマ化を歓迎する声が上がりました。

 その一方では『いかにもテレビ的な見せ方で、吃音症が誤解されて広まってしまうのは不安』、『(障害だと知られてしまうことで)周囲から見る目が変わるかと思うと、明日から学校に行けない』という不安の声も聞かれ、当事者の間でも、評価が分かれるものだったようです。

 ドラマで取り上げられたことで、吃音症に関心を持つ人も増えたようですが、同症の認知度は依然として低く、この症状を持つ人々が日常生活でどれほど苦悩しているかは知られていません。

 そんな当事者の心境を知るために一読をおススメしたいのが、ドラマ監修者である医師、菊池良和氏の著書『ボクは吃音ドクターです。-どもっていても、社会に必要とされる、医師になりたい-』(毎日新聞社刊)。同書は2011年1月に出版されたものですが、菊池氏が吃音症に苦しんだ日々が、克明に綴られています。

 同書のまえがきで、菊池氏は以下のように訴えています。

「社会全体が理解していない、いや吃音のある本人も理解できていない『吃音』がある。それはしゃべりたい言葉が言いたいタイミングで発声できず、喉に鍵をかけられたように声が出ない『難発性吃音』(なんぱつせいきつおん)である」(同書より)

 菊池氏が述べるように、吃音症というと「あ、あ、あ、あ、あの」のように言葉を繰り返す「連発性吃音」をイメージする方がほとんどですが、実は「............あの」のように、話し始めの一音目が出て来ない「難発性吃音」という症状も存在します。菊池氏自身、急に言いたい言葉が言えなくなるという自分の症状が何なのかわからないまま悩み続け、医学部に入学してから初めて「難発性吃音」の存在を知って驚いた経験があるそうです。

 また、特定の言葉がスムーズに出て来ない難発の場合には、言いにくい言葉を言い換えたり「あのー」「ええーっと」など前置きをつけたりすることで会話する"吃音を隠す努力"をしてしまう人が多く、あまり気付かれないことも多いと言います。

 実際に、菊池氏自身、大学3年生の時、初めて、吃音当事者の自助グループ「言友会」の例会に参加した際の印象をこう述べています。

「大半の参加者はみんなすらすらしゃべれているように見えて『みんな本当に吃音なのだろうか?』と疑問に思うこともあった。吃音は『裸の大将』の山下清のような、『あ、あ、あ、あ、あのね』という連発のイメージを持っていたが、明らかな連発性吃音の人は少なかった」(同書より)

 しかし、周囲から気付かれない半面、誰にも悩みを打ち明けられずにいる当事者も多く、菊池氏自身も、自分で自分を追い詰めてしまった時期もあったと明かしています。

「どもっている自分が嫌い。すらすらしゃべれている自分が好き。その二つの人格が内在する私のまま、これからの人生を考えるとすごく不安だったし、この不安から逃げ出すには、"死"ぬことしかないのかな」(同書より)

 懊悩した時期を乗り越え「どもってもいいんだよ」(同書より)という考えにたどり着いた菊池氏は、"吃音ドクター"として、『エビデンスに基づいた吃音支援入門』(学苑社刊)や『子どもの吃音 ママ応援BOOK』(学苑社刊)など著作も多数執筆し、認知度向上に尽力中。

 いまだに誤解も根強く、なかなか理解されない吃音症ですが、同書は吃音当事者らの知られざる苦しみを考える上でも、大きな一助となる1冊と言えるでしょう。

【関連リンク】NPO法人 全国言友会連絡協議会
http://zengenren.org/