関連画像

写真拡大

最近、東京都内の居酒屋チェーン店で食事をしていたM代さん(30代)は、箸をすすめていた野菜炒め定食の中に、息絶えた小さな虫を発見し、声にならない悲鳴をあげた。M代さんは「3分の2以上を食べていたし、店員さんたちも忙しそうにしていて、クレームは入れませんでした。ぐったりとした虫の様子から、調理中に混入したのだと思います」と話す。

そのまま食べ切らずに食事を終え、店を後にしたのだという。M代さんのケースに限らず、「パスタの中に、ながーい髪の毛が入っていて、気持ちが悪かったです」(20代女性)など、外食先での食事中、皿の中で「異物」に遭遇することは決して珍しくない。

ただ、M代さんは「日常生活では気づかない程度のものでしたけど、本当に気持ちが悪かった。外食で野菜炒めは食べられそうにありません」と、ショックは大きかったようだ。

髪の毛や小さな虫などの異物に遭遇し、精神的なショックを受けた場合、支払い拒否や作り直し、慰謝料の請求などはできるのだろうか。半田望弁護士に聞いた。

●作り直しや慰謝料請求はできる?

「飲食店は、食品衛生法において、普段から衛生管理等を徹底し、食品の製造過程で『人の健康を損なうおそれがあるもの』が混入しないよう注意する義務があります。また、商売上の常識としても食品に異物が混入するということは、あってはならない事態であることは疑いようがないでしょう。

飲食店で食べ物を注文する場合、異物などの混入がない商品の提供を求めることは注文(契約)の前提となっています。契約に定めた条件を満たさない商品を提供したとしても、飲食店としては契約上の義務を果たしたことにはなりません。したがって、商品の作り直しや注文のキャンセルができることに異論はないと思われます」

では、慰謝料請求もできるのか。

「このような契約上の責任を超えて慰謝料請求ができるか、という問題になります。しかし、よほど重大、悪質な場合を除き難しいと思われます。

法律上、契約不履行による責任は契約の範囲に限られますので、飲食店での『注文』について、精神的なショックを生じさせないことを契約に含むと解釈することは困難です。異物混入により損害が生じた場合には、不法行為責任を問いうる余地もありますが、よほど重大かつ悪質な場合でない限り、損害がないとされるか、仮に認められても極めて低額の賠償となる可能性が高いと思われます。

そのほか、飲食業にも製造物責任法の適用はありますが、『生命、身体、財産の損害』がない場合には『製造物責任法』の問題とはなりません。『気持ち悪かった』というだけでは、不法行為や製造物責任法に基づく責任を問うことは難しいと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。交通事故や消費者被害などの民事事件のほか、刑事弁護にも取り組む。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、接見交通の問題に力を入れている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp