東シナ海の尖閣諸島の接続水域に中国の軍艦が初めて入った。南シナ海で海洋進出を強める中国が東シナ海でも引かない姿勢を改めて示した形で、日中間の緊張は一挙に高まった。資料写真。

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2016年6月11日、東シナ海の沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)諸島の接続水域に9日未明、初めて進入した中国海軍の軍艦。これは、尖閣をめぐる日中対立が新たな局面に入ったことを意味する。中国側には尖閣の領有権主張に加え、南シナ海問題で対中包囲網を敷く日本や米国をけん制しようという“一石二鳥”の狙いもあるとみられる。

国連海洋法条約では、自国の沿岸から12カイリ(約22キロ)までを領海、24カイリ(約44キロ)までを接続水域と定めている。接続水域内では沿岸国に通関、財政、出入国管理、衛生などの規制が認められているが、本質的には公海とされ、外国軍艦が入っても国際法上の問題はない。

海上保安庁によると、中国海警局公船の尖閣領海侵犯は今年になってから8日までに15回を数える。日本の実効支配に対抗して領有権の既成事実化を図るためだ。当初、漁船だったが領海侵犯は公船にエスカレートした。

今回、中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦は接続水域にとどまったが、そのまま進めば領海にまで入りかねなかった。その場合、監視中だった海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」などが領海侵入を阻止する「海上警備行動」を取る可能性もあった。

外務省の斎木昭隆事務次官が中国の程永華(チョン・ヨンホア)駐日大使を同省に呼び、重大な懸念を伝えて抗議するとともに中国軍艦が接続水域を出るよう求めたのは、進入確認から約1時間後の9日午前2時ごろ。日本政府の異例の対応は、中国艦の行動に対し、強い危機感を抱いたためだ。

菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で「緊張を一方的に高める行為で深刻に懸念している。領土、領海、領空は断固として守り抜く強い意志のもと、毅然(きぜん)と冷静に対応する」と強調。領海侵犯すれば海上警備行動を発令したかについては「その時々の事態で判断する。一概に答えるべきでない」と述べた。さらに9日夜には、安倍晋三首相を中心に「国家安全保障会議」(NSC)を開催。これまでの情報分析などの報告を受けるとともに、不足の事態に備え、米国とも連携して警戒・監視に万全を期すことを確認した。

中国艦の動きと合わせ、8日夜から9日未明にかけ、ロシアの軍艦3隻が接続水域を南から北へ抜けていくのも確認された。ロシア艦がこの接続水域を航行するのは初めてではないものの、防衛省は中国艦の動きとタイミングが重なったことから、関連性を分析している。

中国共産党系の環球時報によると、中国国防部は9日、進入に関する見解を発表。この中で「釣魚島と付属島しょは中国固有の領土だ。中国の軍艦が自国の管轄海域を航行することは合法であり、他国がとやかくいう権利はない」などと日本側の抗議を一蹴した。

中国は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や6月初めのアジア安全保障会議などの国際舞台で、日本が米国と並んで南シナ海問題を主導的に取り上げることに強く反発している。東シナ海では7日にも、中国戦闘機が米軍の偵察機の飛行を妨害した。9日の進入劇は東シナ海でも、あえて緊張を高め、南シナ海同様に領有権の主張は譲らないとする中国の強硬姿勢が見て取れそうだ。(編集/日向)