お酒とはなかなか縁が切れない人は、加齢とともに「最近、何だか疲れが出る。酒を飲むとほとんどが二日酔だ」と訴える人が少なくなくない。専門家は「意外と知られていないのが栄養不足、ビタミン不足。それに気付かない人が多いんです」と言う。
 「飲酒では身体から非常に多くの栄養素が失われます。しかし、アルコールは残念なことに身体に必要な栄養素を提供してくれません。もちろん、おつまみによって栄養は取得できますが、その栄養さえもアルコールにより吸収が阻害されてしまうのです」

 こう語るのは、都内で総合医療クリニックを営む医学博士・久富秀樹院長だ。
 「お酒の飲み過ぎは、さまざまな栄養不足を起こす。ビタミンAやビタミンBなどが主ですが、カリウム、ナトリウム、リン酸なども不足すると直接二日酔いの原因となります。その中でもナトリウム不足は、疲労や虚脱感、さらに、頭痛や吐き気、食欲不振なども引き起こし、低ナトリウム血症を引き起こす。ナトリウムはほとんどの食事に含まれているので、普段は不足することはありませんが、アルコールの飲み過ぎやスポーツなどの発汗、排尿で不足し、一種の脱水状態に陥る。よく飲んだ後に食べるラーメンや味噌汁が美味しく感じるのもこのためです」

 カリウムについても同じことが言えるという。カリウム不足は身体の疲れを生じさせ、足のつり、こむら返り、食欲不振なども起きる。これらも、酒の飲み過ぎが原因。赤ワインにはカリウムが多く含まれているため補うことができるものの、一方で利尿作用も強く働くため、多くはそのまま排出されてしまう。

 一方、ビタミン不足については、こんな一例を紹介しよう。会社員の西条隆さん(46=仮名)は、4月の会社の歓送迎会で痛飲して以降、体がだるくて仕方がない。しっかり寝ているのに身体に力が入らず食欲もない。イライラが続き心なしか手足のむくみもあったという。
 ただ、膵臓病特有の症状である左側の背中や腰に張りはなかった。それでも不審に思い自宅近くのクリニックへ行くと、「ビタミンB1欠乏症」と診断されたという。
 「ビタミンB1は糖質をエネルギーに変え、脳や神経を正常に保つ働きをします。これが不足するとエネルギーも足りなくなり、全身が疲れやすくなる上、神経が正しく機能しない。そしてイライラしたり、足にむくみが出たり、動悸など心臓に問題も生じるなどして、最悪の場合は死亡することさえあるのです」(専門医)

 かつて日本では、ビタミンB1欠乏症のことを「かっけ」と呼び、結核と並ぶ国民病とされた。ビタミンB1を含まない精製された白米を食べるようになった江戸時代以降、患者数が増加。心不全などで、大正時代までに毎年数万人が命を落とした恐ろしい病だ。
 栄養状態が格段に上がった現代では、豊富な食品を普通に食べていれば問題はない。しかし、偏食の人や、ダイエットで食事制限している人、胃を切除している人、小腸や胃での栄養吸収を阻害する薬を飲んでいる人などに陥る可能性が高い。
 「これまでビタミンB1は小腸で吸収されると考えられていましたが、最近の研究では胃壁の細胞で取り込むことが分かってきました。そのため胃を切除した人はもちろん、一部の降圧剤など胃や腸での栄養吸収を阻害する薬は注意が必要です」(前出・久富院長)