女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちの体験談。

今回お話を伺ったのは・白石久美子さん(仮名・38歳)。彼女は2年前まで大手の外資系保険会社に勤務し、年収は600万円を超えていました。それなのに今は1000万円あった貯金は20万円になり、仕事を再開する目途も立っていないと言います。

取材時のファッションは、theory風のサマーウールのグレーのミニ丈のシンプルなチュニックに黒のレギンス。足元は垢だらけになった、エルメス風のウエッジソールのサンダルです。特徴的だったのはネイル。セルフで真っ赤なネイルをしているのですが、爪の半分が伸びて地爪になっている。髪はロングでボサボサ、体型は太め。上半身はスッキリしているので痩せているのかと思ったら、下半身のボリュームがすごい。イスからこぼれ落ちそうなお肉の重量感です。

「仕事を辞めたのは、大好きだった彼がガンを発症したこと。それよりも数年前に、『DeNA』の南場智子さんが夫の看病のために退任したニュースに感動したので、私も彼女のように、愛する人を看病したいと思って会社を辞めました」

実家は兵庫県にあり、遠い。彼女の高校時代、母親が交通事故で亡くなっています。43歳という若さでした。その半年後に父親は新しい再婚相手を迎え、新しい父親のパートナーとそりが合わず、高校時代から別居。関西地方の国立大学を卒業後、ロンドンに留学。帰国後は東京の外資系の保険会社に入社し、3社目の会社だったといいます。

会社を辞めるときに住んでいたのは、東京都中央区にある家賃14万円のマンションで、今もそこに住んでいるとか……家賃はいったいどうしているの?

「貯金残高が100万円になったときに、“ここで安いところに引っ越さなくちゃヤバい”と思ったのですが、引っ越しには多額のお金がかかるので、先延ばしにしたままズルズルと今に至ります。家賃を払い続けて生活をしていかなくてはならないのに、会社を辞めるという思い切ったことをしてしまったのは、“死んだらおしまい”ということと“なんとかなる”と思っていたことが大きいです。当時、彼の看病に専念しなかったら、絶対に後悔すると思って」

会社は久美子さんを慰留しなかったのでしょうか。

「しませんでしたね。外資はドライですから。それに、なんというか上司と相性が悪くて、辞めたかったというのもホンネです。その45歳の上司は私立大学の野球部出身で、“俺の言うとおりに結果を出せ”と言ってくるタイプなんです。私の仕事のやり方に文句をつけてくるんです。最初はやり過ごしていたんですが、何度も重なるうちに私もブチ切れてしまって」

“どうせ評価されない”と諦めて、力半分で仕事をしたり、上司からミスを指摘されるたび激昂したり、泣いてしまったりしたとか。

「感情がセーブできなくなっちゃったんですよね。仕事がそもそもあまり好きではなかったことがあるかもしれません。私は自分の行動に対してきちんと納得してから先に進めたいのに、“仕事はやりながら考えろ”というタイプの人と仕事をするのが本当に苦痛でした。会社も休みがちになっていたし、朝起きてからどうしても会社に行けず、無断欠勤を2回もしてしまったし」

久美子さんが勤務していた会社は自殺者を出している。それゆえに会社も強硬な態度には出なかったといいます。

「部署異動と、産業カウンセラーのカウンセリングを受けることをすすめられました。しかし、一度“使えないやつ”とレッテルを貼られると、たいした仕事を任せてもらえないし、会社という組織の中でのヒエラルキーの最下位として評価されてしまう。かつて、イケイケだったある50代の男性社員が、ちょっとした交通費の横領と仕事のごまかしをしたのですが、イジメのようにガン詰めされて自殺未遂したんです。会社でラムネのように抗うつ剤を飲んでいる姿が印象的でした。実は私は20代の時にその彼と不倫していた時期があり、“女はいくらでも替えがいる”ということを言われたり、DVっぽいことをされてホントに辛かったのでザマミロという気分でしたね」

しかし会社を辞める時に、久美子さん自身が彼と同じような立場に立っている。同僚は誰も話しかけてこないし、たいした仕事を振られない。しかも、会社側は久美子さんの過去の経費の使い道について不正がないか調査しているというウワサも耳に入って来たそうです。

「そんなときに、当時付き合っていた彼がガンになったと電話をかけてきたんです。“これで会社を辞められる”と思ってしまいました。退職の言い訳として、愛する人の看病は美しいですから」

久美子さんも会社を辞める1か月ほど前に抗うつ剤を処方される。しかし、薬に対する抵抗感があり服用しなかったといいます。

交際する男性が亡くなるのは2人目という、久美子さんの不幸&貧困体質とは?〜その2〜に続きます。