小林麻央さん(33歳)が進行性がんで極秘入院------。スポーツ新聞にそんな見出しが踊り、6月8日に、夫の市川海老蔵さんが開いた会見内容はショッキングなものでした。

「比較的深刻ではあります。抗がん剤治療をやっております。よかったりよくならなかったりを繰り返しながら、手術をする方向に向かって治療をしています」と話し、このほか、「1年8か月前にわかった」「進行の早いがんと医者から言われている」ことを明らかにしました。

比較的深刻とは、どんな状態なのか。限られた情報ではありますが、乳がんの診察歴40年以上の近藤誠先生(元慶応大学病院放射線科)に聞いてみました。

「考えられるステージは3期か4期です」。

がんは病状によって0期から4期まで5段階に分けられ、その段階を「ステージ」と呼びます。いわゆる「早期がん」は1期と2期で、「進行がん」は3期と4期といえます。

「1年8か月前に乳がんが発覚して、手術をしていないということですが、考えられることはいろいろあります。ひとつは、発覚当時、手術をするには腫瘍が大きくてできなかった。そのため抗がん剤で小さくしようとしたが、いまだ十分に小さくならないということ。

この場合、乳がんと診断された段階で、しこり(腫瘍)がかなり大きかったことになるわけで、その自覚症状があって病院へ行ったのではないでしょうか。人間ドックのマンモグラフィで発見されたとは考えにくい。なぜなら、マンモグラフィで発見される乳がんはごく小さなものだからです。また、その99%は手術など必要のない“がんもどき”です。

次に、すでに他臓器へ転移していることが考えられます。そうなると4期ですが、肺や肝臓などに転移していると、何をしても治らないので、乳房のがんを手術してもあまり意味がありません。それで主治医は手術しなかったというケースです。小林さんが抗がん剤を何か月続けているのかわかりませんが、抗がん剤治療を受けている間に転移が出てきた可能性もあります。

また、こういうケースも考えられます。発覚当初、医者から乳房を全部取ってしまう“乳房全摘手術”を提案された。しかし患者さんは腫瘍の部分だけを切除する“乳房温存療法”を希望することがあります。乳房を残せますから。この場合、まず抗がん剤を使い、腫瘍が小さくなるのを待って乳房温存の手術を行なうことになります。しかし抗がん剤が効かず、腫瘍が小さくならないこともよくあります。ただその場合でも、抗がん剤治療には数か月で見切りをつけて、乳房全摘手術をするのが普通です」

小林麻央さんはまだ33歳。お子さんが2人(3歳と4歳)いらして、2人目の出産から日が浅いことに驚かれた読者も多いでしょう。これについては、近藤先生は

「乳がんは30代から発症が増え始めますので、珍しいことではないですね。出産経験があると乳がんになる確率が低くなると言われていますが、たとえ低くなってもゼロになるわけではありません」と言います。

マンモグラフィ検診を受ける必要は?

有名人の乳がん報道のあとは、必ずといっていいほど検診機関に予約が殺到します。昨年、北斗晶さんの乳がん告白後も一時、検診ラッシュが見られました。この点、近藤先生は注意を呼びかけています。

「日本ではさかんに推奨されていますが、世界的にはマンモグラフィに有効性はないという見方が主流になりつつあります。アメリカでは米国予防医学専門委員会が“40歳代にはマンモグラフィを推奨しない”と発表。スイスの医療委員会も“乳がんの死亡率を低下させない”としてマンモグラフィ検診の廃止を提案しています。最近では50歳代でも効果がないというデータが発表されているぐらいです。30歳代には、なおさら効果はありませんね。ないどころか、レントゲン被曝による発がん、過剰診断によって不要な乳房全摘術を強いられる害のほうが大といえます。しこりなどの自覚症状がない人が検診を受けるのは健康には逆効果ですよ」

女性にとって乳がんは比較的、身近ながんです。Suits世代は検診に行こうかどうしようか、悩ましい年齢です。小林麻央さんの乳がん報道にショックを受けた読者も多いと思いますが、ご自身の乳がん検診についてはよく調べてから決めたいですね。

乳がんは身近な病気。まずは正しい知識を。

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