金曜日のドラマは女の業で、押して押して押しまくる。
夫を殺した犯人を愛してしまう女のドラマ「コントレール〜罪と恋〜」(NHKよる10時〜)と、39歳の独身女が結婚するためのノウハウを学んでいく「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」(TBSよる10時〜)をどっちを見るか迷ったあと、林真理子原作、夫も妻も友達も不倫だらけの「不機嫌な果実」(テレビ朝日よる11時15分〜)が待っている。
4月の放送開始から主に、「私 結婚〜」と「不機嫌の果実」をオンタイムで見て、「コントレール」をオンデマンドで見ていたが、それぞれの女の欲望を3作も観るとぐったりする。でも、見始めたら最後、止まらないのは、コンビニで売っているチョコやスナック菓子の甘味料や化学調味料マジックのようなもので、食べなきゃ食べないで済むのに、食べ始めるとなぜか止まらなくなるおそろしさ。
6月10日(金)に、「コントレール」と「不機嫌」が一足早く最終回を迎えるので、寂しいようなホッとするような思いで、この際、3本まとめて振り返ってみたい。


シャワーシーンから交通事故で重体まで、井浦新の献身「コントレール〜罪と恋〜」


「コントレール〜罪と恋〜」は、夫を殺人事件で失い、6年もの間、女手一つで幼い子供を育てながら生きてきた未亡人(石田ゆり子)が、偶然出会った運送業の男(井浦新)に心惹かれ、女の喜びを取り戻していく。だが、男は夫を殺した張本人だった。
ベテラン脚本家の大石静は、ふたりの愛を燃え上がらせるための仕掛けとしてヘヴィー級の障害を考え出し、おかげで出だしは大いに盛り上がった。当初、夫を殺した相手とは知らずに井浦新に惹かれていく未亡人。事件を担当した刑事(原田泰造)は女に親切だけど物足りない。やっぱり孤独な女はかげりありまくりの男が好物なのだ。
ついにふたりが結ばれる場所は、安くて狭いホテルの一室ではなく、ヨーロッパのロマンチィックなホテルみたいなところ。そのへんのドリーミィーさが女のドラマ。
井浦新は、初回、シャワーシーンなども見せて、ドラマに奉仕する。この人、アートの仕事や若松孝二監督との仕事したりしているにもかかわらず、こういうメロドラマもやってしまう屈託なさがすごい。
だが、やがて真実がわかり、別れが訪れる。それでもやっぱり忘れられないふたりに周囲は冷たい。後半の障害は、死んだ夫が不倫していた相手(これが妻の不貞の免罪符になってる)。彼女が井浦新を恨んで嫌がらせをするのだが、このへんからトーンダウンがはじまる。仕方ないから、最終回直前の7話で、井浦新を交通事故に遭わせて引っ張るという、連続ドラマのお約束の力技で乗り切ろうとするも・・・。
殺人犯から人を助けようとして関係ない人をあやまって殺してしまうという、これ以上ない重い十字架を超えて最終回でどこまで飛躍できるのか。井浦新と石田ゆり子のコンビだと「悼む人」(15年/堤幸彦監督、原作・天童荒太)のふたりくらいトンでもないところにいってくれることを期待する。

最終回だというのに、イベント盛りだくさん「不機嫌な果実」


「不機嫌の果実」は林真理子の小説が原作。奇しくも、「コントレール」の石田ゆり子が、97年に、TBS の木曜ドラマ(残念、金曜ドラマではない)でこの小説をドラマ化した際、主演していた。
今回は、栗山千明が主演。結婚5年、ここ2、3年は夫(稲垣吾郎)と身体的な結びつきのない美人妻(栗山千明)が、結婚生活も仕事もパッとせず、自分ばかりが「損している」ような気分になって、元彼(成宮寛貴)と音楽評論家(市原隼人)とふらふらずるずる、仲良くなっていく。
部屋を薔薇でいっぱいにしたり、箱根の旅館での一夜など、ゴージャスなことをしてくれる元彼と、童心に戻ったような体験をさせてくれる少年のような音楽評論家と、両極端なシチュエーションを楽しむ美人妻。
実は彼女の夫とこっそり関係をもっているバツイチの友人(高梨臨)と、主婦モデルで夫のほかに恋愛を楽しんでいる奔放な友人(橋本マナミ)と誰もかれもが、自分の価値を男との関係で測っている。実も蓋もない話を、稲垣吾郎演じる夫が、浮気しているにもかかわらず妻に執着し続けるのはなぜなのかその謎でかろうじて引っ張っていく。
最終回目前で、夫が事故で記憶喪失になってしまうという、またまたドラマにありがちな展開に。ただ、記憶喪失は夫の狂言で、妻は音楽評論家に走ろうとして独身を装って彼の家に挨拶に行くと、その母は夫の病院で会った人だったというドッキリ展開も用意。まだなにひとつ解決してない様々な関係性を、あと1話でどうまとめるのか、観なくてもさほど痛くはないが、一応、結末を観たい気にさせられる。


男目線のマニュアルに反撃 「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」


最終回まであと2回ある「「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」は、水野敬也のマニュアル本「スパルタ婚活塾」を原案に、恋愛ドラマに定評のある金子ありさがストーリーものに仕立てあげた。
39歳のヒロイン(中谷美紀)は仕事には成功し、生活も満ち足りているが、恋愛や結婚に関しては順風満帆ではない。だが、高校時代、失恋した同級生(徳井義実〈チュートリアル〉)と再会したことから、今度こそ彼とうまくいくべく、よく行くレストランのシェフ(藤木直人)から、婚活アドバイスを受け、実践していく。
“彼氏じゃなくて仮氏をつくれ(そして恋愛に慣れる)”とか、“(希望に添わないデートでも)逆に楽しいと思え”とか“雑炊を極める(三つ葉は使うな、ネギでいい)”とか、胡散臭いノウハウを次々と試していく中谷美紀。
金子ありさがうまいのは、本命の徳井、思わぬ伏兵・年下男子(瀬戸康史)というよくある両手に花パターンに、さらにもうひとり加えたこと。性格に難があるとはいえ、美味しい料理をつくってくれる上、話相手になってくれる藤木直人が、まさかの本命になることもあるのでは? と揺さぶりをかけていく。
さらに、得意げにモテ論をふりかざす男が実は妻とうまくいっていない設定をつけ加えて、男目線のモテ論を批評して見せる。
金曜女のドラマ3本勝負の中で、この「私 結婚しない〜」が最も気楽に観られる。ヒロインが仕事で成功していて、男に過剰な期待をかけていないからか。「コントレール」と「不機嫌な果実」はヒロインの私生活が充実していなくて、そのせいで男によりかかり過ぎ。ともあれ、いろんなパターンのアラサー、アラフォー女性の生き方を観ることができて楽しい金曜日だった。
3作に共通していたのは、ケータイでLINEなどを多用する描写。今や、ドラマの面白さは、実際会ってどうこうのダイナミズムよりも、ケータイにまつわるエピソードをいかに面白く描くかにかかっているかもしれない。
(木俣冬)