ジョジョシリーズは飯テロだ


んマーい!という叫びはジョジョ読者のためにある言葉だ。このシリーズ、実は飯テロ作品。食事シーンに並々ならぬこだわりがあって、いわゆるジブリ飯と同等かそれ以上に料理がうまそうなのである。
第一部でも、まだ紳士じゃなかった頃のジョナサン・ジョースターは食事マナーがなってなくて「ズルベチャ」と食らいついていた。そこだけでも腹が減るのに、父ジョージが見咎めて「もうジョジョの食器をさげたまえ」と言って下げさせた謎の肉の塊が超うまそう。


そんなジョナサンを波紋戦士に鍛え上げたツェペリ男爵も、初登場はサンドイッチをパクついていた。ディオとの戦いで重傷を負っていたジョナサンの体に波紋を叩き込んでケガを治し、またサンドイッチを開いてコショウを振りかける。数ページにわたって弁当を手放さない唯一の波紋戦士である。
そして第二部。真っ黒な皿を前に「このホテルはインク入りのスパゲッティーを食わせようってのかァ」と胸ぐらを掴んだジョセフに対して「これは新鮮なイカのスミが入ってるんでございますよ、おいピーーーィです」と名言で返すボーイ。それも前フリに過ぎず、いちゃついていたイケメンに嫌がらせで波紋パスタをぶち込むと、マカロニの穴でキャッチされて波紋ワインで防御する謎の応酬。後の盟友・シーザーとの出会いは、ウマい料理を悪用することだったのだ。
DIOがふんぞり返るエジプト目指して世界漫遊する第三部は意外に食事が少なめだが、それだけに一つ一つが印象に残ってる。香港で老ジョセフがテキトーに注文したら、出てきたのがカエルの丸焼き! 手書きの「おじいちゃんゼンゼンチャウよ」の文字にも味があった。
とはいえ、ダントツに美味そうだったのがベビーフード。ミルクに卵黄とバナナとパンをトロトロになるまで煮たものをポルナレフが味見すると「んマーイ!」。もっと食わして!と離乳食に目がくらむポルポルくん込みで辛抱タマランのです。

第10話は、こんなお話


町外れにできたイタリア料理店にやってきた仗助と億泰。ここはシェフのトニオ・トラサルディーが客の体調を見て料理を決めるという変わったお店だった。出された水を口にしたとたん、あまりの美味さに感激する億泰。感動のあまり涙がどんどん溢れだして止まらず、白目の部分がしぼんでフニャフニャに……。

天才シェフ・トニオの声はベイマックス


ジョジョ第四部のデキはこの話の完成度にかかっているとも言われた、孤独じゃないグルメ回。オープニングを潰してまで尺をしっかり確保し、原作4話分のエッセンスを余すことなく映像化しようとする本気っぷりだ。そんな冒頭はアニメオリジナルで、暗闇の中でキッチンに包丁を研ぐ音が響き、内臓がぶわっと蠢いて獣の唸る鳴き声。美味しい料理を味わう話なのに、完全にホラー演出である。
兄貴の墓参りしたら何か食おうぜ〜という億泰のセリフは原作にはなかったが、故・虹村形兆の眠る霊園の近くにトニオの店がある設定通りで、こういうチョイとしたアレンジがアニメ版のうれしい気配り。
イタリア料理店の看板を見て、「あっこりゃたまらん!ヨダレずびっ!」原作で聞こえていた億泰のヨダレがテレビから聞こえて実感としてズシンと来る声優の高木渉さん、やっぱりエコーズACT2のスタンド使いですね。
いらっしゃいマセ、お席へドーゾと二人を出迎えたシェフ・トニオの声は『ベイマックス』の川島得愛さんで、今季は『コンクリート・レボルティオ』のジャガーも演じているお方。洋画の芸歴も長くて役柄も幅広く、ふだんは優しげで………なトニオに持って来いだ。今まで一つとして「声とキャラが違う」がない、最終的にはなじむジョジョアニメのキャスト、音響監督の岩波良和さん(だけではないはずだが)相変わらずいい仕事です。
丁寧な言葉づかいの中にひょっこり「そんなものウチにはないよ」が飛び出すトニオの外人ぽさも最高だが、今回は億泰=高木渉さんオンステージ。昨日下痢をして右足に水虫があって虫歯が2本、肩凝りまで持ってるオッサン高校生を演じられる人なんて世界中探しても他にいない。こんなうまい水、おれ生まれてこのカタ……飲んだことが!ねーぜぇーッ!と水にエキサイトする演技って、どこのアニメでも絶対に求められたことないはず。

グルメレポーター虹村億泰


自他ともに頭が悪いと認められる億泰の隠れた資質、それはグルメレポーターだった。いくら美味しい水であれ、「なんつーか気品に満ちた水ッつーかたとえるとアルプスのハープを弾くお姫様が飲むような味っつーかスゲーさわやかなんだよ……3日間、砂漠をうろついて初めて飲む水っつーかよぉーっ」と感動できるのは、もはや才能。そこに「グラスに砂漠を旅するラクダ」をかぶせる作画のフォローがナイス。
いや本当に、今回のエピソードほどレビュアー泣かせ、言葉の力に限りがあるとを思い知らされることはない。豊かなボキャブラリーをヤンキー感も保ちつつ語るプロ声優のスゴさ。目からドボドボ涙があふれ、肩がえぐられるほど垢が出るという松重豊さんも不可能なリアクション芸。ソフトボールぐらいに溜まった垢を皿に乗せて回収するトニオさん(店に置いとけないよな)まで含めて、映像のインパクトに文字が追いつける気がしない。
はじめは「まっなかなかウマいんじゃねーの」と斜に構えていたのが、トマトと一緒に口に入レルンデス!と言われた通り食うとウンまああ〜いっ!と味にハマって、虫歯が抜けたり異常かつヘルシーな怪奇現象が起こっても気にしなくなる。辛いの嫌いなはずが激辛の娼婦風スバゲッティをなめずにはいられない億泰。これって魔物に魅入られて人外に堕ちるホラー映画の定番まんまですよね。
手抜きと思われるのを承知で、億泰のリアクション語録っ!転載せずにはいられないッ!
「チーズがトマトを! トマトがチーズを引き立てるッ!
『ハーモニー』っつーんですかあ〜 『味の調和』っつーんですかあ〜っ
たとえるならサイモンとガーファンクルのデュエット! ウッチャンに対するナンチャン!高森朝雄の原作に対するちばてつやの『あしたのジョー』!」

「クセになるっつーかいったん味わうとひきずり込まれるカラさっつーか……たとえると『豆まきの節分』の時に年齢の数だけ豆を食おうとして大して好きでもねぇ豆をフト気づいてみたら一袋食ってたッツー感じかよぉ〜〜〜〜〜っ!」
だからこの話、原作でも夜中に読むのが嫌なんですよ。腹ペコの胃袋にじわじわと染み渡る美味しさのエキスで、いてもたってもいられなくなるから。「ウッチャンに対するナッチャン」という懐かしいたとえで、10数年分の腹が空いていくよぉ〜〜っ!
ヘルシーかつグロ料理を材料に“直し”てスタンド「パール・ジャム」を発見し、何かの攻撃だと確信して調理場に踏み込んだ仗助。フィルムに傷をつける風のホラーな空気感の中、子羊背肉リンゴソースかけを試食させられた子犬が口から内臓ぶちまけ。仗助ののぞき見に気づいたトニオは包丁をぶん投げ、レンガのようなもので撲殺……ではなく薬用石けんで手を洗いなさいッ!
トニオさんは本当に億泰にいい料理を食わせて健康にしたいと願う、純粋にいい人だった。無断で調理場に入った仗助は、罰として拭き掃除。主役にいいところ全くなし、それどころか戦闘もまるでなし。これぞ第四部アニメ!!
美味しいアニメ化に満腹した第10話。CM後に承太郎とスピードワゴン財団の使者がコンタクトして次回に繋げるCパートだけで素晴らしいデザートだったというのに、Twitter公式アカウントが明かした「億泰の“うまい棒”がゲームセンターに登場!」が最高すぎるオチでした。
(多根清史)