WWDC2016

2016年6月10日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)

今年もWWDCの季節がやってきた。今回の公式ページや招待状には、モノスペースフォントで、あたかもプログラムのコードを思わせるようなデザインが施されている(Webページでは、丁寧なことに、"Hello, WWDC16."の後ろに、入力待ちのキャレットを点滅させるという念の入れようだ)。

順当に考えれば、これが暗示するのは、WWDC 2016のキーノートがWWDC 2015と同じように、ソフトウェア中心の発表に終始するのではないかということになろう。もちろん、WWDCの本来の目的に照らすと、キーノートとはいえ開発者への情報提供を優先して、一般向けの製品発表が行われないからといって非難するにはあたらない。

その意味で、すでに公然の秘密状態にあるOS X 10.12やiOS 10は必ず発表され、最大のポイントはOS XのSiriサポートとSiri SDKの公開ということになりそうだ。これは、いささか遅きに失しているとも感じるが、Windows 10へのCortanaの搭載や、Amazon EchoおよびGoogle Homeに対抗する上でも、Siri関連のアップデートは大きなマイルストーンとなろう。

ただし、もし開発中の新ハードウェアが、アプリ開発にも影響するような要素を含んでいるとすれば話は別で、そこに対応するサードパーティ製品を増やすために、WWDCで披露する可能性が大いに出てくる。

例えば単純なクロックアップやCPUの世代交代程度ならば、アップルはサイレントアップデートで済ませるだろうが、機能に関わるデザイン変更となると、逆にWWDCのキーノートだけでなく、続くセッションも大いに活用して、アプリによるサポートを急がせるだろう。

今回の場合、そこに当てはまる製品があるとすれば、従来のファンクションキーを有機ELのタッチスクリーンに変更し、Touch IDも組み込み、ポート類をUSB-CとThunderbolt 3に集約すると噂される新型のMacBook Proになる。

キー割り当てのみならず、キーそのものの表示も変更可能なタッチスクリーンがサードパーティにも開放されれば、アプリからのアクセス方法を開発者に提示し、利用法のガイドラインを徹底させる必要がある。ユーザーの混乱を招かないためにも、ガイドラインの存在は特に重要だが、もしかすると、電光掲示板のような横スクロールによるメッセージや通知の表示などもできるようになるかもしれない。


有機ELタッチバーのイメージ

いずれにしても、実機を利用したハンズオンができるWWDCは、新機能をサポートするアプリ開発を加速させるには良い機会であり、もし新ハードがすでに発売可能な段階まできているのであれば、少なくともMacBook Proは発表されてもおかしくないと考える。

他にも、Apple Watch 2にも期待が高まっているが、現行モデルよりも薄くした上でiPhoneなしに単独でも機能するような仕様をバッテリー駆動時間とのトレードオフなしで実現するには、まだ少し時間がかかりそうだ。Apple Watch関連の発表があるとしても、watchOSのアップデートやバンド関連のものに留まるものと思われる。

さて話をSiriに戻して、実際のところホームアシスタントデバイスであるAmazon EchoやGoogle Homeと伍していくためには、iPhoneよりもApple TVのほうが適している。したがって、tvOSのSiri機能を強化していくことが理にかなっているのだが、そうなると今度はSiriリモートのボタンを押さないと音声を認識しない仕様がネックとなる。

であれば、個人的な希望としては、Apple TVと連携して、家の各部屋に置けるような常時オンのマイク/スピーカーユニットのサプライズ発表に期待したいところだが、果たしてどうなるだろうか?

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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。