高温超電導コイルを用いたMRIで高精細画像の撮像に成功。液体ヘリウムを使わない超電導コイルの実用化に一歩

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三菱電機、京都大学、東北大学の三者は、高温超電導コイルを用いた小型MRIを用いて、世界で初めて磁界強度(磁場強度)3テスラでの撮像に成功したと発表しました。

本研究は、MRIをはじめとした超電導コイルを必要とする装置の小型化と製造コストの低減、ヘリウムガスの消費抑制に寄与します。

6/10訂正:『超電導』と『超伝導』の表記ゆれを『超電導』表記に統一しました。超電導コイルとは、超電導状態にある導体を用いたコイル(電磁石)のこと。超電導体は電気抵抗や発熱がなく、エネルギーを無駄なく使えるため、コイルに用いると通常のコイルよりも強力な磁場を安定して発生させられます。

先述の通り、超電導コイルを必要とする装置としてはMRIが代表的です。現在、一般的なMRI(Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像撮像装置)に用いられる超電導コイルは『低温超電導コイル』と呼ばれており、液体ヘリウムを用いて-269度以下まで導体を冷却し、超電導体として機能させます。

一方、本研究で用いられている『高温超電導コイル』では-180度以下で電気抵抗がなくなるイットリウム系超電導線を用いており、冷却材に液体ヘリウムを用いるよりも高い温度で超電導コイルを動作させられるほか、低温超電導コイルと同じ断面積でより多くの電流を流せることから、同等性能の装置であれば小型化を図ることができます。

なお本研究の背景には、生産量が少なく、備蓄が減少していく一方で新興国での需要が増加しているヘリウムガス枯渇の懸念があり、近年、冷却にヘリウムを使わない高温超電導コイルの実用化が待たれていました。

今回の開発成果としては、高温超電導コイルの設計・製造に関する基本技術を確立し、製造精度の向上と、それに伴い高磁界強度での撮像が可能になった点が挙げられます。

具体的には、テープ状になっている高温超電導線の巻付け精度を向上させて磁界強度の均一性を確保したほか、小型のMRIに搭載して、撮像空間に置いたマウスの胎児を3テスラで撮像することに成功しています(MRIにおいては、磁界強度の値が大きいほど高精細な画像が得られます)。

今後の展開としては、2020年度までに実用機の半分サイズのMRIを試作するとともに、高温超電導コイルを用いた高安定磁界システムの実用化に向けた研究開発を推進していく見通し。

また、2021年以降には実用サイズのMRIコイル試作を行うなど、早期の事業化を目指すとしています。

超電導を用いた技術はリニアモーターカーや損失ゼロの送電などにも用いられていますが、超電導体を作るための冷却は、それらの技術を実用化するにあたり高いハードルとなってきました。

冷却材として使われている液体ヘリウムは非常に高価なため、長い間、従来よりも高温で超電導体になる合金などの開発も盛んに進められており、今回の発表も、超電導の実用化に向けた研究開発の成果の一つです。

いずれ高温超電導が安定して性能を出せるようになり、またコスト面での解決を見れば、いよいよリニアモーターカーをはじめとした、"未来の技術"の実用化が見えてくるのではないでしょうか。