7−2で圧勝したブルガリア戦から一転、日本代表はキリンカップ決勝でボスニア・ヘルツェゴビナに1−2で敗れた。

「ガッカリしている。集中力に欠け、得点直後に失点。ミーティングで言ったばかりのことが起きた」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、怒り心頭といった様子でそう語った。

 確かに、ブルガリア戦から2試合連続2失点は大きな課題だ。数の問題というより、失点の仕方が悪い。どの失点も、止めようもないほど鋭い相手の攻撃にさらされたわけではなく、「何でもない形」(DF森重真人)から奪われている。

 キャプテンの長谷部誠は語る。

「失点の仕方が、あまりにも簡単にやらせすぎた。誰の責任というより、チームとしての守備のところで(ボールに対して)行き切れていない。相手のFW(2得点したミラン・ジュリッチ)はセリエB(チェゼーナ)の選手。世界にはあれ以上の選手がゴロゴロいる。あらためて自分たちの立ち位置を考えさせられる」

 そして、厳しい表情のまま、「守備の改善は正直、かなり急務」と付け加えた。

 やはり相手を追いかける展開は、あらゆる意味でパワーが必要になる。日本がアジアを超え、世界レベルのチームと伍していこうと思うならば、失点を減らすこと、とりわけ先に失点しないことが重要になる。

 失礼ながら、世界のトップランクとは言えないボスニア・ヘルツェゴビナでも、リードした後はしっかりと守備を固めて時折カウンターをちらつかせる、巧みな試合運びを見せてくる。こうした展開に持ち込まれてもなお、試合をひっくり返すのはかなりハードルが高い。長谷部が言うように、守備の改善は急がなければならない。

 とはいえ、個人的にはそれほど悪い内容の試合だったとは考えていない。むしろ攻撃面においては、いい兆候が見えてきた試合だったのではないかと感じている。

 なかでも印象的な場面は、試合開始からわずか15分ほどの間で2度も見られた。

 1度目はMF柏木陽介が、2度目はFW宇佐美貴史が、高い位置で奪ったボールをワンタッチで相手DFラインの背後へ送ったシーンである。

 結果的にこのふたつのパスは、前線の動き出しがなく、いずれもミスに終わった。ゴールにつながるどころか、惜しい形ができたわけでもなく、せっかく奪ったボールをあっさりと手放しただけのプレーにも見える。

 だが、これこそが現在の日本代表に見られる「変化」だ。ひと言で言えば、ゴールに直結する「ダイレクトプレーの意識」である。

 ブラジル・ワールドカップ以前の日本代表は、どうしてもボールを大事にしようとする意識が強くなりすぎ、攻撃がスローダウンし、手詰まりになるケースが多かった。

 ところが、現在のチームは相手にスキがあればダイレクトプレーを使おう、すなわち、シンプルに敵のDFラインの背後を突いて、直接的にゴールへ向かおうという意識が高まっている。しかも、それは「特に監督から『狙え』と言われているわけではない。あくまでも自分たちの判断」(柏木)だという。

 この試合、特に前半は互いにコンパクトな布陣でボールを奪う合うなかで、速くシンプルにゴールへ向かい、チャンスを作るシーンが多かった。いい意味で"イケイケドンドン"の攻撃が目立った。

 実際、MF清武弘嗣の先制ゴールも、DFラインから手数をかけずに前線へボールを送り、宇佐美のドリブル突破から生まれたものだ。これまでの細かくつなぐ日本らしさとは、一味違ったゴールだった。

 もちろん、こうした攻撃は、前述したシーンで2度も失敗しているように、まだまだ熟成されているわけではない。ようやく意識が見えてきた、という段階だ。

 また、だからと言って意識が強くなりすぎ、ダイレクトプレー一辺倒になったのでは本末転倒。直接的にゴールへ向かうだけでは、単なる攻め急ぎになりかねない。

 当然、そこでは攻撃に変化をつけることが必要になる。ボランチとして攻撃の組み立て役となる柏木は言う。

「ボールを落ち着かせるところと、(ダイレクトプレーを)狙うところのメリハリは作らないといけない。今日は(自分が退いた後半も含めて)ちょっと攻撃が単調になりすぎた」

 従来、日本代表が志向してきたボールポゼッションは絶対に必要不可欠なものであり、それがベースにあったうえでのダイレクトプレー。要は使い分けだ。

 後半、柏木に代わりボランチに入ったMF遠藤航は「そこ(攻撃に変化をつけること)が一番難しいところ」と言い、こう話す。

「自分のよさは縦に(パスを)入れていくことだけど、それだけではダメだし、ゆっくりやる時間も必要。ボールを動かして揺さぶりながら、タイミングよく崩していくのも日本のよさだと思う。そのバランスは時間帯や試合の流れをよく考えてやるしかない」

 ハリルホジッチ監督が就任した当初は、あまりにも縦へ急ぐ意識が強くなり、行ったり来たりが激しい試合展開になることがあった。だが、そうした段階を経て、今は少しずつ効果的なダイレクトプレーの狙いが見られるようになってきた。

 いかに攻撃に変化――ボールポゼッションを高めたうえで、ダイレクトプレーを加える――をつけるか。

 その課題を選手たちはただ頭で考えたり、口で言ったりするだけでなく、実戦のなかで実際のプレーに落とし込み、試行錯誤し始めている。

 悪くない兆候だと思う。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki