今のチームも、2013年コンフェデのイタリア戦のような試合はできるだろう。ただし……。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 キリンカップの2試合は1勝1敗。ブルガリア戦では大量7点を奪ったものの、続くボスニア・ヘルツェゴビナ戦は1点にとどまった。一方、守備では2試合ともに2失点を喫している。

 この欧州代表チームとの2連戦を、戦術解析に定評がある現役イタリア人監督はどう見たのか? 現在の欧州スタンダードやブラジル・ワールドカップを戦ったザッケローニ監督時代との比較、また日本代表の課題についての見解を、前編・後編に渡ってお届けする。

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 前編で述べたように、正直に言って、戦術的なオーガナイゼーションという観点から見た時には、日本代表に欠点らしい欠点は見当たらない。ホームでの親善試合(しかもシーズン終了後の6月)という条件を差し引いても、ボスニアやブルガリアを相手に90分間を通して主導権を握り続けるのは簡単なことではない。

 ただし、ザッケローニ監督からも聞いた話だが、日本代表にはホームでは本当に伸び伸びと自分たちの力を発揮して戦う反面、アウェーでは持てる力を十分に発揮できない面があることは否定できない。
 
 その点も含めて、この日本代表が今ヨーロッパや南米のチームとの真剣勝負に臨んだとして、果たしてどこまでやれるかというのは興味深い設問だ。
 
 例えば、EUROに出場したとしようか。率直に言って、ドイツ、スペイン、フランス、ベルギーといった優勝候補と互角に戦うのは難しいだろう。

 戦術レベルで完璧に近いプレーを90分間続けたとしても、個人能力の差までを埋めることはできない。1対1はもちろん数的不利に置かれても単独で状況を打開できるワールドクラスのストライカーに、一度もチャンスを与えずに乗り切ることは不可能だろう。最終ラインでの数的均衡を受け入れる現在のような戦い方を選ぶならばなおさらだ。
 
 しかしそれよりも1ランク劣る中堅レベルのチームならば、互角かそれに近い戦いで相手をかなり苦しめることが可能だろう。2013年のコンフェデレーションズカップでイタリアにサッカーをさせなかった試合のように、戦術的なオーガナイゼーションで相手を圧倒して戦うことは、このチームならば可能だと思う。
 
 ただし、まさにそのイタリア戦がそうだったように、小さなミスや微妙な勝負の綾を最大限に活かして戦う経験と狡猾さを持った相手につけ込まれる、あるいは相手の圧倒的な個人能力に押し切られるといった形で失点する可能性は常にある。
 とはいえ決定機はそれなりに作り出せるはずであり、それを高い確率で決めることができれば、例えばイタリア相手に2-1、3-2といったスコアでの勝利は、同じようなスコアで敗れるのと同じくらいの確率で起こり得ると思う。
 
 現時点でもチームとしての完成度は十分に高い。ここからさらに実力を上積みする余地があるとすれば、まずはすでに見たようにアウェーでもホームと同じ積極的かつ攻撃的なメンタリティを貫いて戦うことができるようになること、そしてなにより個のクオリティを上積みすることだろう。

 もしこの日本に、ヨーロッパの4大リーグで15〜20得点を保証できるストライカー(例えばケインやベンゼマのような)、そしてオープンスペースでの1対1でも相手のストライカーを止められるスピードとフィジカル能力を備えたCB(例えばボアテングやヴァランヌのような)がいれば、世界のトップ10に入っても不思議ではない。
 
 そうやって考えてみると、チームとしての「可能性」と「限界」はどちらも、ザッケローニ監督時代から大きくは変わっていないということになる。しかしこれは決してネガティブなことではない。この日本代表には、日本のサッカーが現時点で持っているクオリティとポテンシャルが最大限に近い形で表現されていると言うことができるからだ。
 
 ここからさらに上、ワールドカップで8強を狙えるようなチームになるためには、圧倒的な個の力が必要不可欠だ。本田、香川、岡崎を上回るアタッカー、吉田、森重を上回るディフェンダーの出現が待たれるところだ。もちろんそれは一朝一夕に実現できることではないが……。
<前編『これほどオーガナイズされた代表チームは世界でも少ない』では、戦術面の長所・短所を徹底分析>

取材・文:片野道郎
 
プロフィール
ロベルト・ロッシ/現役時代はチェゼーナの育成部門でサッキに、ヴェネツィアでザッケローニに師事。引退後はインテルなどでザッケローニのスタッフを務め、その後監督として独り立ち。昨夏からロマーニャ・チェントロ(イタリア4部)を率いる。『WORLD SOCCER DIGEST』誌では、「カルチャトーレ解体新書」などで現役監督ならではの分析記事を寄稿している。