今の日本代表は両SBが同時に高い位置まで進出するため、ファーストプレスを外されてカウンターアタックを受けた時には失点のリスクが高くなる。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 キリンカップの2試合は1勝1敗。ブルガリア戦では大量7点を奪ったものの、続くボスニア・ヘルツェゴビナ戦は1点にとどまった。一方、守備では2試合ともに2失点を喫している。

 この欧州代表チームとの2連戦を、戦術解析に定評がある現役イタリア人監督はどう見たのか? 現在の欧州スタンダードやブラジル・ワールドカップを戦ったザッケローニ監督時代との比較、また日本代表の課題についての見解を、前編・後編に渡ってお届けする。

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 大勝したブルガリア戦と逆転負けしたボスニア戦、結果こそ対象的だったものの、日本代表のチームとしての振る舞い、パフォーマンスは一貫していた。
 
 それを総合的に評価するならば、ダイナミズムとアグレッシブネスを合わせ持ち、チームとして極めてよく組織された好チーム、ということになる。組織的な戦術という観点から見れば、これほどよくオーガナイズされた代表チームは世界でも数少ないのではないかと思う。
 
 サッカーのコンセプトは、ザッケローニ監督時代の延長線上にある。すなわち、フィジカル能力よりもテクニック、個人能力よりも組織的な連係を重視し、グラウンダーのパスをつないでボールを支配し積極的に主導権を握って戦うチームだ。
 
「ザックジャパン」と相違点があるとすれば、攻撃の局面で両SBが同時に高い位置まで進出すること。これにより多くのプレーヤーをボールのラインより前に送り込み、攻撃に厚みが出ているが、その反面ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)に備えてボールのラインより後ろでカバーリングポジションを取る人数が少ないため、ファーストプレスを外されてカウンターアタックを受けた時には失点のリスクが高くなる。
 
 実際、今回の2試合でも日本は多くの決定機を作り出した一方で、SBの戻り遅れから失点の場面が生まれている。
 
 これはコインの両面であり、攻守のバランスポイントをどこに置くかという、監督のフィロソフィにかかわる問題だ。ザッケローニに比べるとハリルホジッチのほうが、より積極的にリスクを取りに行く姿勢を持っているということ。
 
 しかしその点を除くと、チームとしてのコンセプト、戦い方には明らかな一貫性が見てとれる。そしてそれは、テクニック、クイックネスとアジリティ、持久力、規律と献身性といった日本サッカーの特徴と長所を活かし引き出すものだ。その点ではザッケローニとハリルホジッチのアプローチにほとんど違いはないと言えるだろう。
 以下、具体的に日本代表のサッカーを見ていこう。

 システムは4-2-3-1。2試合で多少の入れ替えはあったものの、CBペア(吉田、森重)〜2ボランチ(長谷部、柏木)〜CF岡崎というセンターライン、そして右SB長友、2列目の異なるポジションでプレーした清武と、チームの骨格をなすメンバーの顔ぶれは固まっている。ここに今回故障で出場機会が限られた香川、本田を加えた8〜9人は不動のレギュラーという位置付けだろう。
 
 攻撃のビルドアップは、GKからのリスタート、自陣でのボール奪取からのポジティブトランジション(守→攻の切り替え)のいずれにおいても、後方からグラウンダーのパスをつないでチーム全体を押し上げていくポゼッション志向が基本。
 
 とはいえ、ビルドアップ時にチーム全体のポジションバランスはそれほど重視されておらず、ポゼッションそのものによって試合のリズムをコントロールしようという姿勢は強くない。

 むしろ、ボールの周囲にいるプレーヤーが積極的に動いてマークを外しパスを引き出すことによって、1タッチ、2タッチの速いリズムでボールを動かし素早く敵陣までボールを運ぼうという姿勢、言ってみれば「ダイナミックなポゼッション」が基本だ。