日本はジュリッチ(18番)に2ゴールを許し手痛い敗戦を喫した。ゴール前で相手の一瞬の隙を突く爆発的なスピードは、日本が見習うべきものだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンカップ]日本代表1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ代表
6月7日/市立吹田サッカースタジアム
 
 6月7日に行なわれたキリンカップの決勝で、日本はボスニア・ヘルツェゴビナに1-2の逆転負けを喫した。ホームでの大会だから、ぜひともタイトルを手にして欲しかったのが正直な気持ちだが、その内容をとりわけ攻撃面だけを見れば、最後まで非常にエキサイティングなゲームだった。
 
 ハリルホジッチ体制になってから、最もスリリングな試合だったんじゃないかとも思うくらいだ。もちろん本田、香川の不在で、展開の読みにくい90分間だったことはあるにしても、手に汗を握ってテレビ観戦していたのは久しぶりだった。
 
 そのような内容が生まれた要因はどこにあるのか。その理由を探れば、やはりスピード感のある試合展開にあったことが言えるだろうね。ハリルホジッチ監督は日本の試合を「各駅停車のようだ」と表現していたコメントを目にしたことがあるが、この日はまったくもってその表現は当てはまらなかった。
 
 チームとして特に前半はボールがよく走っていたし、なにより全体的にスピード感があった。いわゆる「前への推進力」が、いままでの試合のなかで一番出ていたように見えた。
 
 もっとも、ボスニア・ヘルツェゴビナが、日本がワールドカップ2次予選で戦ったアジアのチームのように、守備的な戦いをしてきたら、こうしたスリリングな展開になっていなかっただろう。しっかりと相手チームも攻める姿勢を打ち出してきて、まさにスピーディな攻防を繰り広げたからこそ、見応えのあるフットボールになったと思う。
 
 スピードといっても、いろんなスピードがあるが「ゲーム・スピード」もしくは「背後への飛び出し」という点では日本の方が上だと感じたが、「カウンター・スピード」と「スイッチを入れた時の一瞬のスピード」という点では、ボスニア・ヘルツェゴビナが上回っていた。
 
 もっとわかりやすく言えば、チームとして“ここぞ”という場面での爆発的スピードが、ボスニア・ヘルツェゴビナにはあった。結果としてそれが勝敗を分けた。
 
 決勝点となった2点目のシーンはまさに好例だろう。相手のスルーパスが出た瞬間、最も警戒していたジュリッチがゴール前へ勢いよく飛び出し、吉田のマークを振り切ってそのまま右足で逆転ゴールを決めた。守備陣がスルーパスへの反応が遅れて、マークに対応しきれなかった吉田のプレーには課題も残るが、ゴールに向かう“爆発的なスピード”を感じさせた攻撃だった。
 
 一方、日本の攻撃では、カウンターなどから“チームとして”爆発的なスピードを発揮していたシーンはほとんどなかった。しかし個人に目を向ければ、初スタメンの浅野がインパクトを残してくれた。
 
 運動量や背後への飛び出しが持ち味の岡崎ではなく、浅野が爆発的スピードで存在感を見せたのは大きな驚きだった。いい意味で、21歳というフレッシュさをチームに還元してくれたと感じている。
 
 これまでは岡崎がたびたび爆発的なスピードをもってゴール前へ飛び出すプレーを見せてくれているが、この日の岡崎は相手のマークに苦しんでシュート0本に終わった。レスター優勝に貢献してきた男だから、シーズンが終わった後の疲労も理解はできる。
 
 この“爆発的なスピード”というのは、ヨーロッパのスタイルとして刷り込まれているのかもしれないが、ゴールへのスピード感をどうやって出していくか、というのは、日本が魅力あるチームになるためにも、そしてヨーロッパと渡り合うためにも身につけたいものだし、絶対に避けて通れない道だろう。9月から始まるワールドカップ・アジア最終予選を見据えるのは当然だけど、その先にある戦いのことも忘れてはならない。
 
 さて、最後に、今回のキリンカップを総括すれば、日本にとってポジティブな収穫は少なかったんじゃないかな。冒頭でも言ったけれど、もちろんホームはすべて勝たないといけないし、日本を背負って戦っているのだから、タイトルというものは絶対になんでも手に入れてもらいたい。
 
 7-2と大勝したブルガリア戦は、評価基準になるゲームではないと考えているけれど、レベルの高くないチームのカウンターに対応できなかったシーンもあった。さらにEUROに出場できなかったボスニア・ヘルツェゴビナの2軍相手に、ホームの利がありながらの敗戦。セットプレーにおける不安定な守備など、クリアにすべき課題がたくさん見えてきたゲームでもあった。
 
 好材料は浅野というニューフェイスが出現したということだ。いままで攻撃陣のオプションは宇佐美が筆頭だったが、技巧派の宇佐美に対して、相手の裏を突くことができる浅野というスピード系のカードを見つけることができた。まだまだ荒削りな選手だが、そのぶんこれからの成長も期待できる。アジア最終予選突破への大きな武器になりそうだ。