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米PTCの年次イベント「LiveWorx 2016」が6月6日より米マサチューセッツ州ボストンで開催されている。同イベント2日目(6月7日)の全体セッションではジム・ヘプルマンCEOが登壇し、IoTとARの組み合わせがもたらす価値について事例を交えながら説明した。

○デジタルとフィジカルの融合

ヘプルマン氏のプレゼンテーションにおける主要コンセプトの1つとして提示されたのが「デジタルとフィジカル(の世界)の融合」。同7日に発表されたPTCの新しいロゴマークはこのコンセプトを表現しているとのことで、同社のこれからの方針を表すフレーズだといえる。この「デジタルとフィジカルの融合」を実現するテクノロジーに位置づけられているのがARとVRだ。

IoTではセンサなどによって収集したデータを統合・解析し、活用することが重要となる。設備の予防保全や、製品開発の効率化などIoT技術の活用法はさまざまだが、ARやVRをIoTと組み合わせると"新たなエクスペリエンス"を提供できるようになる。この"新たなエクスペリエンス"の例としてヘプルマン氏が紹介したのがキャタピラー社の事例だ。

キャタピラー社では工事現場やスポーツイベント、コンサート会場などに向けて発電機のレンタルサービスを展開している。このレンタル事業では装置の稼働率を高く保つために、IoT技術を使用状況の把握や遠隔操作、フリート管理に活用している。ここまでは”普通のIoT事例”だと言えるが、キャタピラー社ではPTCの「Vuforia」テクノロジーを同事業に組み込んでいる。

VuforiaはPTCが2015年11月にQualcomm Connected Experiencesから買収したARプラットフォーム。キャタピラー社は2016年6月7日にPTCが発表した開発プラットフォーム「Vuforia Studio Enterpise」のベータカスタマーである。

Vuforia Studio EnterpriseではCADデータを用いてARコンテンツを作成することが可能(Vuforia Studio Enterpriseについては別記事で紹介する)で、キャタピラー社は燃料の残量やフィルターの状況などを実際の装置に重ねて表示するARコンテンツを開発。同コンテンツでは装置の使用状況だけでなく、部品交換の手順などもアニメーションで示すことができる。また、スマートフォンやタブレット上で実寸大の製品モデルを表示することができるため、マーケティングでも活用することが可能だ。

こうしたコミュニケーション手法について同氏は「人間は視覚と聴覚を組み合わせたやり取りを好む。実際に聞いたことや見たことは補完的に認識されるため、それを通して全体像をつかむことができる。もちろん、短時間に内容を理解することにもつながる」語り、ARやVRとIoTの組み合わせは体験を拡張するという点で大きな変革をもたらすものだとした。

○高校生が実現した「アジャイルエンジニアリング」

ヘプルマン氏のプレゼンではこのほか、柔軟かつ効率的な製品開発を実現した「アジャイルエンジニアリング」の事例として、PTCが支援する高校生向けロボット開発コンテスト「FIRST Robotics Competition」の参加チームを紹介。

通常の開発プロセスでは設計を確定するためには、試作品を製作して検証する必要があるが、ARを活用することで試作品を実際に製作しなくても実環境を使って試作品モデルの検証を行うことができるため、開発期間の短縮につなげることができる。

FIRST Robotics Competitionに参加して実際に開発にARを活用したという学生は「通常では開発プロセスの後半で設計を検討する。思い通りに行かない場合、全てをやり直さなければならなかったが、ARを活用することで設計の問題点を早い段階で発見することができた。非常に有効だったと思う」とコメントした。

アジャイルエンジニアリングではARだけでなく、開発プロセスの管理が非常に重要となる。PTCは開発プロセス管理を通じて開発効率の向上に貢献するPTC AgileWorxというソリューションを発表。上述の学生もこのAgileWorxを使用したという。

(神山翔)