ウシジマくんにカイジにデスノート…漫画原作の実写化成功例は?

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『鋼の錬金術師』実写映画化で議論の渦を巻き起こしてる漫画の実写化問題。
これまでも度々話題になっている漫画の実写映画化やドラマ化については、ファンからは「原作の良さが消えてしまう」「原作のイメージがぶち壊しになることが多い」という声も多く上がっています。しかし過去に比べて映画の制作技術全般が向上した結果、不可能だと言われていた漫画作品まで実写化されるなど、その数は年々増えており、これからも確実に増えていくだろうことが予想されます。

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母体数が増えたためにファンから不満の声が上がる作品も比例して増えていくのはしょうがないことかもしれませんが、その一方で数々の名作も生まれています。
今回はそんな成功した実写化作品を挙げて「なぜ、成功したのか」というポイントを探っていきたいと思います。

■『闇金ウシジマくん』は主演の山田孝之がマジで丑嶋馨の生き写しだった

実写化において批判が挙がりやすいものにキャストの中途半端な“コスプレ”ぶりが挙げられます。
これならファンがコスプレしたほうが原作に近いんじゃないか……と思うような場合は批判が殺到します。

しかし今年7月からテレビドラマシリーズ第三作目の放送、さらに秋には劇場版2作が公開予定の『闇金ウシジマくん』は、2010年にドラマ第一弾で主人公・丑嶋馨が俳優の山田孝之さんだと発表された時点ではファンの反応はイマイチだったものの、そのビジュアルが公開されるやいなや、あまりの生き写しっぷりに期待の声が高まりました。実際の演技でも丑嶋馨を模倣したような完璧さにファンからも多く納得の声が。

さらに、劇場版では丑嶋馨のビジネスパートナーである戌亥に綾野剛さん、密かなる敵である加賀マサルには菅田将暉さんを抜擢していることから制作側の熱意もファンに伝わり評価も高くなっています。

■カイジシリーズでは藤原竜也さんの迫真の演技が絶賛される

2009年に劇場版第一作『カイジ 人生逆転ゲーム』が公開された漫画『賭博黙示録カイジ』でも、主人公の伊藤開司のキャスティングが俳優の藤原竜也さんだと発表された時点では「綺麗すぎるカイジ」「イケメンカイジなんてミスキャスト」と散々な反応でした。しかし、これも公開されると藤原竜也さんの情けなさと男気が同居するまさにカイジぶりな演技に注目が集まり、現在では「実写化した成功作」の代表に挙げられるほどです。

藤原さんはこの他にも2006年に公開された映画『デスノート 前編』『デスノート 後編』(原作『DEATH NOTE』)でも主人公の夜神月を演じており、こちらでは原作通りの美形キャラがぴったりマッチしていたと前評判から高い評価を得ており迫真の演技も絶賛されていました。さらにL役の松山ケンイチさんに至っては「漫画からそのまま出てきたんじゃないの!?」とファンの度肝を抜いたことでも伝説に。

■松山さんと言えばDMCのクラウザーさんも完璧だった

2005年から2010年まで白泉社『ヤングアニマル』で連載されていた『デトロイト・メタル・シティ』(DMC)がまさかの実写映画化され、その主人公・根岸崇一に松山ケンイチさんが起用されて、これもスタンディング・オベーションばりに絶賛されています。

DMCと言えば心優しい渋谷系音楽を愛するひ弱な主人公が、実は一世を風靡しているデスメタルバンド・DMCのギター・ボーカルであるヨハネ・クラウザーII 世だというとんでもギャグ漫画です。主人公は卑語を連発しながらパフォーマンスする一方で渋谷系音楽を聞きながら静かにカプチーノを飲んだりカフェに通ったりというプライベートを過ごしており、この現実と理想に落差がありすぎる主人公の苦悩が大受け。『このマンガがすごい!2007』オトコ編で一位に輝いています。
クラウザーさんと普段の主人公をきっちり演じ分けられる俳優はいないだろうと思われていたところ、松山さんがあまりに上出来な演技を披露してファンの溜飲を下げました。

■『JIN-仁-』も素晴らしかった

村上もとかさんによる人気漫画のドラマ化で2009年と2011年にドラマ化された『JIN-仁-』。主演は大沢たかおさんで江戸にタイムスリップした脳外科医を熱演。主人公の南方仁原作では大沢さんのようないかにもな美丈夫ではなく、がっしりとした体つきの気さくな雰囲気あるクマっぽい医師でしたが、これもまた大沢さんの熱血ぶりに視聴者は魅了されました。ちなみに最終回の平均視聴率は20%超え。瞬間最高視聴率はなんと31.7%だったそうです。

主演の大沢さんだけでなく物語上のキーパーソンを演じた中谷美紀さんの演技も息を飲むほどだったことや江戸という時代を詳細まで丁寧に再現したことも実写化が成功した理由なのではないでしょうか。

■上野樹里が神演技をしていた『のだめカンタービレ』

音大を舞台にしたピアノの天才・野田恵と指揮者・千秋真一とそれを取り巻く人々の物語であるハートフルクラシックギャグ少女漫画である『のだめカンタービレ』もギャグという難しいカテゴリながら主人公・野田恵を演じた上野樹里さんの演技が高評価されました。

主人公がピアノの天才であることや独特な雰囲気と言葉の言い回しから「実写化したら絶対に白ける」というファンの厳しい声が多くあった中、上野さんはその演技力から三次元の壁をぱぱっと超えてしまい、また相方である千秋役の玉木宏さんとの掛け合いが抜群で大成功を収めました。

ちなみに上野さんは実際にピアノが弾けるものの撮影のためにレッスンに力を入れており、あの迫真のピアノシーンが出来上がったそうですよ。

■実写化が成功する要素は?

この他にも編集部では実写化が成功した作品をピックアップして調べていますが、世間的にファンが納得し成功したと言えるものには以下の要素が必ずありました。

・特に主人公に抜擢された役者は原作をトレースしているんじゃないかというレベルで演じている。もしくは脚本家や監督が原作の大ファン。

役者含めスタッフが原作を死ぬほど読み込んでいるのではないでしょうか。

・役者が自分の格好良さや美しさを捨てて演技に臨んでいる

DMCの松山さん、のだめの上野さん、カイジの藤原さん然り。

・小道具や舞台装置、背景などが原作に忠実かつ丁寧につくられている

仁ではあの江戸の舞台なくして成功はありませんでした。

・原作をぶち壊すようなオリジナルストーリーが含まれていない

実写化するにあたりある程度のオリジナルストーリーが追加されるのはしょうがないことですが、追加されたにしても「あくまで原作に沿う」ようなものであることが大事なようです。

実写化しても「ファンは基本原作ファン」でしかありません。そのため、映画監督や脚本家の色が出すぎてしまうオリジナルストーリーは求めていないということのよう。ファンが求めるのは「原作に忠実であるかどうか」、「忠実に再現したい気持ちが見られるかどうか」が大きなポイントみたいですね。

原作があってこその実写化だと言う<原作への敬意>を役者ならず監督などのスタッフが心の奥底から持つことが何より大切な要素。挙げた作品のように元来のファンも納得しつつ新たなるファンの獲得もできるような実写化作品がこれからも生まれることを期待しています!

(文:大路実歩子)