写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●食事代わりにお菓子を食べてはいけない理由
近年、食事から糖質量を減らすことでやせる「糖質制限ダイエット」が話題だ。同ダイエットは、大幅減量を達成した成功者がいる一方で、体への悪影響を危惧する声もしばしば聞かれる。

そういった背景も踏まえ、スローカロリー研究会はこのほど、マスコミセミナー「糖質とダイエット 〜糖質を正しく摂取するには〜」を開催した。

○糖質を上手に摂取するという選択

スローカロリー研究会は、糖質をオフするのではなく、小腸での消化吸収がゆっくりと行われるように摂取する「スローカロリー」の考え方を提唱する。同研究会は2015年2月に発足して以降、このスローカロリーの有用性について調査・研究を進めるとともに、情報の蓄積・発信を行ってきた。そして、健康づくりのための食生活を指導する医療・保健指導従事者をはじめ、一般生活者に向けての知識の普及に寄与することを活動目的として掲げている。

同研究会理事長を務める、結核予防会理事・総合健診推進センター長の宮崎滋氏は「糖質は、私たちが生きていくための大切なエネルギー源。思考力や活動量を落とさないためにも摂取は重要です」と語る。また、日本文化を象徴する和食には米・砂糖が欠かせないこと、加工特性や保存性といった便利さは現代人にマッチしていることにも触れながら、「エネルギー量や栄養バランスを意識しながら糖質を上手に摂取していく方法が重要になります」と述べた。

○「お菓子が食事代わり」は危険

続いて、武庫川女子大学 国際健康開発研究所講師の森真理氏が「スローカロリーの考え方と若者の食生活の実態について」と題して講演を行った。

森氏は、日本の女子中高生の血糖値が高めであることに言及。その原因が「若年層の食習慣」にあるとし、問題点として、食事代わりに菓子を食べたり、菓子パンやジュース、菓子などを間食で頻繁に摂(と)ったりする習慣を指摘した。これでは1日の中で血糖値が何度も急上昇・急降下を繰り返し、血糖値が高めに推移してしまうという。

○血糖値はなぜ高くなる?

ここで、食後に血糖値が上がる仕組みを整理しておこう。

食事をすると胃で消化され、腸でブドウ糖に分解されて腸から吸収される。吸収されたブドウ糖は肝臓へ送られ、血液中に流れ込み全身へ。そうして上がった血糖値を調整するために、すい臓からインスリンが分泌。その働きによって血液中のブドウ糖は筋肉細胞や脳細胞などに取り込まれ、エネルギーとして使えるようになるとともに、血糖値も正常値まで下がることになる。「規則正しい食習慣をしている人は、血糖値も安定しています」と森氏。

一方で、血糖値が高い人もいる。その原因は、長期にわたる糖質の摂りすぎによって、糖質を上手く細胞に取り込めなくなることだという。炭水化物や甘い物を食べ過ぎると、急激に上がった血糖値を調整しようとして大量のインスリンが分泌される。それを繰り返すうちにブドウ糖を細胞に取り込みづらくなり、血糖値が高いままになってしまうというのだ。このようなインスリンの過剰分泌は、内臓肥満や高血圧、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病のリスクを上げることがわかっている。

では具体的には、どのような食生活を送ればいいのだろうか。

●糖質の正しい「選び方」と「食べ順」を知ろう
○糖質の「種類」と「量」に注意

そのポイントは、糖質の「種類(質)」や「量」にある。というのも、糖質の種類や量によって血糖値の上がり方が異なるため、インスリンの分泌量も変わるからだ。

森氏はその一例として「白米」を挙げる。白米のご飯を2膳に増やした場合、1膳よりも食後血糖値は高くなり、インスリンの分泌量も増える。一方で白米と同じ糖質量の玄米を白米と比較すると、白米に比べて玄米は食物繊維を多く含むため、食後血糖値の急上昇を抑えることができる。

血糖値の変動は、固体か液体かによっても変わる。白米と同じ糖質量のジュースを白米と比較すると、液体であるジュースの方が糖の吸収が早く、食後血糖値の上昇も激しい。さらにインスリンが急激に出ることで低血糖になるため、すぐに空腹感が生じるという。

なお糖尿病の栄養指導では、「食べる順番」も重要視されている。例えば、最初に白米を食べるよりも、食物繊維を多く含む汁物から食べる方が食後血糖値の上昇はゆるやかに。つまり、同じカロリーでも食べる順番を変えることで糖の吸収に差が出るということだ。

○糖質を「スロー」に「オン」

同研究会では、スローカロリーの考えを取り入れた実践方法のことを「糖質スローオン」と表現する。そのポイントは次のとおり。

■単純炭水化物より複合炭水化物を選ぶ
ジュースなどの液体(単純炭水化物)よりも、米などの固体(複合炭水化物)を選び、しっかり噛(か)んで食べる。

■糖質単体ではなく、脂質やたんぱく質と組み合わせる
白米や麺のみの単品ではなく、主食・副菜・主菜をバランスよくそろえ、糖質を脂質やたんぱく質と一緒に摂る。

■食事では、まず食物繊維から食べる
食物繊維から先に摂ることが血糖値の急上昇を防ぐため、野菜を先に食べる(「ベジタブルファースト」という考え方)。

■糖質の吸収をゆるやかにする食品と一緒に摂る
ヨーグルトや乳製品、酢などの糖質の吸収をゆるやかにする食品と糖質を一緒に摂ることで、血糖値の急上昇・急降下を抑えられる。

■空腹時の糖質摂取は、スローカロリーの食品を選ぶ
空腹時に糖質を摂る場合は、カスピ海ヨーグルトやパラチノース(砂糖から酵素転換をして作られる糖)といった糖質の吸収をゆるやかにする食品を選んで食べる。

■食後に運動をする
食後にウォーキングなどの有酸素運動を行うと、血糖値が下がるといわれている。

森氏は、「糖尿病リスクの高い日本やアジアの人にとって、『糖質スローオン』を実践することは、糖尿病や生活習慣病の予防として有効です。あらゆる食事の場面で実践できるような食環境を実現することが理想的でしょう」とまとめた。

世間では「糖質制限ダイエット」とひとくくりにされがちだが、実践する前に、提唱する人によって方法が異なる点や、自分の体質や生活に合っているかという点も十分考慮しなければならない。その中で「スローカロリー」「糖質スローオン」という考え方は、糖尿病や生活習慣病を防ぐために有効な食事法と言えるだろう。またダイエットの観点から見ても、上手に糖質と付き合っていくことは、思わぬ健康リスクやストレスを引き起こすことなく、理想の体形をキープできる方法なのではないだろうか。

(須藤妙子)