ハイムリック法は握りこぶしで腹部を突き上げる。

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のどや口に食べ物などを詰まらせ、窒息で苦しむ人を助ける救命法に「ハイムリック法」がある。1974年に米の医学博士ヘンリー・ハイムリックさんが開発、全世界に広まっている。

ハイムリックさんは現在96歳で健在だが、自ら考案した方法を使い、食事中にのどを詰まらせた87歳の女性の命を救い、話題になっている。2016年5月29日、米紙ニューヨーク・タイムズやBBCなどの海外メディアが報道した。

「何百回も実演しましたが、人を助けたのは初めて」

ハイムリック法は、日本では「腹部突き上げ法」と呼ばれる。全国の消防組織では、異物を気道に詰まらせた時の救命法として、「背部叩打法」(肩甲骨の間を叩いて吐き出させる)と並んで推奨されている。方法は次のとおりだ。

(1)傷病者の背後に位置して、腕を後ろから抱えるように回す。
(2)片手で握りこぶしを作り、その親指側を傷病者のみぞおちの下部に当てる。
(3)その握りこぶしの上をもう一方の手で握り、すばやく手前上方に向かって突き上げるように強く引く。気道内の空気を瞬時に圧迫するため、ポンと異物がのどから飛び出る。

ただ、内臓を強い力で圧迫するため、行なうのは1回だけ。失敗したら背部叩打法などに切り替えるとよい。また、妊婦や幼児に行なうのは腹部を圧迫し過ぎて危険とされている。

ニューヨーク・タイムズなどの報道によると、ハイムリックさんは米オハイオ州シンシナティの老人ホームに入所していた。5月25日に8〜9人の入所者と一緒に夕食をとっていると、同じテーブルにいた女性パティ・リスさん(87)の様子がおかしいことに気づいた。顔が完全にこわばって黒ずみ、口をアップアップさせて苦しんでいた。ハイムリックさんは、すぐさま彼女の背後から両脇に腕を通して抱きかかえた。そして、握りこぶしを作って腹部を突き上げた。すると、骨付き肉の一片がのどから飛び出てきたという。

ハイムリックさんがリスさんの命を救うと、入居者たちは食事を再開、リスさんはその後、ハイムリックさんに礼状を送った。

BBCの取材に対し、ハイムリックさんは「私はこの方法を開発した後、何百回となく大勢の前で実演してみせましたが、実際に緊急時に遭遇して人の命を助けたのは今回が初めてです。この方法で窒息した人を救えるとは、なんと素晴らしいことでしょう」と語った。

レーガン、リズ・テーラー、イーストウッドらが恩恵を

ハイムリック法は、米国だけで約10万人の命を救っている。その中にはパーティーの最中にのどを詰まらせたりして、一命をとりとめた有名人も多い。BBCによると、ロナルド・レーガン元大統領、エドワード・コッチ元ニューヨーク市長、ハリウッドスターのジャック・レモン、ウォルター・マッソー、エリザベス・テーラー、マレーネ・ディートリッヒ、キャリー・フィッシャー、ゴールディー・ホーン、シェールらがそうだという。逆に2014年には、クリント・イーストウッドがゴルフの最中にチーズをのどにつまらせたディレクターの命をこの方法で救って称賛を浴びている。