「ふくしま国語塾」での直接指導や多くの著作、メディア出演や講演会を通じ、子ども達の国語力向上のため尽力されている福嶋隆史さん。

現代における国語教育の問題点とは? 本当の国語力ってどんなもの? 国語を学ぶことの意義とは? 

福嶋さんの目指す国語の教育の未来とは?難関校受験生の親御さんはもちろん、全国の国語指導者にも是非知ってもらいたいことがある、と熱を帯びて語る福嶋さんのお話を、実際に授業に使われている横浜の教室でたっぷりとうかがってきた。

無料メルマガをかれこれ10年以上に渡って配信し続けている福嶋さんですが、今回満を持して有料のメルマガ『ふくしま式で文学・評論を読み解く!』を始められました。何かきっかけなどがあったんですか。

有料メルマガはやらないつもりだったんですよ、本当は。やったところで、手間がかかる割には絶対に儲からないと思って。……今も別に儲かってないんですけど(笑)。

ただ、私はこれまで20冊ぐらいの本を出しているんですけど、本を書く際に内容をちょっとでも難しくしようとすると、出版社から拒否されることがあるんです。それじゃ売れないからって。でも、そういう難しい内容のものって、少なからずニーズがあるんです。例えば、私がこれまでに出した本って、開成や桜蔭といった私立の最難関校、あるいは東大に入りたいという子には、簡単過ぎるという意見もあるんですよ。

だから「もう読者は少なくてもいいから、より専門的な内容のものを出そうじゃないか」っていうのが、今回始めたメルマガの最大のコンセプトです。そういうニーズに対応できるのは、有料メルマガしかなかったんです。

出版社から本を出す時って、編集者が必ず付いて、内容に関してアドバイスしてくれますよね。でも私にとって、その編集者がいないというのが、メルマガを自分で配信する一番のメリットだと思っているんです。もちろん、編集者が不在なことはデメリットだと思う人もいると思うんですが、私は国語教師ですから、文章を書くことは苦でもないですし、むしろ編集者は邪魔でしようがない(笑)。メルマガなら、価格とかも自分で決められますしね。

今回始められた有料メルマガですが、読者層としてどんな方々を想定されていますか?

層としては、難関校への合格を目指されるような子どもとか親御さん。……でも実は、実際に書いていて一番の対象と考えているのは、教師なんですよね。メルマガを読んでいただけると、そのニオイはプンプンしているんですけどね。「明らかに教師向けだろ、コレ」っていうような(笑)

ただ、最難関校を目指している子どもとか親御さんって、そういうのでも熱心に読んでくださるから、そういう方も一応対象には入れています。ただ一番の対象は、全国にある塾の先生。次に、学校に勤めている、やる気のある教師ですね。

 

福嶋さんは以前から、学校現場の授業の質の低下について、警鐘を鳴らしてらっしゃいますよね。

学校もひどいんですが、塾にもひどい授業をしている先生がいっぱいいるんです。専任のベテランの先生だったらまだ別ですけど、最近って個別指導が流行っているじゃないですか。あれって、つまり大学生なんですが、そのレベルってひどく低いわけです。そういう先生に読んでもらえれば、ひいては子どもの能力が上がっていくじゃないかと。

私が究極の目的にしているのは、子どもたちの能力を上げたいということなんです。それは日本のためでもあるんですよ……冗談じゃなくって。そのためには、先生の能力を上げないといけない。メルマガの配信を含めて、私がやりたいのはそこなんです。

次ページ>>なぜ、福嶋さんは「ふくしま国語塾」を始めたのか?

過去には小学校で教師をされていた経歴を持つ福嶋さんですが、それを辞めて、今の「ふくしま国語塾」を始められた経緯を教えていただけますか。

教師になる前の教育実習の時点から、教育現場に対しての不信感は、ものすごくあったんですよ。

具体的に例を挙げるなら、アクティブラーニングですね。子どもの自主性に任せて、何も教えない。ひどい授業になると「さぁ、今日は何をやろうかな? 考えてみよう」って始まるんですよ、国語の授業で(笑)。90年代の話なんですが、とてもショッキングでした。これで本当に国語力が付くのかって。……要は、子どものことを考えてないんですよ。教育委員会も校長も教師も。「学習指導要領に則ってやっていればいいんでしょ」っていう考えで。

でも、そうだからといって教師になるのを止めるというのもなんだかなぁと思って、免許を取って都内の小学校に赴任したんですが、そんな感じなので、校長や副校長などとぶつかることも多かったんです。

教師を辞めるまでの5年間、いろんな学校で教えていたんですが、どこも授業がひどすぎて、子どもの顔がどんよりと淀んでいるんですよ。ただ、何とかしないといけないという気持ちはあったんですが、一教員としての自分が現場を変えていくというのは、やはり限界がありました。小学校教師だったので、全ての教科をレベルアップさせないといけないですから。

そんななかで、自分が唯一やりがいを持って教えられたのが、子どものころから得意だった国語だったんですね。それもあって、教師を辞めたら国語の専門塾を開こうと、ずっと思っていたんです。

 

いまの話で出てきたアクティブラーニングのような教育ですが、これがもし行き過ぎてしまうと、どういう風な影響が出てくると思われますか。

言葉による表現もできない、発信も受信もできないっていう人間ばかりになりますよね、間違いなく。

要はグループ活動ばっかりして育つから。独りで考えるっていうことをしないんですよ。だから仲良くできる能力というか、人間関係構築能力は高まるかもしれません。でも、そのレベルが上がっていかないと思います。なあなあで仲良くなることはできても。それこそホリエモンみたいに、突破する能力を持つ人はいなくなっちゃって、自信が持てない人ばっかりになると思います。

だって自信って、表現して、理解してもらえることで、初めてつくものじゃないですか。表現ができない、理解もできないじゃ、どっちもダメなわけですからね。

ただ、そういう教育も10年で切り替わると思います。学習指導要領って10年ごとに振り子のように行き来しているので。だから、10年で戻るとは思うんだけど、10年じゃ遅いですよね。失われた10年じゃないですけど、将来きっと批判される日が来ると思います。

小学校の教師を辞めて、今の国語塾を立ち上げて間もないころに、最初のメルマガを配信し始めたんですよね。そもそも、メルマガというものを書こうと思われた、最初のきっかけは何だったんですか?

当時、わらし仙人という人の本を読んでたんです。するとそこに“本を出すための方法”とあったんで、読んでみると“メルマガを出すこと。すると3か月で出版社から連絡が来る”って書いてあったんですよ。

塾の知名度も上げたい思っていましたし、それならっていうことでメルマガを始めました。ところが、そこから声がかかるまで、実際は3年ほどかかったんですけどね(笑)。

現在は、有料メルマガを含めて3本のメルマガを配信されている福嶋さんですが、そういう風に長くメルマガを続けるための秘訣って、何かあるんですか。

私の場合は、文章を書くのが全然苦じゃないっていうのが大きいんでしょうけど、あとはやっぱり“締め切り厳守”ってことじゃないでしょうか。

有料メルマガは以前からよく購読してて、あるジャーナリストのメルマガも最初の頃は購読していたんです。でも、配信日に届かないことがよくあって「何だ、こりゃ」って「有料なのにいいの?」って思ってたんです。……今はどうか知らないですけど。だから、そこでしょうかね。自分で自分を厳しくするみたいな。

私は無料メルマガの時点で、出すと言った日は守ってましたよ。間に合わなければ、夜中まで起きて絶対出すぞって感じでやってましたから。だって、それを延ばしてしまうと、延々と延びるじゃないですか。……まぁそれと、やっぱり読者がいると思うと楽しいから、それで書き続けているというのも、もちろんありますね。

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ところで福嶋さんの塾では、小4から高3までの子どもたちが、学年関係なしに同じ内容のものを学んでいると聞いて、すごく驚いたんですが……。

そうなんです。国語だからこそ、それができるんですよ。国語って漢字以外は、学年単位で習うことが変わらないんです。その漢字にしても、別に教えちゃえばいいだけの話ですからね。

いま有料メルマガでは、『重松清「セッちゃん」を徹底的に読み解く』ということで、私の塾で実際に行った授業の内容を公開しているのですが、これも小4から高3までがまったく同じ問題をやりました。

 

例えば小学生のほうが、高校生よりも正確に理解するとか、そういうこともあるんですか?

結構ありますよ。小5や小6ぐらいになれば、熱中する能力が高いというか、こう一回頭に入っちゃうと、スラスラと解いちゃうこともあります。その点では、高校生とかのほうが鈍いこともあって、「さっき来た小学生より下だぞ」みたいなことを、いつも言ってますよ。

そういう逆転現象が起こるというのは、“技術としての国語”を教えているからこそで、感覚的にやっていたら不可能ですよね。私が教えているのは、すべて“型”ですから。“型”だからこそ、小4でもキチッとできるんです。

国語における“型”というのは、どういうことなんでしょうか。

算数や数学みたいに、誰もが真似できることが必要なんですよ。算数・数学って、公式習って応用していくだけじゃないですか。それと同じように、国語も公式を習って真似していかなきゃいけないはずなんです。

それはなぜかというと、国語とは言葉だからなんです。言葉っていうのは、数学ほどではないけれど、ルールによってできている。文法もありますしね。だから国語教育においては、その点をしっかりと教えて、手ごたえのあるものにしなきゃいけないっていうことなんです。

私自身、そのことを“言語技術”あるいは“国語技術”と呼んでいるんですが、そういうことをやっている人は、それこそ東進ハイスクールの林修さんじゃないけど、特に大学受験界だといっぱいいらっしゃいます。ただ、私の場合、それをもっとシンプルにして、小学生でも理解できるところまで下ろしたのが、他にはない特徴だと自負しています。

こういう国語技術を磨く鍛錬というのは、やっぱり早いうちから始めたほうがいいんでしょうか。

そう思いますね。大人の方からの感想でも、もっと小さい頃からやりたかったですっていうのは多いですし、中高生の子たちやその親御さんからも、小学生から学んでいればよかったっていう声はよく聞きます。

だから、少なくとも中学生のうちから始めていれば、結構身に付くと思います。それより上の高校生や大学生になってからだと、もちろん役には立つんですけど、すでに身に付いたものに左右されちゃうんです。

もし国語が不得意だという子どもがいるとすれば、どういうことをやらせればいいんでしょうか。

私の塾にも、国語が苦手ということで来る子どもは多いんですが、やはり“型”を徹底的に学ぶということで、同じなんじゃないでしょうか。私が教えていることって、実はすごく簡単な技術なので、不得意な子ほど本当に役立つんです。

私が教えている技術で最もシンプルなのは、「アはAだが、イはB」っていうやつです。昨日は雨だったが、今日は晴れだとか、カレーは辛いけれど、シチューは甘いとか、それだけです。これなら、小学1年生でもできますよね。……そういうのを徹底的にやっていき、その「ア」「イ」「A」「B」に入る内容がだんだん抽象的になると、中学・高校のレベルということになる。それだけの話なんです。

苦手な子ほど、そういうことをやったほうがいいですね。だから私の塾では、反対語をよく教えています。「早い・遅い」といったシンプルなものから、「保守・革新」「絶対・相対」「独創・模倣」とか……。そういう反対語を、ひたすら教えています。それを使いこなせるようになれば、あらゆる概念を操作できるようになります。

次ページ>>福嶋さんがメルマガを通して読者に問いかけたいこととは?

日本の国語教育を変えていくためには今後どうすれば良いのか、福嶋さんが考えていらっしゃるアイデアなどありますか。

いま考えていて、今年から始めたいと思っているのは検定試験です。“国語技能検定”というのをやる予定なんですよ。日にちもすでに決めたんですけど、何しろ私一人でやっているから、準備が大変で(笑)。

その検定なんですけど、将来的には文科省が目を付けるレベルにまでにしたいというのが、私の大きな夢なんです。文科省って今、英検を導入すれば大学入試免除とか、そういうことをよく言ってるんですよね。そんな英検のレベルまでいかないにしても、こいつに頼めば国語の試験作ってもらえるんじゃないかっていうレベルまで、“国語技能検定”の認知度を上げたい。それが最大の目標ですよね。

 

それを実現させるために何が重要かっていうと、やはり採点基準なんですよね。2020年にセンター試験が廃止されて、大学入試が大きく変わると言われていますが、その最大の障壁となっているのが“国語の記述問題は採点ができるのか”ということ。でも採点基準って、私に言わせれば作れるんですよ。問題さえ優れていれば、記述の問題でも。

今回始めた有料メルマガに関しては、専門性が非常に高くプロ向きであることを、今後も売りとしていければと思っています。このメルマガを読めば、国語を指導する本当の技術が身に付きますよってことで。

最後に読者の方、あるいは購読を検討されている方に向けて、メッセージをお願いします。

もし教師の方なら、「国語という教科を教えることに自信がありますか」っていう問いを、投げかけたいですよね。多分99パーセントの教師は、国語を教える自信が持てていないはずです。

また親御さんだったら、「自分の子どもに国語を教える自信はありますか」って。生徒に対しては、「今、教えてくれている先生で満足ですか」。あるいは「読んだメソッドで成功したことがありますか」みたいな。とにかく、そういう質問を投げ掛けたいです。

そうすると、絶対に疑問符が付きますから、そういう人はぜひメルマガを読んでください、ということですよね。とにかく「国語に手ごたえがありますか」って、ひと言で言うならそこです。……いや、多分ないんじゃないですかって。でも、これにはありますよっていう、そんなメルマガになればと。

 

 

『ふくしま式で文学・評論を読み解く!』

著者/福嶋隆史
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出典元:まぐまぐニュース!