どうしたって、アヤカはアヤカである。7人制ラグビーの女子日本代表『サクラセブンズ』を長年リードしてきた鈴木彩香。大ケガや試練を乗り越え、ただいまリオデジャネイロ五輪の代表入りを目指し、日々奮戦している。

 サクラセブンズはこのほど、欧州遠征から帰国した。鈴木彩香は両ヒザの状態に苦しみながらも、試合で奮闘した。4日、7人制ラグビーの女子国内サーキット大会の東京大会(秩父宮ラグビー場)。スタンドで観戦するアヤカの顔は、どこか切ない。

「コンディションがなかなか上がらなかったんですけど、試合には少し、出させてもらいました。チームに貢献できない歯がゆさとか、悔しさもありましたけど、焦ってもいいことはないので......。試合に出なくても、チームとして自分は何をするべきか。チームを盛り上げたり、(チームメイトに)必要な言葉をかけたりすることが多かったです」

 もうじき、リオ五輪代表の12名が決まる。選別のときである。選手たちにとってはつらい、淘汰が待ち構える。

「これからが勝負どころです。まずはコンディションを整えて、自分のベストを出していくしかありません」

 ラグビーのことを記してきた自身の「ラグビーノート」は、もう10冊を優に超えた。ノートには筆致の強い黒ペンでこう書かれている。

<自分、がんばれ!>
<自分に負けるな!>
<ふんばれ、ここだ!>

 鈴木彩香が気恥ずかしそうに笑う。

「しょっちゅう泣いています。ケガしたり、痛みがあったり、うまくいかないことがあったりして。自分で励まさないとかわいそうじゃないですか」

 もう26歳となった。小学校2年でタックルのないタグラグビーと出会い、やがてラグビーに移った。17歳で日本代表入りし、数々の国際舞台を経験してきた。2013年の7人制ワールドカップ(W杯)では全敗し、悔し涙を流した。

 2014年1月には、へんとう炎が悪化し、手術したものの体調がすぐれない日が続き、代表を離れた。昨年1月、代表に復帰したが、練習試合で左ひざの前十字じん帯を断裂した。リハビリと闘い、復活した。昨年11月、サクラセブンズはリオ五輪出場権を獲得した。その後、ひざの内視鏡手術を受けた。

 またも復活し、海外遠征に帯同、ケガに注意しながら、経験をアピールする。持ち味が「状況判断」と「勝負魂」である。
(以下、インタビューは5月中旬に実施)

―― いま、自分で設定しているテーマは何ですか?

「サクラセブンズのテーマが『誠実さ』です。どれだけ、チームに対して、誠実さを行動、態度で示せるか、ということです。私なりにとらえたのは、言い訳しないで、自分の弱さにも向き合うということじゃないかなって。何事もしっかり受け止める。ひとつ、ひとつ。私は結構、おおらかというか、テキトーというか、気づくことができないタイプなので......。ハハハ。できるだけ、気がつくようにして、行動する習慣を身に付けるように心掛けています」

―― リオ五輪は?

「もちろん、行きたいです」

―― どこをアピールしていますか?

「私のいいところは状況判断が常にできることだと思います。ゲームの流れを客観的に冷静にみる。ちゃんと正しい判断をする。それを常に繰り返す。それが自分に求められていることだと思います。その精度を高くし、常にベストな判断をできるようにしたい」

―― 合宿でひざを軽く痛めたようですね。ケガをしないこともテーマのひとつですね。

「そうですね。自分の体は自分が一番わかるから、あぶないと思ったら、(練習を)やめておこう、リハビリをしようって」

―― サクラセブンズの鍛錬は猛烈です。代表の選手たちは猛練習にも逃げませんよね。

「ええ、たぶん逃げることを知らないんじゃないですか」

―― 代表チームは変わりましたか?

「はい。自分たちがやらなきゃいけないという覚悟がついてきました。自分たちでオリンピック出場権を勝ち取って、今度はリオで自分たちの結果を残すという覚悟がプレーや行動からにじみ出てくるようになりました。私も、すごく刺激を受けています」

―― リオ五輪での目標は?

「自分たちの目標は金メダルです。4年前からチームとして掲げてきました」

―― それにしても、アヤカさんの体ってでかくなりましたね。

「もう昔の服とか着られません。腕とかやばいですね。倍ぐらいの太さになりました。ベンチプレスで10kgぐらい上がって、今は75kgを挙げています」

―― プレー面での成長は?

「すごく周りをよく見るようになりました。ラグビーやっているときも、生活しているときも、すごく観察するようになりました。ただ大事なことは観察することじゃなくて、相手をわかることだと思います。やっぱり自分がしたいラグビーをするためには、自分のことを周りにわかってもらって、相手のことがわからないとうまくいかない。周りを見ることって大事ですよね」

―― 例えば?

「その人の発言とか行動、態度をみて、ああこの選手はこういう時に感情的になるんだ、こういう時に焦ったり、声が出なくなったりするんだって。試合中、慌てている選手にはボールをあまりパスしないですね。ミスしちゃいますから」

―― サクラセブンズが金メダルを獲るためには、どうすれば......

「私が、ですか? 壊す。チームを壊すことです。これはチームのマネジャーから言われたことなんですけど、"たくさんの愛情でチームを壊していってください"って。私たちって、ずっと一緒にいるわけです。家族みたいになってきて、とにかく仲がいいんです。でも、もう一段、成長するためには、何か壊していかないとダメかなって。性格的に、それは私の役目かなと思うんです。そういうことを言うのって、エネルギーがいるんです。でも、金メダルを獲りたいから、チームのプラスになるようなことを経験から言っていこうって。壊していくんです」

―― なるほど、一度壊して、結束したチームはより強くなります。昨年のW杯の"エディー・ジャパン"がそうでした。リオ五輪で金メダルを獲った時のシーンはイメージできていますか。

「私は金メダルを獲っても、淡々としていたいと思っています。私の目標は"世界一"になること、状況判断で世界一になることです。内容を伴っての金メダルがいい。そのため、一瞬一瞬を大事にしていきたい」

―― 最後にサクラセブンズを何かに例えると。

「う〜ん。アリです。アリって1匹だと弱いけど、大量にいると強いじゃないですか。私たち、チームになるとそうなんです。ムチャクチャ、働くんです、ほんと素直に。ムチャクチャ、走るんです」

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu