相手のメッセージの8割は、聞き逃している[『仕事の技法』著者インタビュー 第1回]

写真拡大

本誌「Forbes JAPAN」の人気連載「深き思索、静かな気づき」の田坂広志氏が、『仕事の技法』(講談社現代新書)『人間を磨く』(光文社新書)を立て続けに上梓。今回は特別に『仕事の技法』の鍵といえる「深層対話力」を中心に語ってもらった。

Q1. この『仕事の技法』という著書は、仕事においては、「言葉のメッセージ」よりも、実は、「言葉以外のメッセージ」によるコミュニケーションの方が重要であること、すなわち、「表層対話」の技法よりも「深層対話」の技法が重要であることについて述べたものと思いますが、なぜ、「言葉以外のメッセージ」の方が大切なのでしょうか?

田坂:ビジネスや仕事におけるコミュニケーションの重要性については、誰もが理解しているのですが、実は、コミュニケーションというものの8割は、「非言語的なメッセージ」、すなわち、表情や眼差し、仕草や身振り、態度や雰囲気といった「言葉以外のメッセージ」によって伝わるものであることは、あまり理解されていません。

世の中では、一般に、コミュニケーションというと、「理路整然と話す」「要点を箇条書きにして語る」といった「言語的なメッセージ」、すなわち「言葉のメッセージ」によるコミュニケーションの技法だけが注目されています。

しかし、この「言葉のメッセージ」によって相手に伝わる部分は、2割程度であり、本当に、ビジネスや仕事におけるコミュニケーション能力を高めようと思うならば、8割を占める「言葉以外のメッセージ」を感じ取る力と、伝える力を磨くことが必要なのです。

端的に言えば、この「言葉以外のメッセージ」によるコミュニケーション、すなわち「深層対話」の力を磨かなければ、相手のメッセージの8割は聞き逃しており、こちらのメッセージの8割は伝わっていないのです。

それは、要するに「2割の力」で仕事をしているようなものなのです。

しかし、この「深層対話」については、心理学やコミュニケーション学などの専門的な分野では、それなりに重要性が認められ、理論的な検討もされてきたのですが、ビジネスや仕事において「実践的に役に立つ技法」として語られたものは、これまで、あまりありませんでした。 

そこで、この『仕事の技法』では、我々が、日常しばしば遭遇する様々な仕事の場面を例に挙げ、会話型のショートストーリーを交えながら、「事後の経験反省」の技法や「事前の場面想定」の技法など、「深層対話力」を磨くための具体的な技法について語りました。

Q2. 田坂先生は、そもそも、なぜ、この「深層対話」というものに注目されたのでしょうか? そのきっかけを教えてください。

田坂:そうですね。仕事において、この「深層対話力」が重要であることに気がつき、その力を意識的に身につけたのは、新入社員の頃ですね。

なぜなら、新入社員の頃は、社内の会議においては、上司や先輩が多くを発言し、会議をリードするからです。また、社外での商談においても、やはり顧客や上司が多くを発言し、商談をリードします。

こうした「自分で積極的に発言することもままならない状況」において、新入社員として力を発揮するためには、まず、顧客や上司の発言、すなわち「言葉のメッ セージ」の意味を、しっかりと受け止め、理解することが大切ですが、それに加えて、顧客や上司の表情や眼差し、仕草や身振り、態度や雰囲気などから伝わってくる「言葉以外のメッセージ」を敏感に感じ取ることが重要です。

例えば、社内会議においては、上司が会議のまとめをするとき、上司の無言のメッセージを感じ取り、言われなくとも、白板の前で上司のまとめを書き留めることや、社外での商談においては、顧客と上司のやりとりの中で、顧客が自社の情報の詳しい説明を求めていると感じたら、黙って、上司の横に自社のパンフレットや資料を差し出すことなどが大切です。