全話を配信している動画視聴サイトHuluで、5月の視聴数ランキング1位に躍り出た「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系、毎週日曜22:30〜)第7話。


まりぶが変わった!


前回のレビューであれだけ「まりぶ(柳楽優弥)は変わらない」と書いたのに、第7話でまりぶが変わった!あんなに意識高く取り組んでいたおっぱいパブもガールズバーも放り出し、「カタギになる」と造園業の見習いをはじめた。坂間(岡田将生)は佐賀から出てきた茜ちゃん(安藤サクラ)の父親(辻萬長)に実家までこられて結納を進められそうになり、茜ともめながらも断ることに。冒頭では大変な時にバックレた山岸(太賀)に対して坂間が「恥っていう字はさ、耳に心って書くだろ……何も思いつかなかった」とうまいことを言い損ね、その後茜父に向かって「若いんだからもっともっと耳も心も真っ赤にしていかないと……ですよね」と話す。自ら恥をかく体験を経て、言うべき言葉を獲得していくさまがいい。

「長い、短い、短い、長い、超長い!」パート2


第7話では物語がどんどん回収されていく快感と終わりに向かっている寂しさが少しずつドラマ自体を覆い始めた。
たとえば、坂間が店に来た茜ちゃんの父と話すときの「ですね、ですです」という相槌は、第1話で企業の面接に臨んだ妹・ゆとりと全く同じ口調。
久しぶりにトンズラした山岸が逃げ込んだ場所は第2話で坂間が山岸と勘違いし、以来ちょくちょく通うようになった電車に飛び込み自殺をした青年の母親(真野響子)のもと。
坂間たちは食中毒を出した野上(でんでん)の会社をサポートして一緒に謝罪会見をし、被害者への損害賠償なども一部負担する。実は「恩を売って独占契約を続けよう」という上司・早川(手塚とおる)の思い切った営業方針なのだが、「どうしてここまでしてくれるんだ」という野上に「「野上さんを男として認めてるからでしょう」という坂間の言葉は、第5話で野上が発した「俺はあいつ(山岸)、認めたから」に対する答えだ。
そして、この第7話の終盤、茜ちゃんは仙台に栄転、坂間はエリアマネージャーへと昇進を果たす。そして山岸は、第1話で坂間が飛ばされたポジション、「鳥の民 高円寺店」の店長に!
バイトリーダーの村井(少路勇介)に「本社から来た人は、みんな店長だから……まあ、呼ぶかどうかわかんねえけど、フッ」と見下され、ねぎまのねぎに「長い、短い、短い、長い、超長い!」とダメ出しされるのは、第1話で坂間が通った道のりと全く同じだ。ここにきて”ゆとり第一世代”坂間が”ゆとりモンスター”山岸に完全勝利したわけだ。ただ、すでに数回前からあれだけ憎たらしかった山岸がかわいらしくさえ見える存在になっているから、爽快感を面白さが上回る。

演劇の猛者たちが集うドラマ


宮藤作品といえば、大人計画の役者たちが活躍することが多い。しかし「ゆとりですがなにか」に出演しているのは、「鳥の民」のバイトコンビ、少路勇介と矢本悠馬くらいだ(ちなみに教頭役の小松和重もマネージメントは大人計画だが、劇団員ではない)。若手二人が、笑いの部分が少なかった第1話から、きっちりと面白部分を担当し続けてきた。
その代わり、このドラマにはバラエティに富んだ劇団出身者が多数出演している。今回物語の中心を担った茜ちゃんの父、辻萬長は井上ひさしの戯曲を上演する劇団こまつ座の所属。今回「伝説の営業マン」ぷりを発揮した手塚とおるはケラリーノ・サンドロヴィッチがナイロン100℃の前に結成していた劇団健康の役者であり、現在まで様々な舞台に出演を続けている。山路(松坂桃李)とここのところいい感じの転校生のお母さん、石橋けいは所属こそしていないものの、一昨年岸田國士戯曲賞を獲得したCMディレクター・山内ケンジが主宰する城山羊の会の作品になくてはならない存在。

ちょっと変わったところでは、舎弟役の長村航希。彼はかつて劇団四季「ライオンキング」のヤングシンバを演じた経験をもつ。
そしてレンタルおじさん、吉田鋼太郎。若い頃からシェイクスピア作品に取り組み続け、蜷川幸雄作品の常連。小栗旬をはじめとする若い役者に慕われる存在だ。
ちなみに、岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥は3人とも、蜷川作品出演の経験をもつ”蜷川チルドレン”。先日亡くなった偉大な演出家は、こんなにもたくさんの子どもたちを遺していたのだ。

さて、茜ちゃんと坂間の間にすべり込んできたのは思いがけない伏兵・早川! 3人の関係はどうなっていくのか、「ゆとりですがなにか」第8話は今夜。
(釣木文恵)