さらに恐ろしいのは、脳の動脈が蝕まれた場合、脳卒中だけではすまない点だ。糖尿病患者が65歳以上の高齢になると、アルツハイマー型の認知症になる確率が実に5倍のリスク増になることが分かっているのだ。
 「インスリンの低下で脳内のエネルギーの代謝が悪化した結果、神経細胞が死滅してアルツハイマー病が進行するという研究結果が、九州大学生体防御医学研究所でまとめられている。その研究では、糖尿病はアルツハイマー病の発症リスクを高めるだけでなく、もともとある症状を悪化させることも裏付けられたのです」(健康ライター)

 また、エネルギー源をブドウ糖のみに頼っている脳にとって、血糖の低下も非常に重大だ。
 「通常血糖値が50mg/dl以下になると、脳の機能が低下し、最終的に昏睡に至ります。とはいえ、生体には血糖が下がり過ぎないようにする機能も備わっている。血糖値が下がるとインスリンの分泌は減り、血糖を上昇させるホルモンの分泌が増えて血糖が下がり過ぎないように調節されている。この交感神経系のホルモンにより現れるのが動悸、冷汗、震えなどの症状で、これ以上血糖が下がると中枢神経の機能が低下して危険だという、警告症状でもあるのです」(専門医)

 我が国の糖尿病は増加の一途をたどっている。厚生労働省による平成14年の調査結果では「糖尿病が強く疑われる人」は約740万人、「糖尿病の可能性が否定できない人との合計」は約1620万人だったが、平成19年ではそれぞれ、約890万人、約2210万人と、大幅に増えている。つまり、5人に1人が罹患しているということだ。

 では、どんな治療方法があるのだろうか。
 「基本は食事療法、運動療法です。それでも十分な血糖コントロールが得られない方や肥満傾向の方などに用いられるのが、経口血糖低下薬。インスリン治療で血糖が改善すると、膵臓がインスリンを出しやすくなり、インスリン注射の量や回数を減らせたり、飲み薬だけの治療が可能になることもあります」(前出・田村氏)

 加えて、内科医の松本光正医師が語る。
 「甘いものは厳禁。さらに炭水化物も腹の中に入ると糖に変化しますから、極力減らすこと。また、肥満は大敵で、標準体重に戻す。BMIで計算すると、身長(メートル)×身長(メートル)×22。例えば身長160センチの人なら1.6×1.6×22=56・32で、これが標準体重。最初にすることは薬を飲むことでもインスリンを打つことでもありません。まずは食べ物です」
 清原被告は過去の入院で、1日に3回のインスリン注射で血糖値を安定させていたという。しかし、これも医師の監督のもとで行わないと、急性の低血糖症で生命に危険を及ぼすことがある。

 我々の健康に関する会話のなかで、血糖値についてはよく話題にも上る身近な身体データ。しかし、放置の末は恐ろしい結果が待っていることを、肝に銘じておこう。