結婚することで芽生える二人の「愛」は、いろいろなことを通して大きくなったり、小さくなったりしていくものです。
今回紹介するは、ちょっと奇妙な夫婦の愛に満ち溢れた物語。愛っていったいなんなんだろう? と疑問に感じてしまった人に、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

あらすじ

アルコールに依存している笑子と男の恋人を持つ同性愛者の睦月は、おたがいの事情を知ったうえで結婚しました。世間的には秘密の多い二人ですが、おたがいを思いやり支えあいながらも、友情以上の深い愛によって結婚生活を送っています。
しかし、結婚したからには問題として出てくる子どものこと、親からのプレッシャーがあります。アルコール依存と同性愛者という壁がありながらも、二人の不思議な愛の形はそれらの問題と向き合いながら解決していきます。

不思議な愛の形が生まれるわけ

本作は笑子の視点と睦月の視点によって交互に話が進んでいき、おたがいの良いところや悪いところがそれぞれ相手の視点によって描かれています。そこでわかるのが、自分にとって悪いと思うところが相手にとっては愛おしさを感じさせる部分ということ。
お酒を飲むことで憂さ晴らしをしていた笑子は、優しさと思いやりを持って接してくれる睦月に深い安心感を覚えます。逆に、親からのプレッシャーや恋人の問題で悩まされる睦月は、いつでも率直でまっすぐな性格の笑子から、深い愛情を感じとっています。
笑子の率直な性格にはとてもハラハラさせられますが、それが物事を好転させ睦月のちょっとした不器用さをカバーしています。睦月は自分に自信がなくお節介な部分がありますが、そんなところが笑子の心の隙間を埋めてくれます。
おたがいの求めている部分がうまく重なり合うことで、普通の男女の愛とは違う不思議な愛の形ができ上がっています。

離れ離れになれない深い心のつながりが

一般的な夫婦や恋人とは違う2人の愛は、多くの障害があるからこそ成り立っているといっても過言ではありません。大切な人のダメな部分をいったん認め受け入れると、それを自分ではない他人に責められるのが苦痛になるもの。
睦月にとって笑子の心の不安定さは、だれにも非難してほしくない部分です。いっぽう笑子は睦月に素敵な恋人がいることを誇りに思い、二人の幸せを願っています。
そんなこともあり、二人には離れ離れになれない深い心のつながりがあり、おたがいを尊重した結婚生活を送ることができています。

じつは恋愛小説!

アルコール中毒者と同性愛者の話? なんて思うかもしれませんが、これは正真正銘の恋愛小説。笑子の心の隙間や寂しい気持ちは、女性なら誰しも共感してしまう部分です。
睦月とその恋人との関係、その中に自分を置くことで安らぎを覚える笑子の「ずっとこのままがいい」の言葉。波風を恐れる不安定さは、恋愛をしているとどうしても訪れる心の波です。最後は笑子の思い通りのハッピーな完結です。ちょっと変わった愛の話ですが、あなたにとって共感できる部分がいくつもあるはず! ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?