子どもの死因の約7%に「虐待の可能性」(shutterstock.com)

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 北海道で置き去りにされた小2児童が、行方不明になって6日ぶりに発見・保護された。児童は「水分しかとっていない」と説明したという。

 さらに発見が遅れれば、生命の危険もあったことは想像に難くない。世間では「しつけと虐待」の線引きをめぐる議論が沸騰し、事件性も疑われるなど、ここ数日、注目を集め、朗報に安堵した人も多かったに違いない。

 そんな折も折、日本小児科学会から深刻かつ傾聴に値すべき調査結果が公表された。15歳未満の子どもの死亡例のうち約3割が、不慮の事故や虐待によるものなど「未然に防げた可能性」を否めない案件だったという。

 今回の調査は、同学会の「子どもの死亡登録・検証委員会」が実施。同委員会の小児科医がいる東京都・群馬県・京都府・北九州市内の医療機関で、2011年に死亡した15歳未満の子ども368人の死因を詳細に尋ねて解析した(なお、東京都の場合は5歳未満のみが対象とされた)。

 調査の結果、重い病気や災害による死因を除く、ベランダからの転落死や浴槽内での溺死といった「未然防止の可能性」が読み取れる死亡例は101人(27%)もあった。そのうち「虐待の可能性」が考えられると判断された案件が27人(7%)。

 内訳は、頭部外傷をはじめ強く揺さぶられた際の脳の損傷(乳幼児揺さぶられ症候群)などに加え、親が医療機関の受診を拒否したり、適切な医療を受けさせないという虐待事例も含まれていた。さらに、死因特定が覚束ない事例もあり、そのなかには未然に防げた案件が埋もれているはずだ。

 厚生労働省の調べでは、同じ2011年における15歳未満の年間死亡者数は約5000人。それを今回の解析結果で換算すれば、約1300人の死亡例を未然防止できた可能性が推計できる。

 また、厚生省調べによる同年の虐待死亡者数(心中も含む)は99人と報告されているが、死因の詳細により踏み込んだ今調査から読めた確率(7%)を当てはめると、5000人中350人が虐待例となり、双方の開きは3倍を超える。
幼児死亡率の高さは啓発不足か!?

 こうした現況を憂い、日本小児科学会の「子どもの死亡登録・検証委員会」は、国による「死因把握制度」の早急な整備推進、つまり「防げる死の軽減」を呼びかけている。

 「子どもの死亡登録検証制度(Child death review:CDR)」は、さまざまな情報をもとに系統的に調査を行ない、予防可能な子どもの死亡を減らすことを目標とするもの。効果的な予防策を個人や家庭、社会や政策レベルでも検討し、介入を行なう例も厭わない。

 最初のCDRプログラムが設立されたのは1978年のロサンゼルスで、早くも30年以上が経過している。アリゾナ州における5年間(1995年〜)のCDRでは、4806例中の29%が予防可能な死亡と報告された。いまや米国ではほぼ全土、英国をはじめ数多の先進国でも制度化されている。

「1〜4歳児」の死亡率が高い日本

 一方、日本の場合は「1〜4歳児」の死亡率が他の先進国に比べて高く、2005年の年間死亡数がOECD27カ国中で17位。新生児・乳児の死亡率は低いのに反し、1〜4歳児の死亡例が高いという傾向は、先進諸国では見られない日本の特徴だ。

 国立成育医療研究センターの森臨太郎氏(研究所政策科学研究部長)らが2011年の1年間における都内の小児(0〜4歳)全死因を調べた結果でも、257例中11症例に予防可能性が読み取れた。そのうち患者側(親)への啓発活動を通して防げた可能性ありと判断できた症例が、全体の83%を占めたという。

 自宅での不慮の事故に止まらず、保育中や指導中の死亡例、徴候を読み取れない自殺案件など、子どもたちの死亡理由は現代社会や世相の鏡でもある。翻って、子どもたちの健康や安全のヒントがそこに隠されてもいるだろう。

 国による制度の整備と、患者への啓発活動の充実が早急に求められている。
(文=編集部)