ボランチの「ポスト遠藤争い」は一歩リード? 柏木は精度の高いキックと献身的な“走り”を生かし、多くの選手から信頼を集め出している。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 [キリンカップ]日本代表7-2ブルガリア代表
6月3日/豊田スタジアム
 

 試合開始と同時に、ボランチの柏木陽介にボールが集まった。背番号7は開始早々から攻撃を牽引し、自らもこぼれ球に合わせてミドルレンジからボレーシュートを放つ。
 
 そして3分、敵陣の右サイドでボールを受けてすぐさま前を向くと、低いライナー性のクロスを放つ。ボールはブルガリア代表DF陣とGKの間にできたスペースを突き、そこに飛び込んだ岡崎慎司のヘディングによる先制ゴールが決まる。オフサイドぎりぎりのタイミングではあったが、ピンポイントでの絶妙なタイミングのアシストだった。
 
 この日のボランチは、長谷部がバランスをとり、柏木が試合をコントロールするという役割分担。柏木がボールを持てば、周りが自然と“前向き”になって攻撃にスイッチが入る。スムーズな攻撃から生まれる数々のチャンス。その中心にいたのが柏木だった。
 
 先制点の場面を柏木は振り返る。
 
「オカちゃん(岡崎)には、常にゴールを狙ってほしいと思っている。いいタイミングで前を向けて、オカちゃんの動き出すタイミングを感じ取れた。あとはGKとDFの間に入り込んでくれると信じて、蹴り込むだけだった」
 
 一方、アシストを受けた岡崎も、ゴールに向かっていく左足のキックが「僕の持ち味を引き出してくれた」と“柏木効果”を説いていた。
 
「左利きの選手があの位置(ピッチの右寄り)でボールを受けて前を向いてくれると、僕の持ち味がより引き出される。一発目で決まりましたね」
 
 また、右サイドバックの酒井宏樹も、思い切ってより積極的にオーバーラップができたと言う。
 
「走っていれば、必ずパスが出てくる。陽介くんが少し窮屈そうにしながらも蹴ってくれるお陰で、内巻きに足もとへボールが来る。ちゃんと見てくれているので、信じて走るだけだった。サイドバックは、しっかり良いタイミングで走り出せばいい」
 
 加えて見逃せないのが、ボールを持たない時――オフ・ザ・ボールの動きだ。
 
 
 この日は素早くプレッシングをかけてブルガリアのビルドアップを封じる時と、ゴール前までリトリートして組織的に守る時とを、明確に使い分けていた。

 加えて、香川、清武、小林悠らがプレーしやすいようにフリーランでスペースを作っていく。前線の彼らが気持ち良さそうに攻撃に集中できていたのは、中盤の底での柏木の献身的な走りがあったからこそ。
 
“走り”の質は、所属先である浦和のペトロヴィッチ監督から常に要求されてきた。レベルをひとつ上げれば、そのもうひとつ高みを求められる。もちろん戦いの場が日本代表に移しても、柏木が追い求めるレベルは同様。

 それだけに大勝したとはいえ、今回は納得していなかった。後半何度かバランスを崩し、ボールを追うような形が増えた点を反省点に挙げていた。
 
「(後半は)ちょっとずつ流れが変わったので、もう少し、ボールを受けて散らせればよかった。(プフリーランなど、オフ・ザ・ボールの動きについて)量的にはできていたけれども、質はまだまだ。後半は物足りなかった」
 
 長短の精度の高いキックを駆使して攻撃を司るスタイルから、「遠藤保仁二世」と呼ばれることがある。ただ柏木自身は「タイプがちょっと違うと思うし、ヤットさんのほうが断然巧い。もちろん、目標にしている存在ではある」と、むしろ謙遜する。
 
 ただ、「ポスト遠藤」の激しいボランチ争いは今なお続いている。そのなかで、柏木が新たな可能性を改めて示したのではないだろうか。

 親善大会とはいえ、相手にかなりのダメージを与えたのは事実。ブルガリア戦で日本が見せた分厚い攻撃は、柏木の左足のキックととともに、目には見えにくい「質の高い走り」によっても支えられていた。
 
 “走るゲームメーカー”柏木が、動いてチームに貢献し、そして大きく日本を動かす――。

  
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)