歩くとこれほどいい効果がある

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ウオーキングなどの運動を習慣にすると、13種類ものがんの発症リスクが下がることが、144万人の大規模調査でわかった。

米国立がん研究所、米国立衛生研究所、米国がん学会の合同チームによる研究成果で、2016年5月16日付の米医師会誌「JAMA」(電子版)に発表された。

食道がん42%、肝臓がん27%、肺がん26%減...

ウオーキングなどの運動が肥満を防ぎ、高血圧や糖尿病などの生活習慣を予防することは知られている。近年は、がんも生活習慣病の1つという研究成果が相次いでおり、実際に運動がどのくらいがんの発症リスクを下げるかを検証するのが、今回の研究の目的だ。

研究チームは、米国や欧州の運動とがんに関する12の論文データを統合し、19〜98歳の男女約144万人の健康データベースを作った。そして、生活習慣とがんの発症について11年間追跡した。期間中に約18万7000人ががんになった。自己申告した日ごろの運動内容によって、26種類のがんの発症リスクに差があるかどうかを分析した。その結果、13種類のがんに運動との関連がみられ、肥満や喫煙などの因子を考慮しても統計学的なリスク差が確認できた。

具体的には、ウオーキングなどの活発な運動を週に5日以上行っている人は、ほとんど行なわない人に比べ、がん全体の発症リスクが7%低くなった。13種類のがんの発症リスクの低減を、差が大きい順から示すと次のとおりだった。▽食道がん(42%)▽肝臓がん(27%)▽肺がん(26%)▽腎臓がん(23%)▽胃がん(22%)▽子宮体がん(21%)▽骨髄性白血病(20%)▽骨髄腫(17%)▽結腸がん(16%)▽頭脛部がん(15%)▽直腸がん(13%)▽膀胱がん(13%)▽乳がん(10%)。

運動するとがん発症の「悪玉ホルモン」が減る

運動を習慣にすると、なぜがんの発症リスクが下がるのだろうか。研究を主導した米国立がん研究所のスティーブン・ムーア氏は「今回の研究では、運動ががん予防に役立つ理由は明らかにできませんでしたが、運動をすると、様々ながんの発症との関連が認められるホルモンの値が低下することがわかりました。特に、インスリンの値が制御されたことが重要です」と指摘している。

それは、こういうことだ。最近、がんの発症リスクが高くなるメカニズムの1つに、肥満や運動不足によって「高インスリン血症」になることが影響していることがわかってきた。糖尿病の前段階だ。血液中のインスリン値が上昇し過ぎる症状で、細胞の増殖や成長促進の働きをするIGFという物質の活動が活発になる。すると、がん細胞の成長も促進され、どんどん増殖していく。

インスリン値は血糖値が高くなると上昇するが、運動をすると血糖値が下がるので、インスリン値も正常になる。また、女性ホルモンや男性ホルモンの分泌が乱れるとがん細胞が増殖しやすくなるが、運動をして体脂肪を減らすと、これらの性ホルモンの分泌が調整され、がんの発症リスクが下がると考えられる。さらに、運動には、がん細胞の発生を誘発する「活性酸素」を除去し、体全体の免疫機能を高める効果があるのだ。

ムーア氏は「余暇時間は家の中で過ごさず、ぜひ外に出て、ウオーキングなどの運動を楽しみましょう」と呼びかけている。