新潟県中越地震以来エコノミークラス症候群対策に取り組んでいる榛沢和彦医師(新潟大講師)が、熊本地震の被災者の状況を報告。「長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気」と警告した。

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2016年6月2日、新潟県中越地震以来エコノミークラス症候群対策に取り組んでいる榛沢和彦医師(新潟大講師)が、日本記者クラブで熊本地震の被災者の状況を報告した。エコノミー症候群は、「長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気」と警告。「小さな血栓がやがて脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を引き起し、死亡事故につながってしまう」と注意を喚起した。

4月14日の前震と16日の本震に見舞われた熊本地震。大規模な余震が続いたため、避難者の多くが車中泊を選んだ。被害のひどかった益城町で総合体育館のアリーナは当初、天井が崩落して使用できないなど、避難する場所が不足した。

避難生活を続ける被災者を脅かすのが、血栓が肺に詰まるエコノミークラス症候群だ。熊本県によると、エコノミークラス症候群の入院患者は、50人に上り、うち2人が死亡した。

車の座席や狭い避難所などに長時間同じ姿勢でいると、足の静脈に血栓ができる。血栓が肺の血管までめぐって詰まれば、死に至ることがある。「エコノミークラス症候群」の症例で、車中泊は4倍危険という。夜間にトイレに行くのが面倒で水も飲まないと罹患の確率が高くなる。

2004年の新潟県中越地震の際、発生2週間以内に6人が死亡した。榛沢医師は「避難者にエコノミークラス症候群について警告できれば、犠牲者は出なかったかもしれない」と悔悟の念を率直に語った。以来、大災害のたびに被災地を訪れては診断や追跡調査を始めた。12年に発生したイタリア北部地震の現場にもたびたび出向き、講演などで啓発活動も続けてきた。中越地震に比べ熊本地震での死者が少ないのは、「エコノミー症候群」の脅威が流布され、予防意識が浸透したことも要因ではないかと分析する。

予防にはふくらはぎを締め付ける「弾性ストッキング」の装着が有効であり、狭い避難所では血栓の有無を調べるための携帯用エコー検査も欠かせない。足にできた血栓を早期に発見できれば、エコノミークラス症候群の危険を把握し、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞に至る危険も察知できる。

榛沢医師は「避難者は軽い運動や水分補給、マッサージ、弾性ストッキング着用を心がけてほしい。自衛隊にテントを設置してもらうなど、行政も早く手を打つべきだ。段ボール製簡易ベッドは、避難生活の改善に有用であり、エコノミー症候群の予防にもつながる」と訴えた。エコノミー症候群は、長時間にわたり同じ姿勢を強いられる航空機内や長距離バスなどでも発症する怖い病気。小さな血栓がやがて体中に回り、死亡事故につながってしまうという。(八牧浩行)