【日本サッカー見聞録】キリン杯初戦で本田不在でも成長を示したハリル・ジャパン

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▽キリンカップサッカー2016の準決勝2試合が6月3日に愛知県の豊田スタジアムで開催され、第1試合はボスニア・ヘルツェゴビナが2-2からのPK戦を4-3で制してデンマークに競り勝ち、第2試合は日本がブルガリアを7-2の大差で下して決勝に進出した。今年のキリン杯はFIFA国際Aマッチデーが2日しかないため、4チームによるトーナメント戦となっている。

▽準決勝で日本はブルガリアと対戦したわけだが、よく考えられたマッチメイクだと感心した。準決勝の第1試合はボスニア・ヘルツェゴビナvsデンマーク。ボスニア・ヘルツェゴビナはハリルホジッチ監督の祖国だし、デンマークにはレスターで岡崎のチームメイトであるGKシュマイケルがいる。どちらが勝っても、日本とは多少の因縁がある対戦相手となるだけに、決勝戦か3位決定戦はメディア的に盛り上げやすいというわけだ。

▽第1試合のボスニア・ヘルツェゴビナvsデンマークは前半にデンマークが2点を先制したものの、後半は退場者を出したボスニア・ヘルツェゴビナが198センチの長身FWミラン・ジュリッチが2ゴールを上げる活躍で同点に追いつくと、PK戦では最初のシュートこそGKシュマイケルにストップされたものの、その後は4人が連続してシュートを決めて競り勝った。

▽ボスニア・ヘルツェゴビナはスピード豊かなサイドアタッカーのハリス・ドゥリュビッチ、攻撃参加を得意とする左DFセアド・コラシナツにコントロールタワーのハリス・メドゥニャニンらくせ者揃いの好チーム。東欧勢特有の個人技も健在で、日本との試合は好ゲームが期待できそうだ。

▽その日本だが、第1戦は本田が左ヒザの炎症で欠場したものの、本田の不在を感じさせない前半だった。本田の武器は屈強なフィジカルを生かした“タメ”と決定力の高さにあることは周知の通り。しかし、その“タメ”が時として攻撃のスピードダウンを招いてしまうこともある。しかしブルガリア戦は香川と清武のハーモニーに柏木が絡み、ワンタッチによるパス交換から流れるような攻撃を見せた。

▽6月3日は午前中になでしこジャパンvsアメリカの試合をテレビ観戦したが、4-4-2システムから大儀見や大野の2トップに川澄のドリブル突破と、両サイドDFの攻撃参加を武器にした佐々木前監督に比べ、高倉新監督は4-2-3-1システムから岩渕をトップに据え、大儀見を左FWに起用していた。すると選手間の距離が近くなったため、岩渕のキープ力が生き、ゴール前の攻撃が多彩になった。

▽なでしこジャパンが奪った3ゴールは、いずれも名GKソロにとってノーチャンスの鮮やかなシュート。ただ、アメリカのゴールは先制点と3点目は防げたと思うだけに、残念な引き分けでもあった。それでもロスタイムに横山がゴール前のパス交換から奪った同点弾は、相手の足が止まっていたとはいえ、佐々木前監督時代にはあまりお目に掛かれなかった得点シーンだった。

▽話をハリル・ジャパンに戻そう。後半は6枚の攻撃カードを切ったために守備に混乱が生じて2点を失った。それでも23歳の遠藤や浅野に、代表歴1試合の昌子をピッチに送り込むなど経験を積ませた。大量リードがあったからこそできた交代ではあるが、浅野はPKを獲得する粘りを見せるなど、チームの若返りにも着々と着手している。果たしてボスニア・ヘルツェゴビナ戦ではどのような選手がテストされるのか。ハリルホジッチ監督のチームマネジメントに注目したい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。