昨年劇場公開され、7月8日にDVDが発売される「流れ星が消えないうちに」KADOKAWA/4104円/(C)2015映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会

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■ 【連載】聖地巡礼さんぽ〜あの作品の街を歩く〜Vol.13

【写真を見る】加地は、文化祭で自身が作ったプラネタリウムの上映に奈緒子を誘う(「聖徳学園中学・高等学校」)/(C)2015映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会

漫画や映画、ドラマなど、人気作品の舞台となった街を散策し、“住みたい街”としての魅力を深堀していく本連載。ここからみんなの“住みたい街”が見つかるかも?

第13回で取り上げるのは、NHK連続テレビ小説「あさが来た」で話題を集めた波瑠が主演の映画「流れ星が消えないうちに」。恋人の加地(葉山奨之)を事故で失った奈緒子(波瑠)と、加地の親友で奈緒子の現恋人・巧(入江甚儀)が、喪失感と罪悪感を抱えながらもがき続ける切ないラブストーリーだ。

橋本紡の同名小説を、美しい映像と緻密な心理描写によって忠実に再現した本作は、「原作からイメージする風景や街並みに、この地域の、特に玉川上水近辺の雰囲気がとてもしっくりと合っていた」(プロデューサーの佐治幸宏さん)という、武蔵野市・三鷹市で撮影。なかでも印象的なシーンで多く登場した“武蔵境”を紹介する。

■ 「聖徳学園中学・高等学校」

高校時代の回想シーンで、奈緒子・加地・巧たちが通う学校として登場する私立の中高一貫校。劇中でも「聖徳学園」の名が使われ、奈緒子たちが着る制服も本物。

「制服や正門を含めた建物の雰囲気がいいことと、キャンプファイヤーができる場所であったのも(撮影場所に選んだ)大きな理由」(プロデューサーの佐治幸宏さん)というように、校庭ではキャンプファイヤーを囲んでフォークダンスをする場面が撮影され、オクラホマミキサーをみっちり練習した在校生がエキストラ出演している。また、科学部だった加地が文化祭で発表したプラネタリウムも実際の体育館に設営された。

本作に全面的に協力した同校は、地域との交流も盛ん。高校3学年の学年主任を務める江草清和教諭は「かつて武蔵野近郊で栽培されていた唐辛子を、地元名物として復活させようというプロジェクトにも積極的に参加しています。また、地元のフリーペーパーやテレビ局と協力して、地域のお店などを取材・紹介し、お店側からも喜ばれています」と語ってくれた。

■ 「杵築大社」

約350年前に創建され、開運厄除け・縁結びの神様として親しまれている神社。境内には「ミニ富士山」(武蔵野市史跡指定)や、樹齢300年以上のご神木「千本銀杏」(武蔵野市天然記念物指定)など、見どころも多い。

劇中では奈緒子と加地の待ち合わせ場所として登場。「元々(人を入れず)実景シーンだけで撮影しようと思っていた場所でしたが、天候が悪くなったことで急遽必要となった撮影場所として使用することに。雰囲気のある魅力的な場所でしたので、結果的にいいシーンとなりました」(プロデューサーの佐治幸宏さん)。

奈緒子がこの神社で摘み、しおりとして加地に渡した葉っぱが、時が経ち色を変え、記憶を呼び起こすアイテムとなって出てくる。

■ 「武蔵野プレイス」

図書館やカフェのほか、市民活動・青少年活動・生涯学習支援の機能を備えた、武蔵野市立の複合施設。地上4階、地下3階からなり、地下2階から地上2階フロアを占める図書館には、約17万冊の蔵書と630タイトルの雑誌をそろえる。

デザイン性の高い建物も人気で、劇中では付き合いたての奈緒子と加地がデートする回想シーンの中で外観が映るだけだが、その一瞬で強い印象を残している。

■ 「蕎麦処ささい」

巧と奈緒子の父・本山諒(小市慢太郎)が酒を酌み交わすのが、昭和40(1965)年から武蔵境で営業を続ける「蕎麦処ささい」。店内に石臼製粉機があり、挽きたて・打ち立ての風味豊かなそばが味わえる。

劇中で、カメオ出演しているシンガーソングライター・堂島孝平扮する店員が「地元の名物くらい知ってないと」と言って巧にすすめるのが、武蔵野市産の小麦粉を使った「武蔵野地粉うどん」。濃い目の肉汁にゆでた野菜とうどんをつけて食べるのが、この地域に昔から伝わるうどんの食べ方だそう。

「武蔵境は吉祥寺や都内に出やすく、静かな街なので住みやすいです。地元の守り神である杵築神社はなじみ深い場所で、図書館やカフェのある武蔵野プレイスは便利ですね」と穏やかな笑顔で語ってくれた店長・笹井伸一郎さんは、生まれも育ちも武蔵境だ。

■ 「桜一の橋」

武蔵境駅から徒歩で30分ほどの場所にある、玉川上水に架かる橋。大きな集合団地の奥に位置し、武蔵境駅と結ぶバス路線の発着点となる停留所「団地上水端」のほど近く。

映画の中では、小学生の頃の加地が橋の下に転落してしまい、その場に居合わせた奈緒子にとっても印象的な場所として登場。さらに、巧とのデート中に偶然たどり着き、奈緒子が泣き崩れてしまうという、物語が一つの展開を見せるシーンに使われている。

■ 「すきっぷ通り商店街」「みどりや」

奈緒子と巧が買い物をするシーンと、巧と酔っぱらった本山が深夜に歩くシーンで登場するのが、武蔵境駅北口から伸びる全長200mの「すきっぷ通り商店街」。人通りが多く、5月の武蔵境ピクニックほか、サマーセールや歳末セールといったイベントも行われているにぎやかな商店街だ。

劇中、青果店の前で奈緒子と巧が食べている焼き芋は、実際に青果店「みどりや」が寒い時期限定で販売している名物商品。「みどりや」では、4月頃に販売する「ゆでたけのこ」も毎年人気。

新宿駅まで電車で1本、京王線・調布駅や西武線・ひばりが丘駅行きなどバス路線も充実し、アクセスは文句なしの武蔵境。駅周辺には大型スーパーや商業施設、商店街があって買い物にも困らず、住民の方々がこぞって口にする自慢の「武蔵野プレイス」も。

ただ、それ以上に魅力を感じたのは、街を元気にしようという空気。吉祥寺と三鷹の陰に隠れがちだった武蔵境を盛り上げようと、2009年に「武蔵境活性化委員会」が発足され、地元商店や住民、企業、教育機関、金融機関が一丸となって活性化に取り組んでいる。聖徳学園の先生が話してくれた唐辛子の話も、この委員会主導のプロジェクト。

「昔ながらの商店も多く残り、コミュニケーションが盛んなので、いい意味で人がおせっかい。田舎と都会の両方の側面を持ち、緑も豊かで、最近注目が高まっている街です。街全体が家と職場の往復だけでなく、暮らしやすく楽しみやすいサードプレイスとなるような場所になってほしいですね」と語ってくれたのは、武蔵境活性化委員会副委員長の見木久夫さん。

武蔵境での撮影を経て、映画プロデューサー・佐治幸宏さんは「吉祥寺のような商業エリアと少し離れて、子育てがゆったりとできるような生活感のある街の雰囲気だと強く感じました」という。

原作小説を読み、映画を見てまんまとハマった取材スタッフにとって、リアルな“聖地巡礼さんぽ”となった今回の取材で、作品のイメージ通りな街の風景に感動。さらに、住んでいる自分を妙に現実的に感じられ、「住む街」引力の強さを実感。そんな引力を感じられるかどうか、街歩きをして試してみては。【東京ウォーカー】

第14弾は6月中旬配信予定