香川(中)のゴールを“お膳立て”した清武(13番)。同時先発起用されたふたりは、息の合ったコンビネーションで攻撃をリードした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンカップ]日本代表7-2ブルガリア代表
6月3日/豊田スタジアム

 香川真司清武弘嗣
 
 自他ともに認める、抜群のコンビネーションを見せるふたりである。
 
 ただ、それぞれが「トップ下」を本職とするだけに、彼らの“共存”はレアケースのひとつでもあった。

 キリンカップのメンバー発表の席でも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は清武について「シンジと競争してほしいです」と語っている。しかし一方で、こうも言っている。
 
「彼らがボールを奪うところ、ディシプリンを覚えれば、シンジと清武を同時に使いたい」
 
 指揮官が要求する守備のタスクを、ふたりはクリアしたのだろう。終わってみれば7-2で大勝したブルガリア戦のスタメンに香川と清武が名を連ね、前者はトップ下、後者は左ウイングで、キックオフを迎えた。
 
「試合に入る前から、『絶対に前半で取るぞ』という気持ちだったし、ふたりでそう話していた。それでシンジ君は2点を決めた」(清武)
 
 岡崎慎司のゴールで先制した日本はその後、長友佑都の高精度クロスを香川が完璧なタイミングでヘッドで合わせて、リードを広げる。そして――。

 チームにとっては3点目、香川にとってはこの日2点目となるゴールは、清武の“お膳立て”から生まれた。
 
 直接的なアシストではない。ただ、清武の献身性と閃きが相手DFを欺き、香川の卓越したテクニックが発揮されるシチュエーションを作った。
 
 右サイドから小林悠がグラウンダーのクロスを入れる。これにまず反応したのは、ペナルティアーク付近にいた清武だ。しかし、背番号13は自分の足もとに来たボールをスルー。後方には背番号10がスタンバイ。香川はゴールに背を向ける形で、受けたボールを右足の裏で転がしてDFを軽やかにかわし、左足で流し込んだ。
 
 祝福に近寄った清武が「よくやった」というふうに香川の頭に手を添えると、「サンキュー」という感じで、香川は清武の頬を軽く叩く。
 
「サイドで起点を作って、悠くんが粘って、キヨが潰れてくれてっていう、本当にみんなが絡んだ得点で、冷静にシュートを決められた」(香川)
 
 流れるような崩しで奪ったこのゴールは、香川と清武の共存が成立することを改めて証明する、美しい一撃だった。
 もっとも、清武は香川との連係について、「100点満点ではなかった」と、あまり満足はしていないようだ。
 
「ある程度はできたかなという感触はありますけど、冷静に試合を見てみないと。いろんなシーンがありましたし、振り返る時間が必要かなと思います」
 
 裏を返せば、まだまだこんなもんじゃない、もっとできる、ということなのだろう。残念ながら、共存の時間は長くは続かなかった。70分までプレーした清武に対して、香川は前半の終了間際に、相手との接触プレーによる負傷で途中交代を余儀なくされている。
 
 ハリルホジッチ監督からしても、彼らの息の合ったプレーをもっと見たかったに違いない。ふたりが近くにいることで多くのチャンスが生まれたのは事実で、そのメリットについて清武は次のように語っている。
 
「シュートに行ける場面も多かったし、相手のプレッシャーがキツい時に、ワンタッチで落とせる人が近くにいれば、ボールを失う回数も減る。プレッシャーを剥がせるし、展開もできる。メリットはたくさんありますよね」
 
 ブルガリア戦での清武は、「大柄な相手には効果的」と、ワンタッチパスを駆使しながら、スピーディな仕掛けを演出した。「ちょっと意識し過ぎたというか、時間帯によってはもう少しボールを落ち着かせてもよかった」と、ワンタッチパスを多用した点は反省するが、周囲と連動したアタックに、間違いなく相手は手を焼いていた。
 
 その“ワンタッチで落とせる人”が香川であり、ボランチの柏木陽介だった。テンポ良くボールを動かすこのトライアングルは、ハリルジャパンの新たなストロングポイントにもなり得るもので、とりわけ香川と清武は阿吽の呼吸を見せていた。
 
「お互い、トップ下なので。シンジくんとはタイプが似ていますし、同じ意識でプレーできています」
 
 トップ下のポジションを高いレベルで争う香川と清武は、イメージを深く共有できる頼れる仲間同士でもある。
 
 ブルガリア戦での短いふたりの競演を、ハリルホジッチ監督はどう評価したか。少なくとも、彼らが同時にピッチに立っている間、7つのゴールのうち、4つが生まれている。
 
 その試合で負傷交代した香川が、ボスニア・ヘルツェゴビナとの決勝に出場できるかは未定だが、清武は冗談交じりに香川の出場を強く要求した。
 
「次の相手も強いので。シンジくんには出てもらわないと困りますけど」
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)