ベンチで一番端にいた本田の隣に座った小林祐希。「ビジョンについて」話をしたという。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンカップ]日本代表7-2ブルガリア代表
6月3日/豊田スタジアム

 日本代表に初めて招集された小林祐希は、ブルガリア戦のピッチに立てなかった。それでもベンチでは本田圭佑の隣に座って、プロとしてのビジョンなど、その独特な世界観に触れる貴重な時間になったそうだ。

 試合の2日前にハリルホジッチ監督は、今回初めてA代表に招き入れた小林祐と大島僚太について、「まだ準備ができていない。学ぶ時期である」と語り、ブルガリア戦で起用しない方針を示していた。
 
 それでも小林祐自身は、チャンスを得たいという強い想いを持っていた。ブルガリア戦後、彼はこう言っていた。
 
「出たかったです。まだ信頼を得ていないし、仕方がないかもしれませんが……。練習は確認作業が多く、アピールがなかなかできない。ただ様子を見ながらも、普通にはできています。あとはどのように、自分の色を出すかを考えていきたいです」
 
 まずクリアした目標のA代表メンバー入り。選手たちと過ごす1日、一瞬から刺激を受け、得るものは多いと言う。
 
「お客さんがたくさんスタジアムに来てくれて、(TVでは)全国のサッカーファンが見ている注目度の高い試合。そこで7点も取れるのは、ちゃんとコンディションを整えてきているということ。それは素晴らしいなと思いました」
 
 そうは言っても、ベンチで90分間を過ごしたことに、決して『納得』はしていない。
 
「ベンチに座っているだけでは面白くないから、1分でも出たかったです。でも次があるので、頑張ります」
 
 ベンチでは本田の隣に座った。『本田二世』と周囲から言われることに首を捻る小林だが、あえてそのような行動に出たのは、いったいなぜか。
 
「いろいろ聞きたいことがあったので、『一緒に見ましょう』と声を掛けました。(ブルガリア戦の)試合に関することはもちろん、どのように自分のビジョンを描いていくかという部分で、どうすれば目立つかを聞いたりしました」
 
 プレーを見て、話を聞いて……五感をフル活用し、得られるものは貪欲に吸収していった。
 小林祐は頷いて話す。
 
「みんな明るいし、チームを引っ張っていっている選手ばかりだから、よく喋る。いいですね。常に雰囲気がいいと感じます。でも練習になるとピリッとして、ミーティングではピリピリになる。そういった切り替えが瞬時にできるところがすごい。もちろんジュビロの選手とも共通する部分ではありますが」
 
 そう語る小林祐は“インプット”が終了したと強調していた。
 
「自分がやらなければいけないすべてが、この期間で分かりました。あとは行動に移すだけです」

 フラストレーションは溜まっている。それでも7日に、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦があるのは、チャンスだとポジティブに捉える。

「次、(キリンカップの)ファイナルで結果を残したいです。対戦相手も手応えのある良いチーム。これまでの練習ではトップ下や右MFをやってきたけど、ポジションは言われればどこでもやります。まず一回、ピッチに立つことが大事ですから。一度立つことで、どこでやりたいかという考えや課題も見えてきますから」

 イメージは膨らんでいる。純粋にこの選手たちと一緒にピッチに立ってプレーを体感したいという願望もある。あとはこの溜め込んだ気持ちを含めて、ピッチ上で爆発させる――“アウトプット”するだけだ。
 
「どんなプレーがしたいか? それを言って誰かに真似されたくないので、僕がピッチに立ったらプレーで示しますよ」

 24歳のレフティは悔しそうに、少し嬉しそうに、新たな目標をはっきりと捉えて、宿舎に向かう選手用のバスへ向かった。

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)