自ら得たPKを浅野が突き刺し、代表初ゴールを記録!写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンカップ]日本代表7-2ブルガリア代表
6月3日/豊田スタジアム
 
 日本が6-2と大量リードで迎えた85分過ぎだった。浅野拓磨が右サイドからペナルティエリアにボールを持ち込み、中央にえぐろうとする。
 
だが、大柄なブルガリアDFに背中からかぶさるようにして止められると、主審の笛が鳴り日本にPKが与えられた。
 
 ベンチから出たハリルホジッチ監督は、途中出場で日本の6点目のゴールを決めていた宇佐美貴史にそのPKを蹴るように指示を出す。しかし――ボールを持ったのは浅野。周囲を何度か確認し、ペナルティアークに向かった。
 
 その時の様子を宇佐美は次のように振り返る。
 
「(ハリルホジッチ監督は)僕に『蹴れ、蹴れ』って言ってましたけど、あの時間帯で、あのスコアで拓磨が取ったPKだったので、僕が蹴るべきではないと思ったんです。だから、、ペナ(ペナルティエリア)のほうに行ったら、俺が蹴る流れになってしまうので、そっちには向かわないようにしました。そのなかで拓磨が『行ける』と言って、よしそれでいいぞとなりました」
 
 では、浅野はどのように思っていたのか。59分に小林悠と交代出場してピッチに立ってから、これまでにない“違和感”があったと言う。
 
「緊張感があり、いろんな状況も重なって、身体が動かないなと思っていました。パスもたくさん失っていた。(そのなかでPKを獲得し)監督は宇佐美くんに『(キッカーを)変われ、変われ!』と言っていたけれども、みんなが僕に蹴らしてくれました」
 
 ボールを持った浅野は、大きく深呼吸をしてボールをセット。GKの動きを見切って、完全に逆を突く右隅への鋭いショットで、記念すべきA代表初ゴールをゲット! ジャガーポーズで決めた。
 
 では、ハリルホジッチ監督はこのやりとりについて、どのように思っていたのだろうか。
 
「交代出場からPKを蹴るとは、非常に勇気がある男だ。浅野は広島ではレギュラーを取れずにいるが、背後を突くスピードとパワーがあり、1年前からチェックしてきた。今日も途中からゴールの可能性を示してくれて、非常に満足している。
 
 そして指揮官は、PKのシーンについて明かす。
 
「PKは宇佐美に蹴らせようとした。しかし、ベンチの全員が声を荒げて『浅野に』と言ってきたんだ。だからスコアも開いていたし、浅野も非常に期待に応えて戦ってくれていたので、彼にチャンスを与えて、みんなを喜ばせるようにしたよ」
 
 浅野のPKが決まった瞬間、ベンチの選手たちもハリルホジッチ監督を囲んで笑顔を浮かべた。頑固な指揮官もこの時ばかりは、大きな笑みを浮かべた。
 
「もしも拓磨が外していたら、『ほら、蹴れって言っただろ』となったと思うけれど」とは宇佐美。「結果的」に、最後はスタンドにもう一度大きな歓喜をもたらした。
 
 このブルガリア戦で、浅野は大きな経験をしたと言う。
 
「海外組の選手たちがいるなかで初めてプレーできて、力が入っていた部分もあった。そのなかで戦う責任感やいろいろ感じるところもありました。ボールを奪った瞬間の切り替え、動き出しのところをもっと増やしていかないといけない。この1試合に出場できて、大きな経験になります」
 
 浅野にとって、ハリルジャパンにとって、ちょっとした“記念”のゴールとなった。
 
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)