WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 ジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)が、ディーン&デルーカ招待(5月26日〜29日/テキサス州)で今季2勝目を挙げた。

 これで、2週前のザ・プレーヤーズ選手権で優勝した世界ランキング1位のジェイソン・デイ(28歳/オーストラリア)と、1週前の欧州ツアー、アイリッシュオープンで地元優勝を遂げた同3位のロリー・マキロイ(27歳/北アイルランド)に続き、"ビッグ3"それぞれが勝利を飾って上り調子であることをアピール。これから行なわれるビッグトーナメント、全米オープン(6月16日〜19日/ペンシルベニア州)や全英オープン(7月14日〜17日/スコットランド)、さらにはリオデジャネイロ五輪(8月11日〜14日/ブラジル)などが、ますます楽しみになってきた。

 とりわけ、スピースは4月のマスターズにおける"悪夢"から復活。その苦しみから解放されて、スピース自身、安堵の表情を浮かべて喜びを噛みしめた。

「この勝利は、僕の選手人生の中でもすごく重要なものになると思う」

 地元テキサス州で手にした初めての優勝。しかし、その栄冠を獲得するのは決して簡単なことではなかった。

 同州のダラスで生まれたスピース。今大会が行なわれたコロニアルCCは、そこから車で1時間もかからないフォートワースにある。故郷の"隣町"と言えるようなところで、ギャラリーはスピース一色に染まっていたのだろう、と日本のファンなら想像するに違いない。しかも前週、まさしく地元・ダラスで開催されたAT&Tバイロン・ネルソン選手権で、勝つチャンスがありながら最終日に自滅。勝利を逃したばかりゆえ、なおさら声援は大きかったと思うのではないだろうか。

 ところが、である。最終日最終組でスピースと一緒にプレーしたライアン・パーマー(39歳/アメリカ)が、なんと開催コースのメンバーで、このフォートワースが地元。いくらスピースが人気選手とはいえ、正真正銘の地元選手であるパーマーに送られる応援も、それに負けないくらい大きかった。

 しかも、パーマーはフォートワースの英雄的な存在。彼に勝ってほしいと願う熱烈なファンからは、スピースへの配慮に欠けた声援もあった。いや、むしろ、そうした野次のほうが多かったかもしれない。

「へいスピース、マスターズを覚えているか!」
「がんばれ、パーマー! スピースはまたマスターズのときのように崩れるさ」

 そんな言葉が、最終組に投げかけられた。

 マスターズで起こったこと――それはもちろん、首位を走っていたスピースが、最終日の12番パー3でクリークに2度入れて「7」を叩いたことである。そこでトップの座から転落。残りのホールで粘りを見せたが、勝利の女神が微笑むことはなかった。

 あれから1カ月以上が過ぎて、「もう終わったことだ」とスピースは懸命に気持ちを切り替えてきた。目の前の試合に集中し、精一杯戦ってきた。しかし今大会でも、不安に苛(さいな)まれた。最終日の朝には「いつもよりずっと緊張した」という。ゆえに、「野次を聞くのは、決して面白くはなかった」とスピースは漏らす。

 だが逆に、それが発奮材料になった。苦しい戦いの中、後半の10番から3連続バーディー。上がり3ホールもバーディーを奪って、2位に3打差をつけて快勝した。スピースが笑顔で語る。

「僕に向けた(野次の)言葉が何度も聞こえた。でも、あれですごく闘志が沸いてきた。それが、10番からの3連続バーディーにつながったんだ」

 さて、スピースはこの優勝で"マスターズの悪夢"から完全に立ち直ることができたのだろうか。

 ゴルフファンが完全に忘れてしまうまでには、相当な時間がかかるだろう。その時間がどれぐらいかかるかは見当もつかない。ともあれ、とにかくスピースは、大きな一歩を前に踏み出した。

 現在開催されているザ・メモリアルトーナメント(6月2日〜5日)。会場のミュアフィールドビレッジGCがあるオハイオ州コロンバスは、世界ランク1位ジェイソン・デイの妻の地元。その分、デイの試合にかける思いは強いが、ここにはマキロイ、スピースも出場し、好調"ビッグ3"がそろい踏みである。

 今季メジャー第2戦、全米オープンを2週間後に控え、その前哨戦とも言える今大会で"ビッグ3"がどんな戦いを見せてくれるのか、大いに楽しみだ。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN