昨年日本で初開催され、2日間でのべ12万人を動員したレッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップが、6月4、5日に千葉・幕張海浜公園で再び開催される。

 2016年シーズンのレッドブルエアレースは、すでに全8戦のうち2戦が終了。昨季の年間総合優勝を果たしたポール・ボノム(イギリス)が電撃的に引退し、"ポスト・ボノム"を巡る争いが注目されるなか、好スタートを切ったのは、マティアス・ドルダラー(ドイツ)である。

 昨季年間総合5位のドルダラーは、今季開幕戦(UAE・アブダビ)で2位、第2戦(オーストリア・シュピールベルグ)では自身初となる優勝を果たすなど絶好調。新たにウイングレットを装着するなど、シーズンオフの機体改良にも成功し、他を一歩リードする存在となっている。

 とはいえ、"出入りの激しいフライト"が、よくも悪くもドルダラーの魅力である。一発がある一方で、凡ミスも多い。現在、年間総合ポイントで首位に立っているが、このまま独走を続けるとは考えにくい。

 しかも今季は、第2戦終了時点で、すでに全14パイロット中13人がポイントを獲得するという混戦状態。1戦ごとに大きく順位が入れ替わっている。千葉で行なわれる第3戦も、誰が表彰台に立つのかを予想するのは難しい。

 そんな状況で行なわれる今季第3戦、日本のエアレースファンが最も注目するのは、やはり室屋義秀だろう。地元開催のレースで、室屋の初優勝を見たいと期待する声は多いはずだ。

 だが、今季の室屋は開幕戦から苦戦が続いている。

 過去2戦の室屋は、いずれもオーバーGによるDNF(Did Not Finish)となり、開幕戦はラウンド・オブ・8で、第2戦はラウンド・オブ・14で敗退している。現在の年間総合順位は11位。初優勝どころか、一度もファイナル4にすら進めていないというのが現状だ。単純に数字だけを見れば、第3戦での突然の好転は考えにくい。

 しかし、苦戦の理由ははっきりしている。今季新たなものに取り換えられた、Gメーターの不具合である(詳しくは第1戦、第2戦のレポートを参照)。

 室屋は過去2戦、Gの問題に悩まされ、十分に力を発揮できないままにレースを終えることになった。裏を返せば、この問題さえ解消されれば、昨季後半戦で見られたような、"強い室屋"がすぐにでも帰ってくるに違いない。

 第2戦を終え、室屋がチームスタッフとともにGメーターを分析したところによれば、「(今年のGメーターは)昨年よりもずっと高い数値を指す。恐らく内部のプログラムが少し変わっているのだろう」。室屋は必ずしもその数値が正しいと納得したわけではなかったが、新しいGメーターに合わせてトレーニングを重ねてきた。

 思えば、昨年の千葉でのレースでも、室屋はオーバーGを犯している。またしても同じ轍を踏むのではないかという不安も当然よぎるが、室屋は「昨年はまだ新しい機体(現在のエッジ540 V3)を導入したばかりで、その性能が手の内に入っていなかった。だが、今は当時の状況とはまったく違う」と言い、こう続ける。

「Gメーターの数値に合わせてトレーニングのプログラムを作り、福島で十分に調整してきた。そこは大丈夫だと思います」

 千葉でのレースも2回目を迎え、コースレイアウトも昨年のものとは変わり、よりテクニックが要求されるものになった。室屋も「(昨年とは)かなり違う」と、その変化を語る。

 それでも室屋は「(昨年から引き続き)高速型のコースであるのは間違いない。比較的ストレートなコースというか、トリッキーなところはないので、機体が速ければ問題ないと思う」と自信をうかがわせ、「観客席から見て、左右にバーティカルターン(機体を垂直に倒すターン)があり、ハイスピードのターンになる。そこをどう回るかが勝負になってくるだろう」と勝負どころを見定める。

 今季開幕からの2戦、思わぬ形でつまずき、ポイントを稼げなかった室屋。今季の目標にかかげる「年間総合3位以上」を果たすために、もう取りこぼしは許されない。ここが仕切り直しのレースになる。

 同時に、地元開催のレースは、やはり室屋にとって特別なもの。ここで好成績を残せれば、単なる1レースの結果とは違う、大きな弾みを得られるはずだ。

「(レース前の取材対応などで)忙しいは忙しいが、昨年よりは(取材の数や時期を)かなりコントロールできていたので、十分な準備ができた。昨年はバタバタのなか、とりあえず千葉に来たという感じだったが、今年はおもしろいレースができると思う」

 室屋はそう言って笑顔を見せ、「チームの体制は整っているので、そんなに心配しなくても、淡々とやっていけば、ファイナル4までは残れるんじゃないかな」と、さらりと付け加えた。

 昨年の千葉でのレースは、季節外れの台風に見舞われるなど、常に天候不安に悩まされたが、今年は(現在の天気予報によれば)好天に恵まれそう。室屋がV字回復を遂げるにふさわしい舞台装置は、準備万端に整いそうだ。

「(レースの日は)ちょっと風が出そうだけどね」

 室屋がこぼしたそんな言葉も、今はむしろ自信の裏返しであるように思えてくる。勝負のときは、間もなくである。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki