米有名ブランドが「愛国心」を売り出した本当の訳とは

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ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は先ごろ、主力商品のビール「バドワイザー」の名称を「アメリカ」に変更した。また、「コカ・コーラ」の缶は、「Im proud to be an American(米国人であることは誇りだ)」と書きこんだデザインに変更される。このほか、スキットルズ(Skittles)とM&MSはそれぞれ、赤と白、青に色付けしたキャンディとチョコレートを発売する。

こうした各ブランドによる突然の「愛国心」の表明は、一体何を意味しているのだろう。各社はいずれも、センセーショナルな話題を作り、メディアを通じて注目を集めたいと考えるような企業ではない。業界最大手であり、国内市場の中心的な存在なのだ。

ひねくれていると思われるだろうが、私はあえてこう考えてみた──「”悪者は米国”といわれるこの時代に、これら各社が危険を冒してまで”米国”を支援するのはなぜだろうか?」

大統領選の候補に残っている顔ぶれには、がっかりするばかりだ。彼らをみていても、愛国心などわいてこない。だが、今年は大統領選があるだけでなく、オリンピックが開催される年でもある。つまり、これらのブランドは賢いやり方で、自己嫌悪に陥っているわれわれの心をくすぐっているのだ。米国民の愛国心を呼び起こすという、政治家たちが恐らく自己陶酔しすぎて、あるいは怖がりすぎてできないことをやってのけているのだ。

「私は、私に、私の」を叫ぶ候補者たち

今回の大統領選では、政治方針やさまざまな問題について話されることがほとんどない。すべてが、候補者個人に関する議論に矮小化されてしまっている。

ドナルド・トランプのスローガン、「米国を再び偉大な国にする」が暗に示すのは、現在のわが国は偉大ではないということだ。そして、このフレーズには言外に、「私が」という一言が付いている。トランプは国民に行動を呼びかけているのではない。これは、ドナルド・トランプという”手段”によって実現が期待できるとされる「結果」なのだ。

ヒラリー・クリントンも大差はない。彼女のホームページには「米国民が収入を増やす方法」のタイトルが掲げられている。トランプと同様に、国民に行動を呼びかけている訳ではない。そこにはヒラリー・クリントンという一つの”方法”によって、期待し得る結果が記されているだけだ。

国民の意欲をかき立てるという点では、バーニー・サンダースが一番ましかもしれない。だが、サンダースは国民に対し、自ら変わることを訴えてはいない。彼が私たちを変化させるための許可を求めている。国民の半数は企業で働いているにもかかわらず、サンダースは反実業界、反富裕層であり、反”さまざまなこと”だ。そして、こうした敵を自分が倒すと主張している。トランプやクリントンとの違いは、自分の願望を人々に押し付けている点だ。

候補者たちは国を分断し、それぞれが自分というブランドを構築している。国民は自らの役割を見いだせないまま、取り残されている。さらに悪いことに、私たちは自分の国がどれほどひどい状態にあるかを思い知らされ続けている。もちろん、候補たちの言うことすべてを信じている人はいない。だが、何か月にもわたって自己嫌悪に陥るようなことばかりを聞かされてきた私たちは、愛国心にも自信を持てなくなっている。

大統領候補からこうした否定的な考えを聞かされている私たちに、国家のプライドを救出するための政治的な選択肢が与えられていないのは非常に残念なことだ。

「国民の心」をつかんだ各ブランド

こうしたなかで、私たちが米国人であることに自信を持つためには、ブランドに頼るしかなくなっている。

バドワイザーやコカ・コーラなどのブランドは、候補者たちよりもずっと賢い。彼らは国民の態度や痛みを感じる問題について、適切な対応がどのようなものかを調べることができる。そして大統領選を前にしたこの時点で、各候補の政治戦略の中にぽっかりと開いた穴があることを突き止めた。それが、国民を「鼓舞し、関与させる」ということだ。

同様のキャンペーンを展開するブランドは、今後もきっと出てくるだろう。米国には、後押ししてくれるものが必要だ。私たちが米国人であることについてより良い感情を持つことができれば、国にとって大きな利益となるはずだ。