子どもの左利き、矯正すべき?

写真拡大


執筆:南部洋子(助産師、看護師、タッチケア公認講師)


さまざまな育児の問題にアドバイスをしてきた助産師の経験から、お母さんたちが抱えるリアルな悩みと、それに対する助言を紹介しています。
今回は、「左利きの子どもを矯正したい」という相談です。
はたして、左利きは矯正したほうがいいのでしょうか?

右利きが前提の日本の伝統

右利きが当たり前とされる日本の文化。
現在では左利きを受け入れる風潮も出てきていますが、まだまだ「左利きはおかしい」と考える人も多く、子どもの利き腕を矯正しようとする親も珍しくありません。

子どもは、1歳を過ぎる頃には、何でも自分でやろうとして手を出すようになります。その際、左手ばかりを伸ばしていたり、すぐ左手に持ち替えたりする様子を見て、「この子は左利きかしら」と、心配するお母さんがいます。

実際、箸やハサミ、鉛筆、漢字の書き方などは右利きであることが前提に設計されており、左利きの人には不便です。また、昔は現在と違って左利き用の用具はなかったため、無理をしてでも右利きに矯正していた時代があったと考えられます。

いつからどうして、利き手が決まるの?

2歳頃までは、子どもは左右両方の手を使います。そして、3〜4歳くらいになると、右利きか左利きかがはっきりしてきます。
利き手がどのようにして決まるのかは、遺伝的に決まっている、胎児の初期段階で決まるなど諸説ありますが、まだ正確には解明されていません。
ただし、利き手と脳の働きには深い関係があると考えられています。

利き手矯正の悪影響

子どもの利き手を強制しようと、親が子どもに無理に持ち替えさせたり、左手を使うと叱ったりすると、子どもにとってはかなりのストレスになります。
当然ながら、子どもは右利き・左利きの意味を理解できないので、遊んでいることを叱られているように解釈してしまう可能性もあり、意欲を失っていく原因にもなり得ます。

また、親からの矯正が厳しいと、親の前では右利き、いないところでは左利きというような使い分けをして、それが良心の呵責を生んでしまうことにもなりかねません。

精神的な問題だけでなく、ひどい場合にはストレスからてんかん発作や吃音、チック、夜尿症などが出ることもあり、利き手を矯正することは子どもにとって良くないことがわかってきました。

以上のような子どもへの弊害を考慮して、現在では、無理な矯正はしないという考え方に変わってきました。

個性としての左利き

左利きの人は右脳が発達するため、芸術的センスなどを発揮する人が多いと言われています。
モーツァルトやニュートンなどの歴史的偉人や、近現代ではアインシュタインや坂本龍一さんなどが左利きとして知られています。また、スポーツでは左利きであること自体が有利に働くという事実もあります。

3歳くらいまでは、遊びの中で右手を使うシーンを増やして、右手を使う習慣をつけることは構いません。ただし、無理にやらせるのは禁物。結果的に子どもが左利きになるならば、個性として受け入れることが大切です。

<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師 株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー