どうしても負けられない試合だった。「ニッポン!ニッポン!」。最後の第4セットはジュースの末の25−27で試合終了。満員1万観衆の大きな声援がため息に変わる。これでリオデジャネイロ五輪出場は事実上、ほぼ絶望的となった。全日本の20歳エースの石川祐希は「もう悔しいです」と声を絞り出した。

「競ったところというのは、技術面より気持ちの問題だと思う。そこが相手に劣っていたから、こういう結果になったんでしょう」

 リオ五輪の出場権を争うバレーボール男子の世界最終予選兼アジア予選(東京体育館)。1日、全日本はアジア大会覇者のイランにも1−3で敗れ、1勝3敗となった。2大会ぶりの五輪出場を果たすためには、最低でも残りの3試合すべてに勝たないといけない。対戦相手を考えると、極めて厳しい状況である。

 ひと言でいえば、粘り負けである。海外列強との体格差は男子バレーボールにおいては自明だが、その差はブロック力に顕著に表れる。この日のブロック得点はイランの16点に対し、日本はわずか4点だった。今大会の4試合を合計すると、相手チームの49点に対し、日本は20点にとどまっている。

 時代やシステムは変われど、日本バレーの基本は変わらない。高さの差をカバーするのは、サーブとサーブレシーブ、「つなぎ」である。が、こちらのサーブは相手レシーブに拾われて強打を食らい、逆に勝負どころではサーブレシーブを崩されてブロックに止められてしまった。

 特に石川の後衛のとき、パイプ(中央からのバックアタック)を封じたいこともあってだろう、石川のサーブレシーブを徹底して狙われた。ターニングポイントは、セットタイとしたあとの第3セットの中盤だった。10−8としながら、サーブレシーブを乱されて、ネットタッチ、スパイクミスなどで10−11と逆転を許し、さらに米山裕太のスパイクが連続でブロックに止められてしまった。連続5失点。10−13とされ、流れが変わった。

 31歳の米山の述懐。

「ぼくたちも石川選手をボールがなるべく(サーブの)飛んでこない場所に外すじゃないですけど、正面に来たときだけ、彼(石川)が取るという作戦を敷いていたんですけど、そこに相手がしっかりサーブを打ってきて、相手が一枚上手だったなと思います。相手にうまくやられてしまったなという感じです」

 それでも、石川は頑張っていた。二十歳は「どのチームも(自分を)狙ってくる」と淡々と振り返る。

「ちゃんと(レシーブが)返っているところもあれば、返らないところもある。もっと安定させたい」

 いずれにしろ、20歳のエースに多くを背負わせるのは酷である。ミドルブロッカー陣がほとんど機能しないなかで、石川はスパイクで18得点と気を吐いた。持ち前のガッツポーズとスマイルでチームを盛り上げた。

 主将の清水邦広はこう、言った。この日はチーム最多の23得点をマーク。

「若い選手たちは一生懸命やっているのに、結果が出ないのは残念です。勝ち切れないのは、自分の力不足です。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 それぞれが覚悟を持って必死にプレーはしているのだが、勝負どころで押し切れない。どうしても勝ち切れない。高さの問題だけでなく、レシーブやパスの精度、ブロックとレシーブの連携、セッターとスパイクの呼吸......。すべてにおいて、ちょっとずつ、ずれているのかもしれない。

 試合後、南部正司監督はロッカー室に戻ると、すぐにミーティングを開いた。「最後まで絶対に(リオ五輪出場を)あきらめずに戦おう」と檄を飛ばしたそうだ。

「ここで一回、言っておかないといけないと思ったんです。意思統一のためです。この敗戦でリオの切符の可能性は下がったんですけど、最後の最後までベストを尽くして戦い続け、(リオ五輪の)可能性を引き出そうと。もう選手たちはあきらめない気持ちでひとつになっていました」

 あと3試合。強豪との戦いが続くけれど、指揮官も選手たちも奮起を誓い、「奇跡」を信じている。

松瀬学●文 text by Matsuse Manabu