元ホストのジゴロが結婚した理由
【本当の愛をめぐる冒険/第3回 元ホスト、経営者・手塚マキVol.4】

 パートナーと10年付き合っているゲイライターの渋谷アシルが、「本当の愛とはいったいなにか」を追求する冒険に出発。恋愛や男女関係のスペシャリストたちに話を聞いてまわります。

 第3回のスペシャリストは、元ホストでありながら、2014年にアーティスト集団「Chim↑Pom」のエリイさんと結婚し、新宿をデモ行進のように練り歩く斬新な“結婚式”も話題になった、ホストクラブ経営者の手塚マキさんです。

◆ジゴロが結婚した理由

 元ホストとして、水商売に従事する男にとっての愛について語ってくれた手塚さん。最終回となる今回は、彼自身の愛について深掘りします。夜の世界で生きる人間が結婚を決めたきっかけは何だったのでしょう?

「彼女が出ていた番組に、うちのホストの子たちが出演したことがあって、それがきっかけで彼女と会ったんです。そして共通の知人を通して紹介してもらって、初めて会った次の日くらいから、もうずっと一緒にいたんですよ。

 ただ、結婚うんぬんはあまり考えてなかったんです。正直、それってただの制度じゃないですか。だから、あまり必要性を感じていなかったというか。でも、ある時、どうせこのまま一緒にいるんだし、だったら逆に外に対してわかりやすい結婚という制度を利用させてもらうか、と思って」

 結婚というものをそこまで重要視していなかった手塚さん。そもそも若い頃は、結婚なんて絶対にしないと思っていたのだとか。

「やっぱりホストとして、ずっとジゴロとして生きていくのが使命だと思ってました。大勢の女性に成り上がらせていただいた立場で、誰かひとりと幸せになります、なんておこがましいというか。だから結婚したことは昔の自分から見れば想定外でした。

 でも、結婚は自然な流れだったと思います。結婚する・しないで道が変わるわけではなくて、彼女と一緒に生きていく延長線上に結婚があっただけ、っていう。それに、ぼくみたいな奴は結婚して良かったとも思いますよ。酔っ払ってフラフラどこかに行くこともなくなったし、人に誘われることも減ったし、仕事に集中できるようになりましたね」

 結婚というものに重々しい意味づけをせず、人生の延長線上にある選択肢のひとつだったという手塚さん。そこで大きく何かが変わったわけではないものの、エリイさんと生涯を誓い合ったことで、自分のやるべきことに集中できる環境が整ったそう。

◆元ホストが見つけた、“本当の愛”

 では、そんな手塚さんが思う、“本当の愛”って……?

「“共有する”ってことだと思います。相手との時間や友達や家族、それらを共有すること。それって、相手のすべてを自分事として受け止めるってことだと思うんですよ。ホストの接客でも自分事としてお客様と接することが大事だって話しましたけど、それと一緒ですよね。そうすることで責任感も芽生えますし。だから、それを常日頃から行っているホストは、本当の愛ってものを知っているんだと思いますよ」

 愛を売る世界に生きながら愛を見つけた手塚さん。彼が語る愛の本質は、意外にもとても当たり前で、シンプルなものでした。でも、忙しい日々の中、大事な人と時間や考えを共有することって、当たり前だからこそおろそかになりがちですよね。当たり前のことの積み重ねで関係が続いていくんだな、と改めて考えさせられました。

☆今週の格言:本当の愛とは、相手のすべてを自分事として受け止めること

【手塚マキ プロフィール】
元ホストで歌舞伎町のホストクラブのグループ「Smappa!Group」会長。
歌舞伎町の街角を24時間生放送するスタジオ「TOCACOCAN」の運営も手掛ける。

<TEXT/渋谷アシル>
【渋谷アシル プロフィール】
昼間は会社員の仮面をかぶった、謎のゲイライター。これまでお付き合いしてきたオトコをネタに原稿を執筆する、陰険な性格がチャームポイント。オトコに振り回される世の女性のために、ひとり勝手にPCに向かう毎日。