■NBAプレーオフ2016@ファイナル展望

 2年連続同じカードとなった、クリーブランド・キャバリアーズ対ゴールデンステート・ウォリアーズのNBAファイナル。ともに東西カンファレンスの第1シードが勝ち上がった格好だが、物語の主人公をどちらに据えるかで、その見方は様変わりする――。

 キャブスを主人公とするなら、それは、昨年の「仮説」を証明するための戦いだ。

 昨年のプレーオフは、ケビン・ラブ(PF)がファーストラウンドで、さらにカイリー・アービング(PG)がファイナル第1戦で離脱。「ビッグ3」のうちの2選手を欠く状態でレブロン・ジェームズ(SF)が孤軍奮闘するも、2勝4敗で力尽きた――。クリーブランドのファンは「たられば」を承知で、「ラブとアービングが健在ならば勝っていた」と、奥歯をかみ締めたはずだ。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 そして今年、ウェスタンからはまたもウォリアーズが勝ち上がってきた。まさに、その仮説を立証する絶好のチャンスが訪れたというわけだ。

 キャブスは、ファーストラウンド(対デトロイト・ピストンズ)とカンファレンス・セミファイナル(対アトランタ・ホークス)をともにスウィープ(4勝0敗)で楽々と破り、カンファレンス・ファイナルこそアウェーで2敗を喫するも、慌てることなく4勝2敗でトロント・ラプターズを退けた。まるで、スキップでもするかのような足取りでファイナルの舞台に駒を進めている。

 レブロンに限れば、マイアミ・ヒート時代から数えて6年連続となるイースタン・カンファレンス制覇。2014年の夏、ヒートから古巣キャブスへ復帰を決める際の手記には、「故郷――オハイオ州北東部に優勝をもたらすことが何よりも大切」と残した。悲願達成に、レブロンは自信をにじませる。

「昨シーズンとは気分がまるで違う。チームが完璧な状態でファイナルに臨める。それに、このチームはまだまだよくなる」

 一方、ウォリアーズの物語を見れば、舗装されて平坦な道に見えた連覇への道が、実はいくつも地雷が埋められた悪路だった。まさに、ドラマチックな七難八苦の末に辿り着いたファイナルの舞台と言えるだろう。

 振り返れば2013−2014シーズン、ウォリアーズはウェスタン第6シードでポストシーズンに進出し、プレーオフはファーストラウンドで敗退するレベルのチームだった。そんなチームが昨シーズン、突如覚醒――。ステファン・カリー(PG)とクレイ・トンプソン(SG)の"スプラッシュブラザーズ"が大車輪の働きを見せ、一気に頂点まで登り詰めて40年ぶりの優勝を勝ち取った。

 迎えた今シーズンは、レギュラーシーズン73勝9敗とさらにパワーアップした姿を見せつけ、ウォリアーズファンならずともリーグ連覇は微塵も疑わなかったはず。しかしプレーオフに突入すると、ファーストラウンド(対ヒューストン・ロケッツ)第4戦でエースのカリーがひざを負傷。チーム内に嫌な空気がただよい始める。

 その後、カンファレンス・セミファイナル(対ポートランド・トレイルブレイザーズ)の第4戦でカリーは復帰するも、格下のブレイザーズ相手に延長の末の辛勝。続く第5戦も125−121という接戦で逃げ切り、カンファレンス・ファイナルに進出した。もはや、レギュラーシーズンで見せた爆発力と勢いは、すっかり影を潜めていた。

 そして、さらなる崖っぷちに立たされたのが、オクラホマ・サンダーとのカンファレンス・ファイナルだ。シリーズ第1戦はホームの試合にもかかわらず、いきなり黒星スタート。第2戦こそ盛り返して勝利するも、第3戦と第4戦は今シーズン一度も経験しなかった連敗を喫した。しかも第3戦は28点差、第4戦が24点差という大敗だった。

 NBAの長い歴史で、カンファレンス・ファイナル1勝3敗という状況に追い込まれたことがあるチームは、計232チーム。そこから3連勝して逆転勝利を果たしたのは、わずか9チームしかない。つまり、1勝3敗となったウォリアーズが勝ち抜く確率は、単純計算で3.9%しかなかったことになる。

 それでもウォリアーズは王者の意地を見せ、第5戦を120−111で勝ち切った。しかし第6戦、またも崖っぷちに立たされることになる。第4クォーター残り5分48秒の時点で、ウォリアーズはサンダーに対して7点のリードを許していた。そんな危機的状況を救ったのは、エースのカリーではなく、相棒のトンプソンだった。

 第4クォーターだけで5本のスリーポイントシュートを決め、試合をひっくり返す。トンプソンはこの試合、トータル11本のスリーポイントを沈め、プレーオフにおける1試合のスリーポイント成功数歴代最多記録を樹立。計41得点を荒稼ぎする活躍で、シリーズを3勝3敗のタイに引き戻した。

 泣いても笑っても勝者が決まる第7戦――。ウォリアーズは前半6点リードされて試合を折り返す。逆転劇の立役者は、今度は2年連続でレギュラーシーズンMVPを獲得しているカリーだった。カリーは7本のスリーポイントを含むゲームハイの36得点を奪取。千両役者が完全復調したウォリアーズは奇跡の3連勝を飾り、2年連続でファイナルの舞台に辿り着いた。
 
 こうして、いよいよ幕を開けるファイナル。レギュラーシーズン73勝の底力と、いよいよ復調したカリーを擁するウォリアーズが優勢か。しかし、昨年と違って故障者がいないキャブスのチーム力が上回る可能性も十分にあり、戦力差を比較するのは困難を極める。

 勝敗を分けるキーマンになり得るのは、キャブスならばラブだろう。キャブスがプレーオフで2敗した試合、ラブはそれぞれ3得点、10得点に終わっている。レブロンやアービング以上に、ラブのシュートタッチがシリーズを左右する可能性は高い。

 一方のウォリアーズは、スプラッシュブラザーズや昨年ファイナルMVPのアンドレ・イグダーラ(SF)はもちろん要チェックだが、脇役アンダーソン・バレジャオ(PF)のプレーにも注目したい。バレジャオは今年2月まで12年間キャブスに在籍し、トレード期限最終日に放出されてウォリアーズに拾われた経緯を持つ。キャブスとレブロンを知り尽くすバレジャオの存在が、シリーズの行方に影響を及ぼしても不思議ではない。

 ウォリアーズ対サンダーのカンファレンス・ファイナル第7戦は、アメリカ国内の平均視聴者数が1590万人にのぼり、米ネットワークTNT史上、NBA中継で最多の視聴者数を記録する盛り上がりを見せた。空前絶後の熱狂に包まれる今シーズンのNBAファイナル――。キャブス対ウォリアーズ、はたして先に4つの白星を積み上げるのは、どっちだ?

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro