テレビ(ビデオ)ゲームは子供の発達に悪いという認識は根強い。しかし、米国ではADHD(注意欠陥多動性障害)の症状を改善する「医療用」ゲームの承認を目指す臨床試験が始まっている。

 今年2月、注意障害の専門誌にADHDの注意力を高めるゲーム「ATENTIVmynd」のプレ臨床試験に関するレビューが掲載された。

 試験では、8〜12歳のADHD小児40人を2群に分け、一群はゲームを、もう一群には通常のケアを提供。ゲーム群は8週の間、週に1時間もしくは20分×3回ゲームで遊び、両群とも3カ月間の経過観察を行った。

 3カ月後、医療者と両親がADHDの症状評価スコアを使って日常生活を採点した結果、ゲーム群の医療者の評価では36%、両親の評価では31%改善していた。具体的には、衝動的な行動が有意に改善し、宿題や算数のテスト、国語の文法の間違いが減ったという。

 このゲームの肝は「目標に向けて注意や行動を制御する機能:実行機能」の訓練ができること。いわゆる「ラン&ジャンプ系ゲーム」の一種で、用意された山あり谷ありのコースをキャラクターが走る。ゲーム自体はシンプルだが、要所でアイテムを獲得し、不要なものをパスする注意力と認知的制御が要求される。タブレット用アプリなので、日常生活に取り入れやすい点もポイント。

 もう一つの「Project:EVO」というゲームは、この5月から承認を目指す最後の臨床試験を開始。8〜12歳のADHD小児が参加する予定だ。こちらもマルチタスクを要求されるラン&ジャンプ系ゲームで、処理の優先順位を付け、課題を切り替える能力の訓練が可能だという。

 ADHDの行動改善は、行動療法や薬物治療が主流だったが、最近は「実行機能」の改善を目指す認知トレーニングが注目されている。二つのゲームもその一つ。

 ゲームで獲得した「実行機能」を生活にどう落とし込むか、という課題はあるが、近い将来「ゲーム療法」がADHD支援の必須アイテムになるかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)