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◆企業研修講師・原田まりるの「エニアグラムで考える対人関係」その3

 久しく会う知人や、取引先の方で会うたびに必ず相手が喜びそうな手土産を持参してくる“気遣いのプロ”に出くわしたことがあるでしょうか?

 人材育成の研修先企業にも、このような“気遣いのプロ”と呼ぶにふさわしい方がいて、打ち合わせのたびに、私が好んで飲みそうなドリンクの種類を把握し全種類を揃えて出してくれます。

 通常であるならば、打ち合わせの際のドリンクはコーヒーかお茶どちらがいいか?という二択が多いと思いますが、この方は徹底していてコーヒーやお茶のみならず、美容ドリンクや野菜ジュースなど10種類ほどのドリンクを常に常備するという徹底した気遣いぶり。この方いわく、会社のマニュアルでそうしているのではなく、常に相手が喜ぶ顔を想定して出すものを選んでいるのだとか。彼によると相手が「ありがとう」といって喜んでくれる姿をみるのがなによりも嬉しいそうです。

 このような“気遣いのプロ”の方にエニアグラムの診断をしてもらうと、十中八九「タイプ2・博愛主義者」という結果が出ます。

「どうしてわかるの?」というような相手の微妙な機微に気づき、先回りして気持ちを汲みとる。いつも朗らかな表情で相手を励まし、相手のモチベーションを高める。周囲を笑顔にするため、縁の下の力持ちとして目立たないサポートも喜んで引き受けてくれる。そんな博愛主義者タイプの彼らは、人から「ありがとう。◯◯さんのおかげだよ」と言われることを最大の喜びと捉えているのです。

 また、この「タイプ2・博愛主義者」は言い換えると世話焼き女房タイプでもあります。いつもドリンクを用意してくれる方も、「みんなに笑顔でいてもらいたいから、一人でも調子が悪そうな人がいると放っておけない」そうです。ただ、面倒見がいいこの方にも悩みがあるそうです。

◆「気遣いのプロ」の悩み事とは?

「気遣いのプロ」が悩んでいる点とはどういうことなのでしょうか? 聞いてみると、「調子が悪そうな人がいると放っておけないというポリシーがついつい行きすぎてしまうこともある」んだそうです。

 つまり、業務を超えたプライベートな問題にもつい口を挟んでしまう、過干渉になってしまうんだそうです。具体的にいえば、恋愛や夫婦問題・将来への不安を抱える部下に対し、会社の上司という立場からではなく一個人として相談に乗りすぎてしまうので、上司として部下を説得しないといけない場面でも、立場をこえたアドバイスをしてしまい会社にとっての利害関係がおざなりになってしまう場合があるんだとか。また、親身に相談に乗りすぎることによって部下を甘やかせすぎ、自分に依存させてしまうこともあるんだそうです。

 この方は、自分が博愛主義者タイプであるという自覚があったので、部下に対して深入りしすぎないようにと意識してらっしゃいましたが、通常であれば「親切心」という大義があると人は止まらないことも少なくありません。また干渉を受けた方も相手に悪気がないとわかっているので、なんとなく迷惑に思っても無碍に断りにくいなんてこともあります。

 ではこういう「博愛主義者タイプ」なのに無自覚にグイグイ踏み込んでくる上司がいたら、どうやって立ち回ればいいでしょうか?

◆お節介上司との対処法とは?

 親切心なのはわかるけど、迷惑なまでにプライベートにまで干渉してくるお節介上司がいた場合、どうすればいいでしょうか?

 それは、「相手に感謝を伝えつつ、自分から線引きをする」のが最善の対処法になります。

 このテの「タイプ2・博愛主義者」は、自分の親切心が「当然のもの」「ありがた迷惑」として扱われることを非常に嫌う傾向があります。そのため、親切にされたらまずは「ありがとうございます」と感謝を必ず伝える必要があります。その上で、「お気持ちは嬉しいのですが◯◯さんにいつも頼っていたら、自分が成長できなくなりそう」と自分の向上心を前に出し、相手との距離を線引きするのが効果的です。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し。いきすぎた親切心は時に人間関係に亀裂を生んでしまうこともあるようなので、何事もほどほどに。

<文/原田まりる Twitter ID:@HaraDA_MariRU>
85年生まれ。京都市出身。作家・哲学書ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。元レースクイーン。男装ユニット「風男塾」の元メンバー。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。ホームページ(https://haradamariru.amebaownd.com/)