車いすテニスの国別対抗戦「BNPパリバワールドチームカップ車いすテニス世界国別選手権」が、日本で初めて開催された。会場は、2020年東京パラリンピックの車いすテニス会場にもなる有明コロシアム・有明テニスの森公園。5月23日の開幕初日の入場者は622人だったが、次第に増加。最終日は3769人が訪れ、国の期待を背負う選手たちの熱い戦いに大きな声援を送った。日本は男子が準優勝、女子とクアード(上肢にも障がいがある男女混合のクラス)は3位、初出場のジュニアは7位だった。

 この大会では国枝慎吾(ユニクロ)の動向に注目が集まった。4月上旬に内視鏡による右ひじのクリーニング出術を受けていた国枝。17日からのジャパンオープンで復帰する可能性もあったが、結局出場を見送ったため、1月の全豪オープン以降、このワールドチームカップが実に4カ月ぶりの実戦であり、復帰戦となったからだ。

 男子ワールドグループ1部は12カ国で構成され、日本はスウェーデン、ベルギーと同じB組に。決勝トーナメントに進出するうえで大きなカギとなるのが、初戦のスウェーデン戦だった。第1試合は眞田卓(フリー)が勝利してまず1勝とし、国枝は第2シングルスで世界ランク7位のオルソンと対戦した。これまでステファン・オルソンには22戦全勝の国枝だが、第1セットは3度のブレークを許すなど硬さが見られる場面も。それでも徐々に試合勘を取り戻して7−5で先取すると、第2セットも6−3で取り、勝利を手にした。

 試合後は、「ほっとした」と話した国枝だが、ウィナーを繰り出したかと思えばアンフォーストエラーを犯すなど調子の波が大きく、「30点くらい」と自己評価した。

 だが、ここからが"復活ロード"の幕開けだった。第2戦のベルギー戦では、世界ランク2位のヨアキム・ジェラードを相手にストレート勝利。初日よりエラーの数も減り、チェアワークも改善したが、「オフェンスの精度が足りない。正直なところ、まだ自分を疑っている」(国枝)。

 準決勝では前回王者のイギリスと対戦。世界ランク13位のアルフィー・ヒューイットとの試合は、フルセットにもつれ込む展開に。伸び盛りの18歳を相手に長引くと不利かと思われたが、緩急をつけたショットを繰り出し、白星を手にした。これまでは少なかった、自分を鼓舞する場面が多くみられたのは変化のひとつだったといえる。

 そして、決勝の相手は優勝候補のフランス。第1試合を落とし、後がない日本は、世界ランク1位のステファン・ウデと対戦する国枝に運命を託した。国枝は第1セットでいきなりウデのサービスゲームをブレーク。その後は一進一退の攻防が続き、一時はゲームカウント4−3とリードするが、ウデの攻撃的なテニスにショットのコントロールを乱され4−6で落としてしまう。第2セットも第6、8ゲームをブレークされ、ストレートで敗れた。

 手探りで始まった今大会。準優勝に終わったが、国枝にとっては現状を確認し、次に取り組むべき課題を明確にする機会になった。大会直前には、丸山弘道コーチとナショナルトレーニングセンターで泊まり込みの強化合宿を実施。試行錯誤の末、右ひじの負担を減らすためにパワーを重視したラケットに変更し、試合に臨んだ。イギリス戦では、姿勢が立ち気味になっていたことから、重心を前寄りに修正し、本来のプレーに近づけることができた。

「初日と比べると、ずいぶん自分らしいテニスができるようになった」と大会を振り返った国枝。また、「ウデに負けて悔しさが込み上げてきた。リオまでの3カ月間で何とかなるという手ごたえも感じた」と話し、2日から始まる全仏オープン、ウインブルドン、そしてリオでのリベンジを誓った。

 また今大会、国枝に注目が集まる一方で、観客から大声援を送られたのがクアードで、日本は銅メダルを獲得した。

 決勝トーナメント進出をかけた予選リーグの最終戦で前回優勝のアメリカと対戦。第1試合は川野将太(シーズアスリート)がフルセットで勝利し、まず先勝。続く第2シングルスは諸石光照(フリー)が世界ランク2位のデビッド・ワグナーに敗れたが、ふたりがペアを組むダブルスで新たな境地を開いた。相手はパラリンピック3連覇中のワグナー・テイラー組で、セットカウント1−1の大接戦に。スーパータイブレークに突入すると、序盤こそアメリカにリードを許したが、そこから日本が6連続ポイントで巻き返し、劇的な勝利を収めた。

 障がいに応じて、手とラケットをテープで固定することができる。ショットのスピードや試合展開はスローだが、長いラリーからじわじわと相手を追い込む頭脳的な戦略、そして強靭なメンタルがクアードの見どころだ。諸石と川野は、そのクアードならではの粘りのプレーで世界王者を追い詰め、結果を残した。ふたりは「優勝は逃したが、アメリカに勝って3位という結果はパラにつながる」と話す。

 リオでは悲願のメダル獲得に挑む日本クアード勢にも注目だ。

荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu