クリルオイル研究会代表の早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構の矢澤一良教授

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ここ数年、美容や健康に役立つといわれているココナッツオイルやアマニ油、エゴマ油など「食用油」がブームだ。アマニ油やエゴマ油は、「オメガ3系脂肪酸」を含むことで、健康効果が注目されている。なかでも最近は、オメガ3系脂肪酸を含む新しい油として「クリルオイル」に関心が集まっている。

動物プランクトンの一種

クリルオイルとは、海にすむ動物プランクトンの一種で、よく魚釣りのエサとして使われる「ナンキョクオキアミ」からとれる油。米国ではクリルオイルのサプリメントは評価が高く、販売数も伸びているという。米国Amazonで「krill oil」を検索すると、800を超える商品がヒット。日本も数社からサプリメントが販売されている。クリルオイルにはどのようなパワーがあるのか、2016年5月19日に東京ビッグサイトで開かれた「クリルオイル研究会」に出席した。

研究会の代表である、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の矢澤一良教授は、クリルオイルは、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3系脂肪酸に加え、リン脂質とアスタキサンチンを天然に含む海洋資源。過去の研究から、さまざまな機能性が報告され、認知症や関節炎の予防やがん、心臓疾患のリスク低減につながると期待されていると説明した。

北海道大学大学院水産科学研究院特任教授の郄橋是太郎氏は、「日本にいるとあまりピンとこないが、海外ではものすごい勢いで水産油脂の需要が高まっている」と述べ、北海道オホーツクの海岸に打ち上げられたオキアミ(イナミス)の脂質組成を紹介。オホーツクで取れるオキアミ由来の油も今後、重要な水産油脂源になる可能性があることを発表した。

ほとんどニオイが気にならない新商品も

クリルオイルの健康効果に着目し、長年研究を続けているアーカー・バイオマリン・アンタークティック社(本社:ノルウェー)のニルス・ホルム氏は、かつて日本人は世界の中でもEPAやDHAの摂取量が多かったが、食生活の変化により特に若年層では摂取量が減っていると指摘。そして、自社の研究からクリルオイルが体に与える影響として、疾病のない健常者において中性脂肪値が低下した例を紹介するほか、現在、「若者の学習能力がクリルオイル摂取で変わるのか」という研究を進めており、今秋にも一次的な結果が出せそうだと述べた。

同社では、これまで特有のニオイが強く、飲みにくいのが課題だったクリルオイルのサプリメントを改良し、ほとんどニオイが気にならないものを開発したとして、会場内でサンプルを展示した。

順天堂大学スポーツ健康科学部非常勤講師の中新井田 敦子氏は、軽度の関節炎がある人に対する有効性を検証する研究結果を発表。クリルオイルは、血中のEPAを高め、軽度のひざ関節痛を改善することが示唆される結果が見られたと述べた。

今後、日本ではクリルオイル由来の成分を使ったひざ関節の健康維持のための機能性表示食品の開発なども期待されているという。

(Aging Style)