「毎日欠かさず全身保湿しているのにかゆみが治まらない」「寝ている間にまた引っかき傷を作ってしまった」など、原因不明のかゆみに悩まされた経験はありませんか? かゆみの原因で最も多いのは「乾燥」ですが、保湿ケアやビタミン剤などの摂取、十分な睡眠など、あらゆる対策を講じても良くならない場合は、乾燥以外の原因を疑ってみる必要があるかもしれません。


かゆみ、さらにはハリ低下も…… 鉄分不足が引き起こすのは貧血だけじゃない

かゆみの原因は、アレルギーから肌のバリア機能の低下、入浴前後などの温度変化まで、実に多岐にわたっています。一方で内科系病態が絡んでいることもあり、その場合はいくら表面的なケアをしても改善されないので、一度病院で診てもらったほうがいいでしょう。

今回紹介したいのは、その中でも特に見逃されやすい原因のひとつでありながら、意外と多くの人を悩ませている「鉄分不足」によるかゆみについて、井上肇・聖マリアンナ医科大学 特任教授に聞いてみました。

体から鉄分が不足すると、めまいなどの貧血症状に加えて、人によっては全身掻痒症、つまりかゆみをきたす場合があります。その原因は実はよく分かっていないのですが、症状としては確かに存在します。

さらにショックなことに、鉄の不足は、肌のハリを維持するコラーゲンやエラスチンといった結合組織の代謝にも大きく影響。気づけば肌老化に拍車をかけていた……なんてことにもなりかねません。


鉄鍋で鉄分摂取、は思っていた以上に効果的!

鉄を補充するにあたり、最も効率的なのはやっぱり動物タンパクです。鉄分の宝庫として知られるレバーをはじめ、豚肉、牛肉、鶏肉など日常的に口にする肉類(特に赤身)にも、吸収率の良いヘム鉄が多く含まれています。肉が苦手な人は、イワシやカツオ、マグロ、シャケなどの魚類、あるいはアサリ、赤貝、牡蠣といった貝類から摂取するのもおすすめです。

野菜や海藻類では、昔からひじきやほうれん草の根茎に多く存在するといわれてきましたが、実はこれらの鉄分は調理器具によって大幅に変わるということが最近明らかになっています。

たとえば、ひじきは鉄鍋で調理した場合は58.2mg(100gあたり)の鉄分が含まれますが、ステンレス鍋を使うと、なんと6.2mgまで激減してしまうのだとか(「日本食品標準成分表」参照)。ここまで鉄分量が変わってくるのなら、鉄鍋もひとつ常備しておきたくなりますね。


色白な人は要注意? 隠れ貧血にもご用心

鉄欠乏性貧血は、大出血などの特別な事情がない限り、徐々に進行していきます。だからもし貧血になっていたとしても、本人の自覚症状が乏しいケースも多々あります。「何か別の病気で診察を受けたときに、眼瞼結膜の血行を見て貧血を疑い、検査したらとんでもない貧血だった、などということはよくあります」と井上先生。ちょっとした息切れや動悸、軽いめまいや立ちくらみなど、どれかひとつでも思い当たる症状があったら注意が必要です。

さらに、近年よく耳にするようになった「隠れ貧血」はもっと軽症で、むしろ「色白で羨ましい」ともいわれるくらいに、症状がわかりにくいといいます。この隠れ貧血の進行を知るには、血中のフェリチンというタンパク質の検査をすると、鉄の不足量がわかるとのこと。気になる人は、一度検査を受けてみてもいいかもしれません。

どんどん暑さが増していくこれからの季節は、夏バテなどで栄養バランスが崩れがち。内外ともに健康的な美しさをキープするために、スキンケアと同じくらい鉄分摂取も意識してみてください。



(文・合六美和)



この記事の監修
井上肇/聖マリアンナ医科大学 特任教授

星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。