写真提供:マイナビニュース

写真拡大

米国のビゲロウ・エアロスペースと米国航空宇宙局(NASA)は5月29日(日本時間)、空気で膨らむ構造をもつ宇宙ホテルの試験機「BEAM」を実際に膨らませる作業に成功した。これから約2年間にわたる、耐久性や安全性の試験が始まる。

ビゲロウ・エアロスペースは、宇宙ホテルの実現を目指す米国の民間企業。地上から打ち上げるときには折りたたんでおき、宇宙で風船のように膨らませることで、従来の宇宙ステーションよりもはるかに広い居住空間を作り出す、一風変わった技術を特長としている。

BEAMは、その技術の実証を行うために開発された試験機で、今年4月8日に「ドラゴン」補給船で打ち上げられ、同16日に国際宇宙ステーション(ISS)へ取り付けられた。打ち上げ時には直径2m、全長2mほどに折りたたまれていたが、今月28日の22時ごろから空気を入れる作業が始まり、約7時間後の翌29日5時10分ごろに直径3.2m、全長4mほどにまで膨らみ、その後内部の気圧がISSと合わせる作業が完了した。

現在は空気漏れがないかなどの確認が行われており、問題がなければ来週にも宇宙飛行士が内部に入るという。

BEAMは今後、約2年間にわたって、放射線や、宇宙ゴミ(スペース・デブリ)や小さな隕石(マイクロメテオロイド)の衝突、熱の変化など、過酷な宇宙環境に耐えられるか、その耐久性や安全性が確認されることになっている。

当初、膨らませる作業は今月26日に試みられたものの、想定通りには膨らまず一旦中止されており、2回目の挑戦での成功となった。

○2020年には宇宙ホテルが運用開始

ビゲロウ・エアロスペースは、ホテル王として知られるロバート・ビゲロウ氏によって設立された会社で、宇宙ホテルの建造を目指している。

同社が採用している空気で膨らむ宇宙ステーションの技術は、NASAが1990年代に開発していたものを受け継ぎ、改良を重ねたもので、同社は2006年と2007年に、「ジェネシス」という小型の無人試験機を打ち上げ、試験を実施。十分な耐久性を示した上に、「通常の金属製ISSモジュールよりも強い」という成果が得られたとしている。

そしてジェネシスで得た技術を活かし、今回の「BEAM」(Bigelow Expandable Activity Module)を開発。2013年にはNASAと契約し、ISSに設置し、耐久性や居住性の試験が行われることになった。

BEAMは直径3.2m、全長4mで、居住区の体積は16m3ほど。あくまで試験機であるため、内部にホテルのような内装は施されていない。電源や生命維持装置ももっておらず、他のモジュールから供給される。また、ISSとBEAMをつなぐハッチは基本的に閉じたままの状態にするとされ、宇宙飛行士がいつも入り浸れるわけではないという。

試験期間は約2年が予定されており、試験終了後はISSにから分離され、大気圏に落として処分される予定となっている。この試みが成功すれば、ビゲロウ・エアロスペースにとって宇宙ホテルを実現するために大きな実績を得ることになる。

同社はすでに今年4月11日、実際に宇宙旅行者が滞在できる大型の宇宙ステーション「B330」を、2020年に打ち上げる計画を発表している。B330は全長約17m、体積は330m3で、最大6人が滞在することができる。

また、より大型の宇宙ホテルの開発も進めている他、この空気で膨らむ宇宙ステーションの技術は、月や惑星へ向けた長期の宇宙飛行用の居住モジュールや、月・惑星上の基地にも応用できるとしている。

【参考】
・BEAM Fully Expanded and Pressurized | Space Station
 
・BEAM Expanded To Full Size | Space Station
 
・BEAM Operations Resuming | Space Station
 
・Bigelow Aerospace
 
・NASA calls off inflation of experimental station habitat - Spaceflight Now
 

(鳥嶋真也)