もっと倍速で、もっと深く、手加減なしで生きていく――津田健次郎が45歳の誕生日に考えること。
色気、余裕、ユーモア――大人の男ブームに通底するものとして、女性誌『anan』が掲げる3つのキーワードだ。津田健次郎はこれらを兼ね備えている、と本人に会って確信した。そのことを伝えると、「僕なんてまだまだ子どもです」と照れくさそうに笑うが、この色気を無自覚に振りまいているのだとしたら危険すぎるのだが…。そんな“アブナイ男”が45歳の誕生日を迎える節目にロングインタビューを敢行。年齢を重ねるたびに一段と輝きが増す理由が見えてきた。

撮影/すずき大すけ 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/仲田須加

誕生日は、過去を振り返る“人生の節目”。



――6月11日がお誕生日ということで…おめでとうございます。

ありがとうございます。

――お誕生日って、テンションが上がりますか?

全然あがらないです(笑)。どちらかと言うと、“やばいな”という気持ちのほうが強くて。自分は充実した日々を送ることができているのか、年齢に見合う年の重ね方をしているのか考えちゃいますね。僕にとって誕生日は、過去を振り返る“人生の節目”。手放しでわーいって喜んでる感じではないですね(笑)。

――年を取るのは怖いですか?

年を取ること自体は、大歓迎です。日本人は年を取ることをなぜそんなに怖がるんだろう。アンチエイジングっていう言葉も好きじゃないんです。生きていれば年は取るんだし、そこは受け入れて年相応の生き方をしようじゃないかって思うんですけどね。

――日本だと、誕生日は周りの人にお祝いしてもらう習慣が広まっていますが、海外では、周りの人へ日頃の感謝を伝える日でもあるそうですよ。

なるほど、そうですよね。

――ということで、誕生日という節目に、津田さんが感謝の気持ちを伝えたい人について話を伺いたいと思うのですが…いちばんに思い浮かぶのはどなたでしょう?

仕事で出会った人でいうと、アニメ『H2』のプロデューサーさん。24歳のときに出会ったんですけど、僕より20歳くらい上なのかなぁ。

――『H2』は、津田さんにとって初めての声優のお仕事ですよね。

そうです。この作品をキッカケに、声優のお仕事がだんだん増えていったんですよね。『H2』が終わった後も声をかけてくださったり、別のキャスティングの方を紹介してくださったりして。

――当時の津田さんはどんな若者だったんですか?

生意気でした(苦笑)。ずっと舞台を中心にやってきたから、オーディションのときも「舞台でやってきたこと以外はできません」というスタンスだったんです。「僕は僕のやってきたことを一生懸命やるだけです」みたいな。

――24歳にして確固たる意思を持っている津田さんを認めてくれたんでしょうね。

そのプロデューサーさんもちょっと変わっていて、声優や俳優のジャンル関係なく、自分が興味を持った役者と仕事をする人で。だから僕みたいな、毛色の違うお芝居も好んでくれたのかなと思いますね。




最初からうまくできるわけない。今できることを誠実に。



――当時所属されていた事務所からたまたま話があって、『H2』のオーディションを受けたそうですが、ご自身としては「声優の仕事をどんどんやっていくぞ!」という気持ちだったんですか?

いえ、ただ目の前の仕事をしっかりやろうという気持ちでした。「映像、舞台、声優の仕事の違いは?」ってよく聞かれるんですが、僕のなかではそんなに違いはないんですよね。

――声優のお仕事を始めた当初、舞台との違いに戸惑ったりは…?

僕の性質なのか、戸惑うことはなかったです。もしかしたら、開き直っていただけなのかもしれないけど(笑)。

――失敗したらどうしようとか、不安や怖さもなかったんですか?

違うジャンルなんだから、最初からうまくできるわけがない。それなのに僕を呼んでくれたってことは、僕が今できることを気に入ってくださったんだろうと思って。だから、まずは今できることを誠実にやればいい。もしうまくできなかったらフォローをお願いしますね、という姿勢だったんです(笑)。

――なるほど…。新しいことに挑戦するときって尻込みしちゃいがちですけど、その考え方には勇気がもらえます。

だいたいそんな生き方ですよ。失敗したって死ぬわけじゃないし(笑)。

――先のことを考えて心配するよりも、やりたいと思ったらすぐ行動しちゃうタイプなんですね。

そうですね。それでなんとかなっちゃったので。

――「なんとかならなかった」経験、今までに一度もないですか?

ないですね。大丈夫じゃなくても大丈夫にするしかなかったから(笑)。当然しんどいんですよ。何もしないより遥かにしんどいんだけど、しんどいだけでリスクじゃない。それも含めて面白かったりしますしね。でも、そんな僕の面倒をよく見てくれたなって思います。『H2』のプロデューサーさんと出会ってなかったら、今の僕は絶対にいなかった。それくらい大きな出会いでしたね。



最近の若者は、健全すぎやしませんか?



――そのほかに、仕事関係の方で感謝を伝えたい人というと。

事務所やマネージャーをはじめ、僕と出会ったすべての方に感謝しています。よくもまぁ、あんな下手くそな僕をあきらめずに使ってくださったなって思いますもん(笑)。年々、感謝の気持ちが深まりますね。

――逆に今は、新人を迎え入れる立場ですよね。

僕が新人の頃は、ムカつくけども面白い、ちょっと尖ってるヤツが多くて。でも今は、残念ながらそういう人が少なくなった気がします。昔は鬱屈した経験や思いを抱え込んでいる人が多かったけど、今の子はみんなすごく健全というか。まぁ僕も当時、先輩方にどう見られていたのかはわからないけど(笑)。

――若い世代の声優さんたちと現場で話したりするんですか?

あまり話さないですね。ただ、自分のなかに“変わり者レーダー”があって、変わり者な人を見つけたときだけ自分から話しかけます(笑)。

――津田さんは“変わり者”なんですか?(笑)

うーん…自分のことを天然って言いたくないんですけど、そういう部分もあるのかもしれない。天然というかマイペースというか。冒険が好きなんですよね。

――冒険!?

中学生の頃、友だちと自転車で大阪から高知まで寝袋とお金だけを持って出かけたり、大学1年のときは夏休みを利用して1か月間、バックパックを背負ってエジプトへ行ったりしましたよ。